一
「ねえ、おじいさん。雪が降ってきたよ」
「んなこたあ、分かってるよ。ここじゃあ、なんも珍しいこたあないね」
「でも、いつもより早いよ。積もるかなぁ」
「積もるさ。まったく」
「……ぼくが生まれたのも、こんな雪の日だったんだよね?」
「ああ、そうさ。何度だって言ってるだろ。しつこいねえ。こんな雪の日だったさ。その年はむしろいつもより雪が少ない年でね。随分楽できたもんさ。外へ出てゆっくり歩いていたら……季節外れの木瓜の花が咲いていてね。そいつがぴかっと光ったと思ったら、林檎くらいの、紫髪のお前が、ぎゃあぎゃあと喚いていたのさ」
「うん。おじいさんが拾ってくれたんだよね」
「まったく、本当にその日から大変だったよ。何せはじめは小さすぎるのさ。ま、こうして大きくなってくれりゃ、楽は楽だけどね。……いや、まだまだ小さいか」
「すぐにでも大きくなるよ。おじいさんなんかよりも」
「なってくれなってくれ。さっさとな。このじいさんが三途の川渡っちまう前にな」
「…………うん」
ニギが目を醒ます。目を醒まして初めて、自分が眠っていたことに気づく。温かい布団に身を包まれていたこと知る。
何か夢を見ていた気がする。
懐かしくって、大切で、心が温かくなって、それでいて、悲しくて……。
夢? いや、今は夢なんかよりも、もっと大事なことが……。
明るい。窓から差し込む陽の光は、ちかちかとニギの瞳に容赦なく這入り込もうとする。
「痛ッ!」
起き上がろうとし、片手で体を支えて、鋭い痛みが走る。現の世界に強制的に戻されたよう。
ぼふん、と布団に引き戻される。
全身が包帯に包まれている。何故? 頭を巡るハテナマーク。
体がだるい。
でも、なんだか嫌なだるさじゃない。どこか、体を預けたくなるような安心感がある。
こんな感覚、ものすごく久々な気がする。どうしたんだろう。
何か、すぐ隣ですーすーと規則的に空気の擦れる音がする。
何だろう。
状況が知りたい。どうにか、ぎぎぎ、とそちらへ首を動かす。骨が軋むような感覚。痛みはないが、素早い動作はしばらく出来そうにない。
音の主がニギの目に入った。
それは、すーすーと寝息を立てる、褐色の肌の男の子だった。
「…………え?」
男の子は彼の隣に、引っ付くように裸で寝ていた。疑問符は依然ニギの頭を楽しげに走り回っていた。




