無理難題からの逃避
アクセスってどうやったら伸びるんでしょう?
おしえて! グー〇ル先生!
父親と話して楽しかったことなんて一つもない。
父親は、僕を見ているようで見ていない。
父親が見ているのは、僕ではなく僕の功績。
僕が、自分の跡を継ぐにふさわしいか。
それだけをただ注視している。
そこに親子の愛情、なんて甘ったるいものは存在しない。
両親がぼくにおけいこ事をやらせるのも、その一環だと僕は睨んでいる。
両親から物質的な施しは腐るほど受けてきたが、精神的な愛は一切受けていない。
両親の僕を見る目は、まるでビーカーの中の実験動物を見るような目だ。
部屋に入って空想の世界に耽溺したい欲求を抑え込んで、僕はしぶしぶダイニングルームに足を運ぶ。
普段、この部屋が食事に使われることはない。
成金趣味の刺繍が施された、いかにも高そうな絨毯が敷かれたその部屋には、10人以上の利用を想定としたテーブルが置かれている。
そのテーブルの上座。長方形の方卓の角に父親が、その左隣に普段顔を見せない母親までもが座っていた。
母親は病弱で、普段会話することはない。
ずっと部屋に籠りきりで、半ば介護を受けている。
その母親がわざわざ出てきている。ただならぬ事態が予想された。
「座りなさい」
「はい」
父親との会話はこんなものだ。
親子の温かみにあふれた会話、なんてものはない。
僕は方卓に置かれている豪勢な料理に手を付けず、父親の口が開くのを待った。
僕が一向に食事に手をつけようとしないのを見て、父親は満足そうな顔を見せた後切り出した。
「今日付けで、とある会社をうちが吸収合併した」
「おめでとうございます」
これっぽっちも心のこもっていない言葉を、さも心がこもっているかのように吐く。
おそらく、これが心からの物ではないくらい父親はわかっているだろう。
だが、父親が求めるのは『会社を継ぐ能力を持つ』息子だ。
心など期待してはいないのだろう。
事実、父親の心に触れた記憶は、僕には無かった。
父親はそんな僕の心持ちなど関係なしに話しを進める。
「そのとある会社の従業員どもの、創業者一族への忠誠心が厄介でな。我々が雇い主になると、業務が回らなくなる。そこでだ、蓮。お前にその創業者一族の女と結婚して、形だけでも向こうの一族に入れ」
僕は一瞬何を言われているのかわからなかった。
結婚? 僕が? 会ったこともないような女と?
真っ当な人間ならあり得ない提案だった。
だが、僕の父親は真っ当な人間ではなかった。
「これがその一族の女たちの写真だ」
父親が、絵本のような見開きの薄い本を手渡してきた。
本には和服やドレスなどで着飾った女性たちの写真が載っていた。
下は10代から上は30代まで幅広い年齢層の女性たち。
だが、そんなもの。僕は求めていなかった。
特筆して好きな人がいる、というわけではない。
だが、自分の将来のパートナーまでも両親に決められることに、僕は強い憤りを覚えた。
僕はあなたたちのおもちゃじゃない!
そう叫びだすのをぐっとこらえて、僕は本をテーブルの上に置く。
「少し、考えさせてください」
そう返すのがやっとだった。
僕は手早く食事を済ませると、その本を持って自室に引き返した。
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