空気を読めない?いや読まない
「では、面接を始めます。これから全員に同じ質問をするので、名前を呼ばれた順に答えてください。まず最初の質問です。あなたたちが付けているそれぞれの学校の名札にはみんな違う校章がついていますね。自分の学校の校章の意味を答えてください。では大森優奈さん」
「はい。私の学校の校章は桜のマークです。これは学校創立の日に桜が満開であったことと、新入生に――――」
すらすらと質問に答えていく大森さん。
(すげえ)
思わず感心してしまった。
「では次に岸川智也くん」
「あっはい。えーっとわっ、私の学校の校章のいっ意味は――――」
(答えてはいるけどつっかえつっかえだな。こりゃ駄目だ、あがっちゃってるよ。まあ俺もあんなもんだとおもうけどね)
「次、牧村悠平くん」
(とうとう俺の番か。どう答えるか、校章の意味なんて考えたこともないからわかんねーよ。まてよ、俺の読んでいる『面接入門』には1文だけで済まさずできるだけ長く言うか、はっきりと自信を持って答えれば高得点と書いてあった気がする。ってことはわからねーものはいくら考えてもわからねーから前者は没。後者を使えば高得点になるんじゃないか?よーし)
「はい。私は校章の意味など考えたこともないし一緒になって考え作ったわけでもないのでのでわかりません」
ビシッと言ってやった。
(決まった。完璧だ。俺の評価がぐーんと上がったな)
皆沈黙。ただでさえ重い空気はより重いものとなった。そんな中俺はきちんと答えることができた満足感に浸っていた。しかし悠平以外の心中は荒れに荒れていた。
(なにこの子?なに『俺やりました』みたいなオーラだしてんの?あんたなにもやってないよ!)
(俺は緊張してうまく答えられなかったのに。こいつただ者じゃねえ。世間は広い)
(まさか面接でこんな答え方をする人がいるなんて。聖皇を、いや面接官である私をばかにしてるのかしら?しかしいい度胸ね)
そんな中受験者の一人である香月祭璃は悠平に対して全く異なる評価をしていた。
(牧村悠平って人、正直で格好いい。ふつうなら言わないであろうことを平気で、しかも自信を持って言えるなんて。なんて強心臓、なんて神経の図太さ。この面接という重い空気を吹き飛ばすなんて誰にでもできることじゃない。これは一種の才能、天賦の才、天才だわ!)
そんなことを考えているうちに、気を取り直した先生が私を指名した。
「じゃあ最後、香月祭璃さん」