第1章 闘技場
「せぁっ…!」
敵をまた1人斬り伏せる。
勇貴は闘技場に来ていた。賞金目当てに。
「こいつ…まさか特異能力保持者か!?」
「嘘だろ…勝てるわけがねぇ、弱点を探そうぜ!」
バレたか、と心の中で毒突く。またひとり斬り伏せる。
「俺に任せてください!」
そう言って固まっていた剣闘士たちの中から飛び出てきたのは魔術師風の男だった。
「あなたも特異能力保持者ですか。実は俺もなんですけどね」
笑いながら男が言う。闘えるのが心底楽しいらしい。
「では、本気を出してよろしいでしょうか?」
勇貴は乗ってくると知っていて一応尋ねる。
「ええ、そのつもりです。〝コロナブラスト〟!」
男の言葉に魔力が宿る。〝上位炎魔法コロナブラスト〟だ。勇貴の周りに爆炎が巻き起こる。が、勇貴は無傷だった。
「何故無傷なんですか?」
冷や汗を浮かべ、笑いながら言った。
「魔剣創造。僕の特異体質の名前です。」
剣闘士たちが凍りつく。どこからか
「二年前から優勝し続けている魔剣士か…?」「道理で強いはずだ…」などと聞こえる。
「なんと…あなたがあの魔剣士ですか。ならば、この呪文は止められますか?〝アポカリプティック・ゲート〟!」
勇貴の前に巨大な門が現れる。究極無系統魔法〝アポカリプティック・ゲート〟扉が開けば、無の世界で永遠に彷徨うことになる文字通り究極の魔法だ。
「バスターストライク!ライトニング!」
下級剣術〝バスターストライク〟に下級雷撃魔法〝ライトニング〟を掛け合わせただけの魔法剣だが、特異体質によって鍛えられた魔剣で振るうことにより、威力は1000〜2000倍程度まで跳ね上がっている。
巨大な門に亀裂が走り、欠壊する。
「壊、された…?」
男が膝をつき、呆然として倒れる。魔力を使い果たしたのだ。
「なかなかいい魔法でしたよ。まだまだのびるとおもいますが」
結果として、勇貴は6度めの優勝を飾った。