表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/65

海で

理解不能だった。今この状況でどうしたらその結論に辿り着くのかの理由と、こんなにのんびりしていていいのかどうか。事実とは言え東を制圧した。軍設備が使える今こそ、一気に畳み掛けるべきではないのか。


水着、と言われたが、そんなものは持ち合わせているわけもなく、フロント?で水着を借り、上からパーカーなるものを羽織い、指定された場所へと移動してきた。早くもシートとパラソルが準備されていたが、人影はいっさいない。


いや無防備過ぎんだろ何やってんだよ。


はぁ、と溜め息を吐き、左手に付けられた腕時計を確認する。指定された十時から既に十分が経過していて周囲を見回してもだれもいなかった。何をするでもなく、こんなことなら銃でも持ってくればよかったと後悔する。もしかすると、知らない銃が軍の倉庫にはあったかもしれないのに。興味本意で火炎放射器とか解体してみたい。



「っだーもうテメェ何くつろいでんだよ室咲さんよぉえぇ?こちとら必死で作業してんのに優雅にお昼寝ですかァ?右手と左足を繋いでやろうか」


「ちょまッ!?洒落になんねぇから止めろ年時!!悪かったって何となく見当はついてたから!」


後方から声がした。後ろを振り向くと真っ白な少年が立っている。年の差は然程ないはずだが、その華奢な体型と服装のセンスからして年下に見える事も多々ある。俺より頭一つ分小さく、どこかウサギを連想させる外見に、ちよからぬ感情が芽生えそうになる。下半身はレンタルの水着を着ていたが、上半身には、肌を覆う様に水着は長袖で、更にその上から白衣を羽織っている。そこで本職をアピールしなくてもいいだろうに。


「お前、それ暑くねぇ?しかも初心者なら確実に泳ぎにくいと思うんだけど」


「コレねェと日焼けして明日動けなくなるんだわ。白衣も日焼け防止な。襟立ててんのもワザとだからダセェとか言うな」


「ダセェ(笑)」


訓練の理由はもっともらしいものだったが、どう考えても泳ぎたいだけだった。何が水泳訓練だ。そんな付け焼き刃で西まで渡れる訳がない。目的は初期メンバーの和音、年時、年日、そして綾火の四人が泳いだ経験がない事から、海を渡って西へ向かうのは危険だと判断いて水泳訓練が開始された。まぁ、早さを競うわけでも無し、長く遠く泳ぐことが出来れば十分だろう。………水が怖いとかいう連中がいなければいいんだが。


「そういえば年時。お前が泳げるようになる機械を作ってしまえばそれで良くね?その方が早く泳げるだろうし」


「良いけど、それで誤作動したらお終いだし、そのまま溺死するなんでバカみてェだろ?最後に頼れるのは自分のカラダなんだよ」


「あ、そんでさ、あのクソアマの足って……?」


「ん?あぁ、真希の足?そうだけど。俺は拵えた義足だ。軽く防水だし、泳げるようにはしてある。……理論上は」


確かにそうだけど。まぁ、全部任せてていいか。俺には機械関係なんてからっきしだし。俺には何も出来ない。出きることは、気絶からの早い復帰と、銃組み立て知識に限る。前者以外は後天的なもので、誰でも努力すれば到達出来るものだ。


俺は遠心力を使って反動で起き上がり、ただ、自分の故郷があるであろう海を眺めた。忌々しいとしか感じられない。この海を渡ってしまえば、俺の狂っているとしか言えない故郷に到着する。生まれたのは西で、育ったのも西だが、俺は其処を捨ててこっちに渡った。残されているものは何もない。目も、耳も、家族も故郷も失ったが、後悔は無かった。


「あー!すまんすまん。ちょーっとばっかし遅れてもうたわ。女子の着替えは時間がかかるもんやからなー」


少し遠くから声が聞こえる。独特のイントネーションで話す赤髪の女だ。そして、その脇には和音に年日に綾火。それぞれ特徴的な水着を着ていたが、和音は何故か綾火の後ろに隠れていた。


和音の水着はセパレートタイプで、首の後ろに紐が回っているタイプのものだ。色の基調は赤。いつも身に付けているバンダナを左手に巻く事でアクセントとなり、和音の体の華奢さが強調されている。水着の柄は……あれ、なんだろ。燃えているのか?多分炎だと思う。遠目で見ている所為であまりよくわからない。控えめとしか表現できない胸元も相まって可愛かった。


綾火は全身を覆う花柄。袖は肘のあたりまでで、足は膝の手前まで。花柄は桃色をしている。梅か桜か、そんあ所だろう。真希は案の定ビキニタイプのもの……かと思っていたが、まず水着を着ていなかった。恐らく、あの服の下に着ているのだろうか。フリーサイズのパーカーに、ホットパンツ。パーカーな水色で、何とも夏らしい印象を受ける。ホットパンツから伸びる長い足は、一体どこからが義足なのかが見た目では判断がつかない。年日は白スク。殺していいかこの兄貴。


「後悔、か」


ふと声を漏らしてしまった。命がけで東に渡ってきて良かったと思える。侵入ルートは多くあるが、主に纏めると二つだった。一つは、自分で自力で船で渡る。二つめは、密航。一度元英国に向かう通信船に乗って、それから東への通信船に乗り換える。なんだかんだ言いながら、元英国にはどっちつかずの孤児が大量にいるのだ。しかも、一度は密航に成功したという実績もある。密航は危険だ。理由は、見つかったらお終いだからだ。子供の量では限界があるし、船を制圧するとなればそれなりの戦備が必要になってくる。それをクリアしているからこそ、俺はあそこをどれだけ掌握出来るかが、勝負の分かれ目だと思っている。


「後悔なんてねぇと思ってたんだけどなぁ」


故郷を思い出してしまうあたり、俺はまだ独立していないのだろう。父もははも信頼も、それそこ奪われたと言っても良い。


「義足の調子、良さそうじゃねぇか。というか本当に良かったのか?義足だってもっとハイスペックなもんがあるっつーのに。手前ェの能力に合致したもんでも良かったんだぜ?」


「んにゃ、うちら能力所持者は異常だからこそ、それ以上は望まんのや。そんなんしたら、それこそ人外やん?」


「カカカッ、違いねェ。出来ればその立派な思考を分けて欲しィもんだ」


真希と年時の会話が右から左へと流れていく。俺自身に興味がないのか、過去を思い出しているのかもしれない。どちらか定かではないが、別段心に止めておくものでもなかったのだと思う。


「ねぇねぇ兄ちゃん。どう?年日どう?可愛い?」


「超可愛い。どれくらい可愛いかと言うと今すぐぶち犯したくなるくらいに可愛い」


「んもう兄ちゃんったら」



今すぐこの兄妹ぶん殴っていいか。

次回予告


おいクソ坊主


んだよクソアマ


殺すぞ


何故に!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ