何者に成れたのか
次回から長い長い戦闘シーンに入るから一気に投稿するぽよ
やっぱり勢いはいると思ったんだけどここまで長くなるとは思って無かった戦闘シーン
最後の行動。ラストスパート。時間制限ギリギリで、ただ目の前にあった。何だ。青色の騎士。二本の刀を腰に提げ、力を失った様にだらんと垂れている。この手が突き刺したのは一体何処だ。今必要な事は何だ。事実。そう事実が大切な事。今回起こった事実は。
俺が、傷つけたという事実。狂気に呑まれていたとはいえ、判断は出来たはずだ。乗りこなせなかった。飼い慣らせなかった。故に、故に俺は殺しを………仲間を、刺し殺したのか。何故。
「ぁぁ……何で………どうして………」
事実は容赦なく俺を突き刺してくる。感情が一切感じられない。何故、どうして、疑念だけが頭の中をグルグルと回った。サラサラと音を立てながら、体中を覆っていた砂鉄が地面に落ちていく。露になるのは、濁った緑色。名前は鰐。無作為に、ただ刈り取る事しかしなかった死神の手が、俺の視界に入った。
”赦せなかった。どうしても認められなかった。全てを奪っていった軍人が、どうして今になって俺たちに関わりを持つんだ。どうして、それを和音は認めたんだ。俺の方が相応しいのに。どうして、能力が優れているという理由だけで、折角作った輪の中に、俺が眼も耳も心も代償にしてまで保った俺の輪の中に奴は、土足で入ってきたというのに、それが赦されようか”
圧倒的なまでに濃い負の感情。狂気が心を蝕む。体には異常が見られない。ただ、心が崩壊していく事はわかった。だが、自分が狂っているのに、それをどうして止められようか。俺の脳を、感情を、内面的な物を全て飲み込んで、狂わせてくる。殺した。仕方なくではなく、保身でもなく、ただただ己が欲求、願望によって、その因子を殺した。害があったわけではない。気に入らなかったから、その立場が赦せなかったから。
意味のない正義。俺は自我が崩壊することを恐れた。崩壊することだけは、壊れてしまう事だけはしたくない。ならば、保身しろ、と自身に言い聞かせる。己を守る為の正論を作れ。考えろ。ーー嫌だ。子在れたくない。何時までも、あいつの隣で、正しい人として、ずっと一緒にいたい。正しいから、俺のしたことは正義で、それによって、悪は全て殺せるから。俺が正義に。そう念じる。
「そ……うだ……よ。なァに………言ってんだ………」
一つの結論に辿り着く。何処までも正しい正義。何処までも正しい正論。どこまでも正しい、自分自身。
俺自身が裁くのは全て悪じゃないか。なんだって、俺が正義なんだから。俺が間違えた事があたか?ないだろう?今まで正しい選択をしてきたんだ。悪の判断基準は俺自身。俺の思考で、悪と認識した全てが悪だ。故に、今回も同様。
狂っていたからといっても、俺に思考能力はあったんだ。よって、狂気は俺の感情の一部なんじゃないのか。狂気から起こった殺意は、正義によるもので、つまりはあの軍人は悪だった。
「そォだよ。全部、全部全部!!和音を除いた全ての存在が悪なんだよ!!だから全部殺す。何もかも西も東も老人も子供も人間ぜェェェェェェェェェェェんぶ!!!」
俺が狂えば、正義が真っ当できる。何故かって、俺が正気だったら最低で最悪の気分になるじゃないか。狂っているからこそ、その行為が正当化されて正しく、愉しいものとなる。体全体が狂っていく。狂う為だけに、殺す為だけに体が作り変えられていく様な錯覚を感じる。もう意識を保つ必要もない。理由は、和音はあの場所で縛ってあるから。機体も破壊した。動いているモン全部殺せばいい。それで正義を真っ当出来る。狂気→正義。そんな方程式が形成されつつあった。和音が正義で、俺もまた正義。だから、狂気は正義。だから、殺す。
「狂え狂え狂えェ!そォだよ速く!!俺をもっと狂わせやがれェェェ!!何処だ!?一体ェ何処にアレはあんだァ!?」
狂気を探した。狂気の大本となっていたプログラム。 C program。激痛を代償に、命を代償にして己が力に変える狂っているとしか言えないようなプログラム。確か、あの時は年時が機体内にホップアップを表示したんだ。つまりは、そのプログラムは既に機体内にインストールされていて、存在するという事だった。
ーーない。無いないない何処にもない!!
幾ら探してもそのプログラムは存在していなかった。何故、という疑問ではなく、先に焦燥感が襲う。狂わないと、正義じゃない。狂っていなければ、正義足り得ない。正義になれない。正義さえあればなんだって出来る。それが悪を消す手段なのであれば、殺しだって正当化される。狂気→正義を是としたが、狂気お野茂のが無ければ、正義へと至る方程式が完成しない
「狂いたい………もっと……激しく狂いたい……狂痛い」
痛み。狂う為には痛みが必要だった事を思い出した。もっともっと、自身が崩壊するような痛みが必要だった。静かに、今はない右目へと手を伸ばす。眼球は摘出されていて、ぽっかりと穴があいたそこには、傷がまだ完治していないのか、桃色の肉を曝け出していた。触れた瞬間に爆発的な痛みが走る。反射的に手が引っ込もうとしたが、それを意識で制する。穴の中に自分の親指を押し込む。触れ、押し、抉る。肉を裂いた瞬間に耐え難い痛みに襲われた。痛い、痛い、痛い。言い聞かせた。痛い、痛い。痛いから、狂える。自発的に俺は狂える。だから、正義になれる。だから、全てを殺し、全てを奪い、全てを手に入れる。
「………っぉ、れは………正義だ」
大切なものを守ることが正義なら、純粋なまでに正義と呼べた。世界すら、どんなものでも、一人の為だけに全て殺す。それが正義。
「正義だァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
指を押し込む。視神経を抉る。肉を押しつぶす。激痛。痛み。狂う事で正義は成される。正義あ容赦しない。操縦桿を握って操作することすらも億劫になってきた。正義を真っ当するためなのに、手順が必要なのか。殺せ。滅せ。壊せ。正義はただ一つを除いて全てを奪い取る。周囲には何もない。白色の残骸があるだけだった。痛い。古傷を抉る。痛い。思い出す。痛い。思う。全てを狂い殺す。
機体が呼応するようにビクッと動いた。背中には加速装置が。展開された仮の翼を振るわせる。ジェットで推進力を得た緑色の死神の周囲には砂鉄が集まってくる。黒い狂気のように、纏わり付く様に緑色を黒色に染め上げていく。目的がそもそもない。何を殺せばいいのか、何処の誰を殺せばいいのかさえ、まったくといっていいほどに理解できない。ただ狂いたかった。自我の崩壊を防ぐ為、自身の罪を感じたくないから、開放された瞬間を知った今、狂わぬまま『室咲』という人格を保つ事は出来なかった。この世界すらも壊す。壊してしまえば、もう二度と壊れる事はない。
「西へ」
そう呟いた時、機体の後方から、頬を掠めながら橙の閃光が走った。遠距離からの狙撃は仕留める事は出来なかった場合にはその出所がバレる。そう本能が知っていた。振り向く。
紅色の正義がこちらに銃口を向けていた。隠れる事などしていないただ、そこに悠々と、堂々と直立していた。
「行かせると思うてか?」 side off
次回予告
ま………っずっ……
甘ェ甘ェ甘すぎんだろ!?んな鉄屑ぶち込んだくれェで勝ったと思ってんじゃねェよなァ!?え゛ェ!?




