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夢で逢えたら…

 「なんでこんなとこに来ちまったんだろうな…」

俺牧村悠平まきむらゆうへいはそう言って頭を抱えていた。今は昼休み、にもかかわらず俺はひとりぼっちだ。誕生日順に席が決まっているので、8月生まれの俺はちょうど真ん中の席なのだが、そこだけ人が集まらずドーナツのようになっている。

自分で言うのもなんだが俺はみんなに避けられている。「孤独」と言えば恰好はいいが、まあお分かりの通りいじめられっ子だ。

「こうなるのはわかってたけど、受験勉強もっとしっかりやっとくんだったなぁ」

田舎では珍しく、俺は中学受験を受けた。その理由はよりよい環境で勉強して将来に生かしたい。というものが1つ、もう1つは…こちらが本当の理由なのだが、この学校に来たくなかったということだ。ほかの中学校はいくつもの小学校の生徒を混ぜ集めて構成されるが、この学校は違う。ここからわずか数10メートル離れたところにある小学校と連携しており、小学校の卒業生がそのまま中学校の新入生になるという恐ろしい法則が成り立っているのだ。この制度は、小学校の時仲の良かった生徒同士には大変喜ばしいものだそうだ。しかし小学校の時からハブられてた俺はどうすりゃいいんだよ!と俺にとっては悪夢な制度だ。

 さて、話を戻すとしよう。そういう訳で友人のいない俺は今独りで飯を食べているというわけだ。

「あー、本当につまんねー。しょうがねえ、自分の世界に入るとするか」

飯を食い終わった俺は腕で枕を作り、頭を乗せて目を閉じ、下へ下へと落ちて行った。

 「試験時間は50分。ではよし、始め」

カリカリという鉛筆の音。えっ…これ何?ていうかここどこ?

「こら666番、試験はもう始まってるぞ。早く始めんか」

周りを見回すとみんな一心不乱に文字を書いている。

(666番?あっ、思い出した。俺の受験番号だ。じゃあここは聖皇学園(せいおうがくえん)!)

確かによく見ると去年の受験会場そのままだ。

(じゃあ問題も)

そう思い恐る恐る紙をめくると

(同じだっ――――全く同じ問題だ)

俺はこの受験に落ちた時の悔しさから問題を何度も解き直し、完璧に解けるようになっている。というか途中式から答えまですべてを暗記している。

(これはいける)

そう思い、書き始めると鉛筆が止まらない。ぼーっとしていたので残り30分しかなかったが、10分を残してすべて埋めることができた。

(これはもらった)

心の中で大きくガッツポーズ。しばらくすると

「1次試験はこれまで。合格者にはおって連絡する。2次試験も頑張ってほしい。以上、解散」

そう言って先生はどこかへ行ってしまった。

「さて、俺も変えるとするか」

家に帰ると、心配性の母親が玄関に座っていた。

 「悠ちゃん、テストどうだった?ちゃんと出来た?全部埋めた?」

「うるさいなっ、全部埋めたよ」

「そうよねー。あんなに勉強してできなかったら馬鹿みたいよね。お母さん泣いちゃうわ」

(あー、そういえばそんなこともあったな)

記憶を手繰り寄せる。なるほど、確かにあの時母さんは「あんなに頑張った悠ちゃんが解けないなんて問題がおかしいわ」

とか言って止めるのに苦労したな…うん。トラウマになりそうだ。心の奥底にしまっておこう。そう考えていると母さんが

「お父さんにも報告しないとね」と言った。

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