殺人者
深い森に轟く一発の銃声。
私はそっと弾薬ポーチからベレッタM84FSINOXというステンレスの銀色が輝く拳銃を手に持った。
「弾は15発……」
弾が全弾装填されていることを確認すると、安全装置を解除し、トリガーガードに、人差し指をかける。
生憎銃声はかなり近いところにあった。緑色の腰まである長い髪をなびかせると、ゆっくりとしゃがみながら近づく。
見えたのは、顔をフェイスマスクで被っている人間と倒れて足から血を流している茶髪の青年だった。
フェイスマスクを被っている人間は、AKと思わしき銃を、青年に突きつけている。
最悪の状況だった。
きっとフェイスマスクを着ている人間は盗賊だろう。青年を襲っているのだろうか。
話している声は聞こえているのだが、何を話しているのか分からない。が、何にしろ、盗賊は一人じゃないはずだ。周りに、他に仲間がいるはずだ。
私は木に隠れて、ベレッタを構える。フロントサイト、アイアンサイトでしっかり相手の頭を狙い、そのまま引き金を引いた。
銃声と共に、AKを青年に突きつけていたフェイスマスクを被った人間は、頭から血を流し、脱力していくように倒れた。
「ほら、何しているんですか?逃げますよ!」
私は、彼の近くまで行くと、手を引っ張る。
「動けますか?」
「あ、ああ。痛むけど、何とか……」
きっと彼は、何が起こったのか状況が把握できていないのだろう。
「他にも敵はいます。さっさと逃げましょう」
目の前の死体からAKを拾うと、彼に渡した。
「とりあえず、気休めにしかなりませんが、持っておいて」
「わ、分かった」
このまま走れば、森を抜けて家がある。とりあえず、そこまで行って見よう。
私は、彼の手を引っ張りながら走り出した。
後ろから銃声と共に、弾がこちらまで飛んでくる。
振り返り、私は、ベレッタで2発打ち込んだ。二人の盗賊の腹部と顔面に命中させる。
森を抜けると、一軒の家が見える。
「もう追っては来ないな」
彼は、いきを切らしながらそう言う。
「とりあえず、家の中へはいりましょう」 小さな家の中に入ると、彼は、食卓のテーブルの椅子に腰かける。
「クソ、足を怪我したせいでひどく痛むな」
「ここは、食料や、救急箱程度ならあるので、とりあえず応急処置程度なら治療できますよ」
「ああ、頼む」
消毒をして、包帯を巻いた。
「ありがとう。あと、俺を、盗賊から救ってくれて、ありがといな」
彼は、照れくさそうに言った。
「いえ。けど、地獄ですね。こんなふうに世界は変わってしまって」
私は、そう言いながら、食料となる缶詰を用意し、テーブルに置いた。
「そうだな」
数秒沈黙が続く。
「あなた、名前はなんていうんですか?」
「俺か?ルークだ。近くに、町があるんだが、例のゾンビ事件で森へ逃げたんだ。けど、盗賊に捕まり、利用されるだけされてあとは、殺そうとしてきた。最低な奴らだ」
ゾンビ事件。それは、なんの予兆もなくゾンビがこの大陸に出没した事件。今ではそこらじゅうにいて、現在も仲間を増やしている。生ける屍だ。
盗賊は、事件と同時にでき上がった生きるためには、手段を選ばない連中だ。
「私は、柊 飛鳥です」
「日本人か。英語が上手いな」
「どうも。……!?」
「どうした?」
ルークは、私の表情の変化に気づいた。
「しっ……。誰かいる。それも複数……」
「それは、物騒だな」
きっとさっきの盗賊だろう。
「そこに階段があります。二階へ上がっててください」
「あ、ああ。戦うのか?」
「ええ。心配せずども、すぐ終わりますよ」
「気をつけろよ」
彼はに二階へあがった。
「さて……」
キッチンの物を収納する場所の扉を開けると、ガンケースを取り出した。
ベレッタのマガジンを5つ程度ポーチに入れる。フラッシュバングもいれておく。
扉を強引に叩く音が聞こえる。
「死ぬかもね……」
私は小さく呟いた。