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宵の文目  作者: けら をばな
第二話 「よかったら、わたしと居てくれないか?」
13/51

「ねえ、おじいさん。雪が降ってきたよ」

「んなこたあ、分かってるよ。ここじゃあ、なんも珍しいこたあないね」

「でも、いつもより早いよ。積もるかなぁ」

「積もるさ。まったく」

「……ぼくが生まれたのも、こんな雪の日だったんだよね?」

「ああ、そうさ。何度だって言ってるだろ。しつこいねえ。こんな雪の日だったさ。その年はむしろいつもより雪が少ない年でね。随分楽できたもんさ。外へ出てゆっくり歩いていたら……季節外れの木瓜の花が咲いていてね。そいつがぴかっと光ったと思ったら、林檎くらいの、紫髪のお前が、ぎゃあぎゃあと喚いていたのさ」

「うん。おじいさんが拾ってくれたんだよね」

「まったく、本当にその日から大変だったよ。何せはじめは小さすぎるのさ。ま、こうして大きくなってくれりゃ、楽は楽だけどね。……いや、まだまだ小さいか」

「すぐにでも大きくなるよ。おじいさんなんかよりも」

「なってくれなってくれ。さっさとな。このじいさんが三途の川渡っちまう前にな」

「…………うん」


 ニギが目を醒ます。目を醒まして初めて、自分が眠っていたことに気づく。温かい布団に身を包まれていたこと知る。

 何か夢を見ていた気がする。

 懐かしくって、大切で、心が温かくなって、それでいて、悲しくて……。

 夢? いや、今は夢なんかよりも、もっと大事なことが……。

 明るい。窓から差し込む陽の光は、ちかちかとニギの瞳に容赦なく這入り込もうとする。

「痛ッ!」

 起き上がろうとし、片手で体を支えて、鋭い痛みが走る。現の世界に強制的に戻されたよう。

 ぼふん、と布団に引き戻される。

 全身が包帯に包まれている。何故? 頭を巡るハテナマーク。

 体がだるい。

 でも、なんだか嫌なだるさじゃない。どこか、体を預けたくなるような安心感がある。

 こんな感覚、ものすごく久々な気がする。どうしたんだろう。

 何か、すぐ隣ですーすーと規則的に空気の擦れる音がする。

 何だろう。

 状況が知りたい。どうにか、ぎぎぎ、とそちらへ首を動かす。骨が軋むような感覚。痛みはないが、素早い動作はしばらく出来そうにない。

 音の主がニギの目に入った。

 それは、すーすーと寝息を立てる、褐色の肌の男の子だった。

「…………え?」

 男の子は彼の隣に、引っ付くように裸で寝ていた。疑問符は依然ニギの頭を楽しげに走り回っていた。

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