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DEAD  作者: みねるAIM
12/12

恩返し

気がつけば、柔らかく、ふわふわする物の上にいた。真っ白で汚れていないベッド。周りは綺麗な白いカーテンで覆われている。

おそらく私は眠っていたのだろう。

長く眠っていなからか、上体を起こすと頭がクラクラする感覚に襲われる。

それは思ったよりも軽いもので、立てるだろうと思った私は、ベッドから足を床に着けようとした時だった。

「・・・っ!?」

肩にものすごい痛みを感じた。耐えられる痛みではあるものの、味わいたくはない痛みだ。

痛みのおかげで、私の意識ははっきりと戻り、何故眠っていたのかを思い出すことができた。

とにかくルークたちを探さないと。

上体は、肩を中心に包帯でぐるぐる巻かれているため少しくらい肩を動かしても痛むことはない。

慎重に立ち上がると、久々に両足で立ったような感覚があり、フラっとバランスを崩しそうになった。

しかし、それは一瞬のもので、すぐに歩けるようになる。

カーテンを開ければ、いま自分のいる場所が簡単に直ぐにわかってしまった。

棚には医薬品や包帯、体重計や身長計。他にはたくさんの体についての本が、柔らかそうなソファで囲まれた小さなテーブルの上に置いてある。スライド式のドアを目にすれば、[infirmary]という文字が書かれてあった。つまり、保健室だ。保健室と言えばわかるだろう、そう、今いる場所は保健室で、ここは街の学校なのだということだ。

「ようやく目が覚めたのか?」

保健室のスライド式の扉を開けると、すぐ左に椅子に座った40代程度の男が、折れたパイプを支えにしながら前へ体重をかけている態勢で話しかけてきた。

「は、はい、ここは学校なんですね」

どうやら木造の小さな学校なのだろう。床や壁は掃除されていないのか、汚れが目立ち、床は腐って穴があいていたり、朽ち果てているのが、ところどころ目立つ。

「ああ。そうだ。他にもたくさん人はいる。何故なら、パンデミック後の避難場所だったからな」

「なるほど・・・。助けて下さり有り難うございます」

私は頭を下げた。

「俺じゃない。俺は何もしていない。お寝坊さんはここから奥の階段を降りれば小職員室が見える。そこへ行け。お前とその連れを助けてくれたやつに出会えるはずだ」

私は軽くお辞儀をすると、その男に背を向けて小走りで目的の場所まで行こうとしたが、床が脆過ぎるので歩く事にした。

この学校の中で、たくさんの人にあった。武装した警備員や、単なる避難してきた一般市民から子供まで。大人や子供の中でも痩せている子が多かった。つまり、この状況からは、きっと食糧難に悩まされているのだろうと悟った。

ここは、街の学校とはいっても木造の古い学び舎だ。都会の学校と比べれば当然狭い。私でも、迷わずに[small,teacher's room]

と書かれた場所にたどり着けた。[小職員室]だ。あの男の行っていた場所もきっとここだろう。

こんな小さな学校にまだ職員室があると思うと面白おかしいものだ。

コン、コン。

二回ほどノックをしたが、反応がない。

どういうことだ?場所を間違えたか?

とりあえず開けてみないとわからない。鍵がしまっているわけでもないので開けることにした。

ガタン―。

その音と同時に、中にいる複数の人間はこちらを向いた。地図の置かれた机を中心として、三人の人間がそれを囲むように立っている。それは、優しい顔つきのルークと、長いツインテールが特徴のフラン。そして、私がドアを開ける前までは、机にある地図に鉛筆で何かを書いていたはずの、男一人の三人だ。男は、軍人のような体をしていて、彼の着ているTシャツ越しから、腹筋の筋肉がはっきりと見えるほどだ。

三人の周りには複数の軽く武装している男たちが囲んでいる気になったのは、誰一人として銃を携帯していないことだ。パイプや、ナイフ、などの近接武器しか携帯していない。

「あかり・・・!」

ルークは驚いた表情で声を漏らす。フランは、長く眠っていた私が目を覚ましたのを知り、少し安心しているように私は見えた。

「目を覚ましたか」

鉛筆を持っている男は、机に鉛筆を置いて、こちらに近づいてくる。

190cmほどある巨体に、私は少し威圧を感じた。

「体の調子はどうだ?」

「少し痛みますが、問題はありません」

「そうか。なら良かったよ。君たちを助けられて本当に良かったと思っている」

彼は微笑むと、話を続けた。

「申し遅れたが、俺の名前はクリスだ。不甲斐ないが、一応、ここのリーダーをしている。仲間の命を最優先に考えた指揮をしているつもりだ。よろしく頼む」

クリスは、右手を差し伸べ握手を求めた。当然、私はそれを受け入れる。

「私は、柊飛鳥です。あの時は本当に助かりました。有り難うございます。本当に・・・」

あれは感謝してもしきれないほどの出来事だ。何故なら、あの時、彼らが来なければ私達は死んでいたはず。ここにはいなかった、彼らは命の恩人なのだ。

「さて、本題の話に戻すが、飛鳥もよければ聞いてくれ」

私は軽く頷いた。

「誰かやってくれる奴はいないか?」

クリスの言葉に誰一人として反応したり手を挙げたりするものはいない。

「なにをなさってるんですか?」

私はクリスの質問の意味が良く分からないので、聞き直した。

「ああ、そうだな。この地図を見てくれ。この建物だ。ついさっき、仲間からの得た情報だが、ここはどうやら倉庫で、今、我々の必要としている武器が複数あるらしい」

彼は続けた。

「次は悪い話だ。その武器庫と思われる場所は、我々とは違う勢力が、厳重に警備してるんだ」

なら、武器庫を無理やり奪う形になるのか。警備は多分複数いてもせいぜい数人から数十人程度、バレないように殺すのは私の専科だ。しかし、見つかれば最後だろう。

「これは、重要なんですか?」

私は、リーダーのクリスに質問をする。

彼は、私を見ると、ため息をついて即答した。

「あいつらを見たらわかると思うが、俺たちには武器や装備が乏しいんだ」

パイプを持っている人もいたから、まさかとは思ったが、そのまさかとは。パイプを武器にして戦うなんて馬鹿がするようなこと。とりあえず、この件はなかなか重要であることは把握した。

「分かりました。だったら、私が行きますよ」

右手を軽く挙げて、そう言うと、クリスが、驚く表情をした。クリスだけでない。周りの他の人間も同様に驚いていた。

「こんなこと言って悪いが、正気か?」

と、クリスの言葉。

「正気も正気ですよ。私がやります。その任務は」

私は真剣な目で彼を見つめた

「・・・。無理に引き止めたりはしないさ。ただ、これは、とても危険だということは承知してくれ」

「どうせ、私がやらなければ誰かがやることになりますしね。私がやりますよ」

それに、命を救ってもらった恩返しもしたい気持ちもある。

「わかった。これを受け取ってくれ」

クリスが手渡したのは、大きめの液晶型の腕時計だ。

「これは?」

実際、大きめの液晶型の腕時計とは言ったが、見たのは初めてで、一体なんなのかは分からない。

「これは腕時計と同じだ。タッチパネル式で時計の他に、この街のマップがインプットされてある。黄色い三角は自分の位置、青色のやや大きめの点は今からお前の向かう武器庫、つまり目的の場所だ。紫色の点は、俺たちの拠点、この学校を指している」

なるほど。何故こんなモノがあるのかが、不思議だが、これだと迷いようがないな。

「次にこれだ」

「無線機ですか」

手のひらより少し大きいが、片手で持てる無線機。思ったより軽く、見た目も丈夫そうだ。素早く状況報告を行うには、必須のアイテムだと思う。

「ああ。あとは、保健室にお前の持ち物があるから準備してくるといい」



私は、そのまま部屋を出て保健室に戻った。

ほかの場所とは、比較的に綺麗な保健室はとても気持ちが落ちつく。

少しの間、ベッドに腰掛けた。腕時計と、無線機をベッドに置いて、撃たれた肩を右手で軽く触れながら暫くぼーっとしていた。

肩の痛みは不思議なことに、もう痛むことはなかった。いや、多少は痛むが気にするほど痛みではない。

立ち上がると、左手側に薬品のたくさん置いてある棚がある。その近くに、大きめの工具箱ロック式の工具箱が1つ置いてある。

工具箱ロックを解除して開けると、中には銃が何丁も置いてある。

ボウガンと、レミントンM700、ステンレス製のベレッタなど、私のものが入っていた。弾がなく、あってもベレッタの弾倉の中の3発と、私が身にはなさず持っている血が染まり固まっているコンバットナイフ程度だ。3発しかないとなると気休め程度にしかならないが、今回の作戦はバレずに敵を全員無力化し、倉庫を制圧。迅速に仲間を呼んで、倉庫の中の武器を回収しなければならない。

バレてしまえば、相手は増援を呼ぼうとする。そうなれば終わりだ。重要なのは、見つからないこと。つまり、人数はいない方が、この作戦は有利なのだ。

暗殺に音の出る銃は必要ない。ナイフで十分だ。

ベレッタを回収して、ナイフを手に持つと、私は血の色のナイフの刃の部分を軽く指で触れた。

また、血の匂いを嗅ぐことになる・・・。

私は、ベッドに置いた、大きめの腕時計を利き手の反対側の左手に着けた。はじめは強めに巻きつめられたが、だんだんそれも軽くなってきた。

画面を見ると、脈拍数、血液料、精神状態など、細かく画面に自分の詳細が書かれていた。

なんて優れものなんだと、私はただ感心するほかなかった。

無線機を服の中には仕舞うと、そのまま出口まで歩いた。

外へ出ると。太陽の光がとても眩しかった。何日ぶりのような太陽だ。

校門の前まで私は来た。両手で黒色の大きな門を開けると、大きな音が鳴り響いた。



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