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回収

あと二回な……寝るお休み

走った。幾ら遠距離武器だからといって、私が力を抜く道理ではない。レールガンの引き金を引くように口を細々と動かしながら、重機を貫いていく。生身の人間に臆する事はなかった。持っているのはどうせ重火器だろう。私の能力だってバレていない。仮に能力所持者がいたとして、彼らは高慢だ。故に身体の防護を怠る。簡単に死んでしまうのに。貫く事が出来なかった銃弾がカンカンと機体の金属を叩いて地面へと落下していく。機体に乗っている間は無意味だと思っていた私の能力も捨てたものではなかった。銃弾をほぼ無限に受け止められるし、何より機体本来の性能を惜しみなく使える。


「済んだか。さっさと港を占拠しよう。話にならない」


戦闘をする前に、旧英国領まで来てこのザマか、と私は思った。東軍と西軍の区別なんてない。旧英国領には情報が行き渡っていなかったようだ。となると、旧ロシア等にも届いていないのだろうか。あのあたりにも行かなくてはならないな、と思いながら、目の前から飛んできた戦車の主砲を右手で払う。億劫だ。効果も見られないのに同じ戦法を取るとはどこの三流指揮官だ。


『まァ、ザルってわけじゃあねェけどな。普通の相手をしているだけだったんなら普通に戦えただろうな。三流って程じゃあねェ。三年前なら十分一流だろうよ……三年前ならな』


『ティアシリーズの確立は五年前だけど、そのシリーズは諸費用の問題でスルー。実用化が実現したのは極最近だよ?むしろティアの運用には年日達が無駄過ぎるくれェに凄かったから制圧成功したと言っても過言じゃねェし。むしろこれが普通っつゥか』


「貴様等の話は聞いていないだろう?私はただ早く事を済ませたいだけだ。こうしている間にも私たちの命は晒されているんだぞ」


私が言って会話を中断させる。兄妹揃って嫌そうに返事をして黙る。これだと私が悪役みたいじゃないか。運用に関して言えば東軍はかなり先を走っていた様だ。西軍制圧も夢じゃなくなった。少しだけ私のテンションが上がる。


『さっさと行こうぜ和音さんよ。日が暮れちまう』


そうだな。行くとしようじゃないか。私はインカムを小突いて綾火を呼び出す。基本通信はつながっているものの、こうした方が分かりやすいだろう。


『暇です和音さん早く行きましょう』


貴様待機していたな。


「綾火、今から港を探すから手伝ってくれ。空中から室咲と私が確認するから、貴様等四人で地上を探してくれ。さっさとケリを付けよう」


飛翔するための言葉を紡ぐ。


「───紅葉と桜をカタチ取られた翼をはためかせて地上から足を離せばそのまま上空まで加速装置を使って上昇して」


言葉は現実へと変わる。私は空を飛んで確認した。旧英国領と言えど、その荒れ方は他の場所となんら変わりなかった。広く開けた平野には建造物はおろか、物一つ確認出来ない。少し離れた所から綾火の機体と真希の機体が合流する事を視認すると私は360度の視界を活用して港を探した。


キラリ、と遠くから光が見えた。


咄嗟に私は翼を起動させて高速滑空を開始する。光ったその部分に私は不穏な空気を感じ取っていた。身体中に粘りついてくる様な予感が纏わり付いて気持ちが悪い。数秒で目的地に到着するも何も確認出来なかった。気のせいだろうか。


「───やはり散るな。固まっておけ」


インカムを小突いて指示を出す。回線は開きっぱなしのため直ぐに全員集合する。機体から降りて、私は全員の表情を見た。疲れ切ってはいない。、むしろ足りないと言わんばかりに表情が明るい。


破裂音が響いた。瞬間的に私は能力を発動し、無銃力空間を壁状に展開するイメージを作り出す。大きさはすっぽり体が収まる程度。方向性は一つのために失敗はしなかった。私の手に少し食い込んだのは銃弾だった。まだ兵士が隠れているというのか。私は服の袖からナイフを取り出して右手に持った。磨いた所為で輝く私の顔までもが写った。


「お前器用だな…能力の範囲変えるのが一発かよ」


「私は元から構造がおかしいからな」


「そういうもんじゃねぇよ」


年時からすれば私は異常なのだろう。能力所持者という異常において更に私はおかしい。元から思い込みの強い人間だったが、私が一度思い込んだ事は能力のおよぶものであれば簡単に使用出来る。あくまで自分の能力に関してだけだが。


私はナイフを左手に当てながら切れ味を確かめてた。綾火が叫んだ。


「避けて下さい!!」


私は綾火が銃弾について何か誤解しているんじゃなかったのかと思った。火薬攻撃系統は全て無効化する私の能力があればこのレベルのものであれば簡単に───


どん、と胸を突き飛ばされる。体のバランスを崩して地面にしりもちをついてしまった。その瞬間、


綾火が分断される光景を、その目で見てしまった。下半身と上半身が別々の経路を通って地面へと落下していく。その一瞬で綾火は笑顔だった。満足気に私に語っていた。ありがとう、とその言葉が口から漏れているのかと錯覚した。綾火の血液が私へと付着する。夏だというのに熱い血液に私は驚く。頬が血で濡れた。


「ぁ………あっぁ………」


声が出なかった。出せなかった、の方が適切だろう。私の思考はついていていない。綾火は、私を突き飛ばして代わりに死んだというのか。どうして、何故。思考がぐるぐる回る。彼女は死ぬ必要なんてなかったのに。優しくて、誰よりも他人思いで、綺麗な彼女が死ぬ道理なんてなかった筈だ。私でもよかったのに。こんなにも狂っていて、世界から否定されようとした私が死んでいればそれで事足りたというのに───それなのに、貴様は。私はその場で泣き崩れた。降りなければよかったと今更ながら後悔する。こんな世界に意味はあるのだろうか。こんな世界が半分も残っていていいのだろうか!?


「ああああああああああああああああああああああああああ!!」


叫ぶ。喉が張り裂ける程に私は叫んだ。


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!」


もう体がどうなったっていい。ただ、彼女に声が届く事を願っていた。現実は甘くない。だって、どれだけ愛を注ぎ込んでも復活しないし、必殺技なんてものもない。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


世界そのものを壊してしまいたかった。

次回予告


いいじゃん。もうどーだっていい。うちがぜーんぶぶっ壊す

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