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kiss 2seconds #11

作者: ハクノチチ

カミナリの木に季節外れの落雷があり

焦げ臭う花を狂い咲さかせてから色の違う実をつけた

鬼の子供は得意になってその実をもぐと

いよいよ消え入りそうな火の馬に持って行った


鎮火した馬肉を狙う鳥の群れを威嚇し

空の彼方へ追い返すと黒い翼で陽が隠れた

さすがに夜まで粘る鳥目の黒い翼は少なかったが

それでも今夜の月を十分欠けさせていた


どうして火の馬がこの実を口にしないのか

涙を堪える鬼の子供には分からなかった

種火代わりに、仲間を乱獲して売りとばす村を

大人になったら一緒に焼き討ちしようと約束していたのだ


翌朝、二千年以上も村の御神木勤めをしていた妖精が

鬼の子供を揺すって起こすと、そこは紫色した霧の中だった

今日の昼過ぎに村はダムの底へ沈むこと、そのことを火の馬は知っていたこと

そして奴らとは時間の流れが違うことを初めて知らされた


時間の流れがどうあれ二千年も村を守っていたような奴とは口も聞きたくはなかった

しかも、お前がぐーすか寝ている間に焼肉は鳥に食われちまったよ、とも言ったのだ

でもいいか?とこのムカッ腹の立つ失業者が、子供の短い角をパシパシ叩いた

お前のために焼肉も鳥たちもその実を残したことは忘れるな


今の時代なかなか空き家は見つからないと愚痴る妖精は

霧の中での別れ際、半泣きする子供の目の奥を凝視すると他人事ながらも安心した

いつの日か成長したこいつの居場所が、たとえ雲の上だろうが

人間のなかであろうが涙を持つような立派な鬼はなかなかいないのだ


ケイト コーリングス/子供を見つめる大人たち より






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