入学祝?ふざけんな!
「ふー、あぶねー危うく遅刻するところだったぜ。俺の席は…っと。ん?」
席、空いて無いぞ。もう1度よく見てみよう。………やっぱり空いてねぇ!ああやっぱり合格は夢だったのか…帰ろう。そう思っているとふいに腕をつかまれた。
「牧村、どこへ行こうとしてるんだ?お前の席はあっちだぞ」
と言って壇上を指す白鳥先生。
(壇上?)
ああ確かに学園長の隣の席が空いている。ってあれが俺の席?目立ちすぎだろ…ぶっちゃけ座りたくねえ。
「あの、先生。普通の席にしてもらえませんか?」
無理だって、あの席は無理だ。ハブられて誰の視線にも止まらないような生活をしてた俺が全員の視線の先に立つなんて無理だよ。敷居が高すぎる。
「普通の席なんて無理に決まっているだろう。お前は聖皇学園生徒会会長でもあり新入生代表でもあるからな。わざわざ代表挨拶するのに衆目注視の中歩くのは面倒くさいだろう?それに目立てるし一石二鳥だ。これは私からの入学祝いだ。どうか受け取ってほしい」
「いらねえよそんな入学祝い。俺はできれば目立ちたくねぇってのに」
「会長という役職に就いたからにはこのくらいのことは序の口だぞ。今からビビッていてどうする。ファイト、ファイト」
「ファイト、ファイトじゃねえ!だいたいあんた―――」
「あっ、時間だ。ほら、自分の席に座れ」
そう言い残して先生は自分の席(会場の隅)に戻っていった。そこ1番目立たない場所だよな…まあいい。やってやるか。俺は壇上に上がった。
ざわざわ、すこしざわつく会場。
「あれが今年の新入生代表?なんか冴えないわね。もっと格好いいと思ってたのに」
「格好いいは関係ないだろ…テストの点で決まるんだから…でも冴えないよな、あいつ」
否定的な意見が多い中、香月祭璃は唖然としていた。
(まさか牧村君が代表だなんて、てっきり面接で落とされたかと思ってましたのに。たしか新入生代表=生徒会会長でしたわね。こうなれば、私が副会長に立候補してあのダメダメな方を支えてあげませんと)
ざわめく人ごみの中で、1つ新たな決意が生まれたことを知る者は誰もいなかった。