自己満足と挑戦状
「はい。私の学校の校章は翼とペンで構成されています。翼はどこよりも高く飛翔する気高い志を、ペンは学生の本分である学業を表しています。このことから私の学校の校章の意味は、学を生かして将来に役立ててほしいという願いだと思います」
おおーと感心したような先生。すぐに手元の用紙に評価を書きこんでいく。
(確かにいい答えだったが最後の『思います』で減点だな。俺みたいにはっきり言わないと。勝ったな)
そのあと次々に質問されるがみんな答えていった。俺が答えるとみんな呆然とした表情になるが、俺のあまりに完璧な答えに脳がついていけないんだろう、かわいそうに。
「次の質問を最後にします。この学校に入学すれば当然新たな交友関係を築かなければなりません。そこであなたたちはどのように交友を広げようと考えていますか?答えてください。岸川智也くん」
「はい。私は少し内気なので、最初にある自己紹介で自分と同じような趣味を持つ人に話しかけていこうと思います」
(へえ、最初はあがってたけど今のは…まあまともじゃん。頑張ったねー智也くん。でも最初の答え方でもう不合格確定の君はこの学校で自己紹介することは2度とねーよ)
「大森優奈さん」
「私はあまり人見知りしない性格なので、誰にでも積極的に話しかけていこうと思います」
(なるほど、最初に指名されたとき焦ってなかったのは人見知りしない性格の為せる業か。だがこいつも『思います』で締めやがった。俺の方が上だな)
「香月祭璃さん」
「はい」
香月祭璃side―――
「はい」
(とうとう私の番が来てしまいましたか。この質問は難しい。小学校のときは始めからみんなが話しかけてきたから、初めて会った人に自分から話しかけたことなんて1度もない―――いや、ダメダメこんなマイナス思考ではいけません。今も私の右隣で勝ち誇った顔をしている―――牧村悠平さんのように自信を持って答えなければ)
「香月さん?」
「はい。私は小学校にいたときから、初対面の人に話しかけられたことはあっても話しかけたことはありませんでした。特に男子はその傾向がとても強く、みんな私が話しかける前に話しかけられてしまいました。ですから私は、その教訓を生かして入学したらすぐに『電光石火』のごとく話しかけていこうと思います」
(うー、恥ずかしい。ああ、みんな冷たい目で私をみてる。でも牧村さんは私と同じ類の人間。だったら―――)
ちらっと右を見ると牧村悠平は憎悪に満ちた目でこちらを睨んでいた…
牧村悠平side―――
(くそっ、リア充め死ね!っていうかなんでこっちを見てる?はっ、こ、こいつまさか俺を挑発してんのか?『私よりも衝撃的なエピソード語ってみなさい』ってことか?だったらしっかり答えてやるのが筋ってもんだ。よーし、いくぞ!牧村悠平一世一代の大勝負だ)
「最後に、…牧村…悠平くん」
「はい」
(見せてやるよ香月さんよ、俺の実力をよぉ!)