恐怖の自己紹介
「なんだお前等?知り合いだったのか。ちなみに俺は高山尊。尊って名前で呼んでくれ。よろしくな香月さん。それにしても悠平、こんな美人さんと知り合いだったなんてお前もなかなかやるじゃん」
「知り合いって…面接のとき一緒だっただけだよ」
「私のことは祭璃で結構ですよ。でもあのときの悠平さんは格好良かったですよ。自信をもって堂々と答えていましたし…落ちたと思っていましたのにまさかこの方が生徒代表なんて…」
「そんな目で俺を見るな!格好いいんじゃなかったのか?ていうか『落ちた』と思ってたのかお前は?」
「私が考える格好よさと面接の高評価は異なりますもの。あなた2次試験何点でした?」
「うっ、その質問は黙秘する」
「なあ、俺も会話に入れて―――」
ガラガラ、また誰か来たのかと思いドアを見ると…白鳥先生だ。本当に俺たちの担任だったのか…先が思いやられるな。
「ほら、先生が来たんだから席につけ。さーて、自己紹介でもするか。私は白鳥紫。見ての通りこのクラスの担任だ。よろしく」
男子はあんな美人の先生が担任なんて…神様ありがとう。という状態になっている。一方で女子の方も美人な顔の裏に潜む凛々しさ(猛々しさ)を今のあいさつで見て取ったようで、尊敬のまなざしになっていた。俺は騙されないが。
「何か先生に質問があったら今のうちだぞ。これが最初でもあり最後のチャンスでもある。誰かいないか?」
先生、どんどん言葉遣いが崩れてますよ。初めはきっちりしてる優秀な人だと思ってたのに。俺がそんなことを考えていると、ふざけた男子が
「先生って何歳ですか?」
と訊いた。…死んだな、お前。
「以上、質問の時間は終わりにする。あとお前!女性の年齢を訊いてはいけないということは最低限のマナーだ。覚えておくように。じゃあ左端から適当に自己紹介をしていってくれ。どうぞ」
(先生、自分じゃ気づいてないと思いますけど、今の先生せげー怖いですよ?ほら周りの生徒たちビビッて身動き1つ出来てませんよ)
俺はこんなことでビビるほど軟な人間じゃないけどな。あとふつうにしているのは…祭璃と尊…か。祭璃はわかるけど尊は意外だな。人は見かけによらないってことか。
「えっ、左端って私よね…あっ、でも」
そりゃそうなるよな。この空気で自己紹介できる奴はそうそういねーよ。っていうか寝てないで助け舟出してやりましょうよ、仮にも先生なんだから。
キーンコーンカーンコーン。あっもうチャイムが鳴ったか。結局何もできなかったな…
「自己紹介も満足にできんとは…お前らそれでも聖皇の生徒か?もっと自信をもって行動しろよ。まあ、私は君たちの基礎情報は全て知っているから自己紹介なんぞやらなくてもよかったんだがな」
(だったら他のことやれよ)
1年A組の心が初めて1つになった瞬間だった。