七
「入れ」
フヨウのノックに、大きな扉の向こう側から返答があった。
「っていうかさ、いきなりぼくを呼び出して、連れ回して、いったい何なの?」
ニギは不機嫌そうに聞いた。
「……あれ、聞いてないのか?」
「聞いてない」ニギは眉を顰め。
「言ってない」フヨウは眠たげな瞳で。
「あんたらね……」サクラは呆れた顔で。
「《四高翁》に話つけに来たのさ。要するにここのお偉いさん、四強だ」
開け放たれた扉の向こうには広々とした空間が広がっていた。床一面は大理石で、石造りの柱が何本も支えるアーチ型の高い天井には、神話でありがちな天使と神様の名場面集があちこちに描かれていた。そして部屋の中心には、大人が十人以上両手を広げても余りある直径の、木の円卓が据えられていて、バランス良く配置された五つの椅子のうちの四人が既に腰掛けていた。四人の背後にはそれぞれ、各々の趣向に合致した者を侍らせていた。
〝ブアルァ〟のルク。緑色の肌と金色の髪、金色の瞳をした女妖魔。下半身は蛇。長い髪を掻き上げて、フヨウを見てニッと微笑んだ。背後には筋肉質の人間や妖魔男性を従えている。
〝ニンゲン〟のアァラ。数が多く、ヒト族の代表格と言えるものである。力は弱いが、文明開発の第一人者である。ニコニコの笑顔で円卓に肘をついている。背後には老人が二人居るだけ。
〝ホウ〟のルミネ。見た目は〝ニンゲン〟の女とほとんど変わりないが、れっきとした妖魔である。背後にはズラリと老若男女が並んでいるが、一人として呼吸をするものが居ない。
そして、――
〝紫鬼〟のダン。特徴的な紫の髪の青年。目の前の者すべてを小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、上半身裸で己の引き締まった肌を誇示している。背後には、これまた同様の筋肉質の、ヒト族を中心とした男らが、上半身裸で立っている。
今ここに、〝紫鬼〟が三人居る。最強と謳われる種が一度に。
ニギから殺意が迸る。コノハがそれを遮る。ダンは小馬鹿にしたように笑う。
コノハはニギを見て、
「……な? 筋肉率ヤバいだろ。お前達が居てくれなきゃ、わたしはどうにかなってしまいそうだ。今すぐにでも抜刀して辺り一面血の海にしちゃってると思う」
「……え、そういう意味で?」
「お前達可愛い男の子女の子が居てくれるなら、わたしは筋肉集会にだって出席してやろう」
「ねえ、フヨウ、この人おかしくない?」
「ごめんね、結構残念な人なんだ」
「はっはっはっ。お前達になら何言われても良い」
楽しげな会話の中途で、〝紫鬼〟たるダンは力強く、拳で以て円卓を叩いた。大きな机がガンと大きな音を立てた。全ての瞳がそこへ集中する。
「サ、始めようか」
ダンはニヤリと楽しげに笑った。




