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「お前の魅力に気づかねえわきゃあねえさ」

実はレイカもアレックスも第1章〜第3章までの全ての章で登場してます。

今回やっと彼らの絵が描けてちょっとほっこりしてます。

 アレックスとナターシャによる「女の子と話す練習」が、ボールを持ったことすらない人間でもここまで外さないだろうというほどの大暴投を遂げた、その翌日。

 結局、あの後、カナエとタクミが無限の同好会アンリミテッド・サークルの部室に殴り込み、、ナターシャ奪還のために暴れだし、さらに席をはずしていたエリーゼとモニカまで帰ってきたものだから。部室内は騒然となった。

 どれくらい騒然となったかというと、隣の部室、はてはその隣の隣にまで怒られ怒鳴られる始末であった。

 生徒会役員が三人もいたおかげで、良くも悪くも収まったが、当事者、特にアレックスの心労は極限まで達していた。そのことについてジョンは、相談がうまくいっていないどころか、よけいな厄介ごとまで持ってきてしまったことを深く反省していた。


 ――いや、まあ、でも……。

 ――正直、化学反応みたいなものだったし……。


 そう、胸中で言い訳をしつつ、ジョンは駅前で、腰に手を当てたたずんでいた。

 ジョンの右隣には、露出の高い服装のアシュリーが、魔導ウィンドウでなにやらポチポチとやっていた。最近暖かくなったからか、思いっきりギャルっぽい感じに攻めていた。

 対する左隣のアレックスは、顔を赤く染めて、緊張した面持ちで手を組んでいた。

 アシュリーの大胆な服装ゆえか、これからレイカが来るという期待感か。おそらく両方だろう。

 アレックスは、左腕にはめられた腕時計と、駅のホームを交互に見やる。

 先ほどからそわそわが止まらない。

 緊張に耐え切れず、アレックスはジョンに問うた。


「レイカ……まさかとは思うけど、道にまよったなんてオチは……ないよね?」

「いいから落ち着けって」


 ジョンはアレックスの背中を叩き激励する。


「お前ともあろう奴が、らしくねえじゃねえか。学校戦争(スクールウォーズ)に協力してくれたアレックスはどこに行ったんだ?」

「あれは……、その、場合が場合だったし」


 アレックスは気を落としてうつむく。


「あれを主導したのはモニカとメアリーだよ。君に協力したいとは思っていたけど、なかなかその勇気が出なかった。そんな僕の背中を、モニカとメアリーが押してくれて、ジョンの今までの活躍が引っ張ってくれたんだ。僕は特別なことはしてないよ」

「ふーん……」


 ジョンは腕を組む。

 どうにもアレックスの気が落ち込み気味である。

 ジョンは、そんな彼を励ますように笑いかける。


「……なら、俺が保証してやる。レイカがどんな奴だったって、お前の魅力に気づかねえわきゃあねえさ。だから安心しろ」

「!……」


 ――ジョンの言葉に、アレックスの表情に明るみが差す。


 アレックスの童顔がほころぶのを見て、ジョンは歯を見せわらった。


「俺はお前がすっげー奴だって思ってるし、信じてる。だからお前は俺を信じればいい。そうすりゃ無敵だ。違うか?」

「……そうだね」


 アレックスは両手で拳をにぎり、気を引き締めた。

 さすがのアシュリーも、彼ら二人の友情に口を出すことはなかった。

 そうして、待つこと10分。時刻は8時57分を指していた。


 国立第四魔法学校(クロフォード)学園都市にある駅に、いよいよ、「彼女」が現れた。


「……あっ」


 その姿を認めたとたん、アレックスはわずかに声をもらした。

 とうとう、レイカがやって来たのだ。


「……レイカ」

「……アレックス」


 少女は淡い紫陽花色のワンピースに、赤のカーディガンを羽織っていた。

 女子にしてはかなりの高身長で、男子にしては背が低めなアレックスと同じくらいだった。それでも、アシュリーや、ましてやジョンに比べればぜんぜん低かったが。

 髪の色は赤色。ロングのそれを綺麗に後ろへと流している。

 特別身を飾ってはいなかったが、それが逆に清楚で爽やかな印象を与えていた。

 少女はアレックスの元へと歩み寄り、それから短く告げる。


挿絵(By みてみん)



「……待った?」

「ぜんぜん、ぜんッぜん!」


 アレックスは大げさに首をブンブン振る。あれ首がねじ切れるんじゃないかなーとジョンは思った。

 続いてレイカは、アレックスの右隣にいた人物を見かけ、声をかける。


「あなたたちは……ジョンと、それにアシュリー?」

「よう、お疲れさん」「どうもー、来ちゃいましたー」


 ジョンとアシュリーが片手をあげ挨拶する。

 それを見たレイカは。


 ――少しだけ、顔を曇らせて。


「……二人きりじゃ、なかったんだ」

「え? あ、ああ、うん!」


 アレックスは虚をつかれた。


「ちょっと、この人たちも参考書について教えてほしいみたいで!」

「べつに……いいけど」


 レイカとアレックスの会話を見ていたアシュリーは、そこであることに気づく。


(ははーん……これは……)


 その可能性に思い至った瞬間、彼女の口角が吊り上がった。


 ――脈ありですな。


 アシュリーは、レイカがすでにアレックスに多少の気があると踏んだ。

 その結果が、あの煮え切らない会話にあるのだと察した。


(これは……ちょっと押せばすぐにいい雰囲気になるに違いない!)


 アシュリーの口が猫のようにゆがんだ。

 そうと決めたら、あとは早い。


「いやーごめんねレイカー!」


 アシュリーは申し訳なさそうな表情で手をあわせる。


「メーワクかもって思ったんだけどさー、私も魔法学の勉強に手間取っちゃってて! あんまり邪魔はしないからさ! ちょっと一緒に行かせてほしいなー、って!」

「べつに構わないけれど……」

「そう? じゃあじゃあ、さっそく行こっか!」


 言うが早いか、アシュリーはジョンと腕を組む。

 幼馴染の不意打ちに、ジョンはわずかながらうろたえた。


「お、おい」

「なーに、ジョン、赤くなって。いつも平気でやってることでしょ? 今さら御託を並べてんじゃないわよ」

「それそうとう昔の話だろ⁉」


 ジョンは胸の中で(モニカやエリーゼと鉢合わせしませんように……!)と祈るが、そんなジョンの心情は知ったことかとばかりに、アシュリーはさらなる攻勢を開始する。

 アシュリーはアレックスに耳打ちする。


「アレックス、あんたもレイカと手ぇつなぎなさいよ」

「え、え、いきなり?」

「こういうのは勢いが大切なのよ! ほら!」


 アレックスの背を後押しするアシュリー。

 アレックスは半ば流されるようにレイカの手を握った。


「……」


 アレックスは息をとめてレイカの顔を見た。

 レイカは驚きつつも、アレックスの行動を受け入れていた。

 レイカの気持ち冷ためな手が、手を伝わってアレックスの心にとどく。


 ――意中の人との接触は、意外とあっけなく、そして唐突にやってきた。


 アレックスの心臓がバクバクと音を立てた。

 レイカはそんなアレックスを知ってか知らずか、首をかしげて尋ねる。


「……手、すごい汗かいてる」

「え、え⁉ ご、ごめん!」


 アレックスは慌てて手を放そうとするが――しかし。


「いい」


 そう言って、レイカはギュッと握り返した。


「……」


 アレックスはレイカを見る。

 レイカは頬を染めつつ、視線を逸らしていた。

 それを見ていたジョンとアシュリーは、ともに「ヒュー」と口笛を吹いた。


「……やるじゃん、レイカ」

「なんてーか……これ私たち必要なくね?」

「それな」


 ジョンは苦笑する。

 始まる前は不安でいっぱいだったダブルデートだったが、どうやら杞憂のようだった。

 もはやおぜん立てをする必要がないくらい、レイカはアレックスのことを思っていたらしい。


「どうする?」アシュリーはジョンに尋ねる。「私たち……どっか行っちゃう?」

「いや、もうちょい様子を見よう」

「オッケー」


 アシュリーは目を伏せうなずいた。よかった、まだ飽きてないみたいだ。

 とはいえ、特に介入できそうなところはない。

 こりゃ本当に参考書を買うだけの旅になりそうだ。

 まったく、よけいな心配をさせやがる、とジョンは苦笑した。

 さあて、あとは適当に乗り切りますか、とジョンは肩の力を抜いた。


 ――なんて、無事に物事が済めばいいのだが。

 ――そうは問屋が卸さない。


「じゃあ、行こっか」


 レイカがアレックスの手を引っ張る。なかなかどうして積極的なところもあるじゃないか、と、遠目に見ていたジョンは驚いた。

 続けてジョンもアシュリーに引っ張られた。こっちは「らしい」行動である。

 二人の少女に引っ張られる男子ふたり。特にアシュリーは容姿も服装も豪快なため、通行人の目を引いた。

 アレックスは顔が沸騰しそうな羞恥を感じた。

 対するジョンは、「まあ、たまにはこんな日もありか」と、この状況にある種の牧歌的趣を感じていた。


 ――あれを、見るまでは。


「……ん」


 ジョンはふと、モールを歩く人々の中に、見知った影を見つけた。


「あれって……」


 ジョンの視線の先。そこでは。


「あいつ……彼氏できたんだ」


 エリーゼと、銀髪の少年――テオドールが、腕を組んで歩いていた。


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