学校にお泊り
「いやー、いい挨拶だったぞ牧村。さすが私が見込んだだけのことはある。先生感動した」
入学式も終わり、学年の生徒会室に白鳥先生と向かっていると、先生は背中をバシバシ叩きながらこう切り出した。
「笑ってたのは先生だけでしたよ。おかげで俺が浮かなくて済みましたから感謝はしてますけど…」
聖皇では生徒会室は学年ごとに3つに分かれている。つまり来年の新入生の生徒会室は今の3年生のものを使うというわけだ。1年ごとに動くのは荷物が多くてとてもじゃあないができないらしい。
「うん、存分に感謝してくれたまえ。ところで牧村、自分のクラスは知っているか?」
「知ってるわけないでしょ、明日発表なんだから…」
なんだかんだ言って先生とはだいぶ砕けた話ができるようになったな…敬語使うの面倒だからうれしい変化だ。まあもともと先生は話し方は気にしない人らしいけど。
「前に渡した生徒会規約を読まなかったのか?会長はクラスの名簿開示を学校に要求できるんだぞ?せっかくだし教えてやろう。お前のクラスは1年A組、出席番号は34番だ。1クラス40人だから後ろの方だな。ちなみに1学年はA,B,Cの3クラスある。ここはまだ中等部だからな。高等部になれば8クラスほどになる。あとお前のクラス担任はこの私、白鳥紫だ。よろしくね。牧村悠平君♪」
「先生が可愛い子ぶると気持ち悪いですよ。真顔だし、そもそも目が笑ってないし」
「気持ち悪いとか言うな、私はまだ可愛い年頃だぞ。20代だ!」
「20何歳ですか?」
「女性に年齢を訊くものじゃない。最低限のマナーだ」
「はいはい」
「着いた着いた。ここがお前の生徒会室だ。中のものは自由に使ってくれて構わない。ここに住むのも可能だ」
これが生徒会室か…でかすぎだろ!俺の家の2倍はあるぞ。
「住んでもいいってどういうことですか?」
「体育祭や文化祭、あと学園祭の前後はとても忙しくてな。終電に間に合わない場合があるからここで寝泊まりする役員が多いんだよ。で1度泊まるとわざわざ電車に乗ってここまで来るのが馬鹿らしくなるらしくてな、生徒会役員に限って住み込みを許可したんだよ」
なるほど。そういう理由か…ちょっと待て、
「終電に間に合わないって仕事ってどれだけ量があるんですか?そんな遅くまで仕事させるなんてある意味虐待ですよ」
「まあそう言うな。私みたいに普通の大学を普通に出たような平凡な教師より、1次試験で満点を取った君の方が優秀と学園は判断しているという訳さ。そのくらい1次試験は難しい。という訳で頑張れ、天才牧村悠平」
「ふざけんな!先生どこ大学出身なんですか?」
「東大だ。これ宿泊申請書。これさえ出せば卒業するまでここに住むことができるようになる。サインしとくか?」
「どうせ断れないんでしょ…サインしますよ」
俺は早くも中学1年生で家を出ることを決意した。