表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銃の効かない操縦士  作者: 木樵蝋梅
14日目
42/65

冷たい目、熱い血、こびりつく狂気

 私は狂気だ。殺す事にしか興味のない私は機体に乗って中心地まで動かす。失った腕は腕は殺した機体の右腕と付け替えた。得物は長く鋭い爪。操縦士を串刺しにする事が、一番効率的なのだろうか。先ほどの戦闘で操縦室場所は把握した。正確には人間で言う、水月の部分。構造上、そこにしか作れないのか、単に都合が良かったのかは不明だが、場所を把握するだけでいい。その理由は必要ないだろう。つまりは、超至近距離から一機ずつしか殺す事が出来ない。囲まれた時はもうそれだけでお終いだ。それこそ、泥試合になる。


「殺し合い、か……くくっ……はははっ!!なんだ殺し合いか!私が求めていたのは悲鳴ではなかったのか!表情なのではなかったのか!!思いの外、私は狂っているらしい。顔がニヤけているぞ私。実は殺し合いが好きだったのか?愉しかったのは奪う事なのか!?はははっ……あははっ!!」


 駄目だ。もう戻りたくない。こんなにも狂う事は素晴らしかったのか。こんなにも愉しいものだったのか。私は少し奪われ過ぎたらしい。その分、奪い返してきた。兵士の生命を奪う事。それがそんなにも愉しかったなんて。私は自分を勘違いしていたらしい。こんなにも、愉しい。


ピピピッ、と機体が何か通信を拾った。会議通話を拾ったのだろう、メンバー表示に、年時、室咲、年日、綾火の四人に、私が含まれていた。


「綾火は受理しなかったみてェだな。多分集中してんだろ。通達だ。無効の戦力は残り三割程にまで減った。和音は機体を損傷。今修理してる。あとでティア持って来い。必要な部品が足りないからな。どっか問題あったらそのまま戦線離脱してくれ。残りは残ってる戦力で十分だ」


「年日はこのまま抜けさせていただこうかねェ。そろそろ弾薬が切れそうなんだわ」


「うちはもちょいイケるわ。機体の時は五倍までイケるんはわかったし。十分やろ」


「俺は掃除に付き合うよ。色々心配事あるし。和音はどうする?」


「……………あぁ、私か。私もこのままだ。私が始めたことだしな。責任くらいとるぞ」


「ん。わァった。んじゃァ俺と室咲と和音、んで真希でいこう。地図と現在位置送るから、そこに来てくれ。じゃァな」


 それだけ言うと、年時の通話が一方的に切られる。地図のホップアップが表示される。すぐ近くだ。また、殺せる。まだ、狂える。命のやりとりが出来る。そう考えるだけで、顔がニヤけていた。確かに私は凡人だが、狂う為だけに生み出された私には狂う才能がある。だが、それしかできない。他のスペックは人間の平均的数値にしかならない。それは私が、まだ人間であろうとしているからなのだろうか。


「人……か」


 まだこれだけ狂っても、私はヒトだった。ヒトとして生まれたのだから、当たり前の事だが、私はヒトと呼べるのだおうか。人道的には、明らかにズレている。人は普通、殺し合いを愉しむモノではない。人とは何か、そのラインは、何か。動物ですら人間としての基準を満たせば、人足り得るのか。


「……っふ。まぁいい。だからといって私とは関係ないのだから。私は狂人だ」


もっと血を感じたい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 集まったのは私の修理された紅葉桜と、室咲の鰐、真希の青雨だった。残りは通常タイプのティア十数機程。天使は残り400機程らしい。元の数はあつらの方がおおかった所為か、まだまだあちらのほうが優位に立っているといえる。こんな少数でなんとか出来るものなのだろうか。天才の考える事は理解出来ない。


「ん。揃ったな。うし。じゃァ操縦士、降りろ。死にたくないんならな」


「年時、私はどうするのだ?」


「んー……まァ、いいか。乗っとけ」


 年時は返答に適当に自己完結してして、一方的に通信を切る。まぁいいか。見物させてもらおう。年時の考える事だ。失敗することはないだろうが、私が口出し出来るものでもない。


「っと。リミット5。プログラム起動。適切造型に変化。ノルマ……OKクリア」


「おまっ……!?年時てめぇ!んなもん使わねぇって言ってただろうが!」


「ちげェよ馬ァ鹿。何の為に人降ろしてると思ってんだ。よし……動いてくれよ?」


 年時がそう言い、何かが起動する。機体の造型が変化していく。閉じていた口が開き、4足化する物、手を失い、鋭く尖っていく物、禍々しい黒い砂鉄を体に纏う物。それぞれが違った特徴を持っていたが、どの機体にも共通する事が一つだけあった。口端が卑しく吊り上がっている。私の機体にも同じく変化が訪れる。と、言っても、些細な事だった。


 手に付いていた鋭い爪がすべて剥がれ、その代わりに右手に一本の小刀が握られている。そう。まるで………


「…………私」


 吊り上がった口端、手の小刀ナイフ。たった二つの特徴のはずなのに、それを『私』と思ってしまう。変化した彼らはギシギシと吠えていた。擦れる音の全てが、私には歓喜の嗤い声に聞こえる。早く指示を出せ、早く殺せと言ってくれと、彼らは懇願するかの様に金属パーツを軋ませる。


 あたしが、狂気に押し付けた記憶が頭の中を過る。


 馬鹿げたパラメータ。綾火、そして室咲との一件。そうだ。私に頼った癖に、私は力を貸しただけなのに、あたしは私を否定しようとした。憎い。私を否定する全てを殺したい。つまり、私はあたしを殺したい。つまりは、この肉体を破壊したい。つまり、


ーーーーこの狂気に染まった機体で殺せば、全てが解決する。


「狂人と呼ばれても構わない」


 何故なら、私は既に狂っているから。何故なら私はあたしを殺したいから。何故なら、私は殺しを愉しめるから。


「私はしたいさつじんをするだけだ」


 何処までも貪欲で、何処までもドス黒くて、何処までも汚い。満たされる事あ一時的にのみ。一度味わった上限の更に上を欲するのが、今まで人類が進歩してきた理由でもある。それが進歩の源ならば、私にとっては殺しは愉しむ為に必要な事だった。綺麗な人間。熱い人間。良い心を持つ人間。それは個人が形成した殻に過ぎ、動物的な本能は三大欲求によって成り立つ。睡眠欲、食欲、性欲。そして、死にたくないという生存本能だけが人間が本来持っている感情、動く原動力だ。


「ーーーーなぁ、狂った機体わたし。私を乗せてくれないか?」


 私は欠落した人格……否、それは適切な表現ではない。私は狂気そのものだ。私にあるのは、あたしからの情報として知っている世界と、数少ない感情と、そして狂気であるが故に殺人衝動。だから私は今、殺しがしたい………ッ!


 私の様な機体が呼びかけに応える様に私の心へと近づいてくる。機体には感情なぞないはずなのに、私はそう形容する。私の心は近づいていく。そして、二つは交わろうとした。


これで、思う存分狂える。言語なんていらない。ただ、狂える。


「んんっ………あはっ……ひぁっ………!!はっ………あっ……」


 強烈な吐き気と快感に襲われる。今までに感じた事のないような感覚に私は酔う。愉しい?違う。感情が悦んでいるのに、言葉で表現できない。喘ぐように声が漏れていく。視界がぐにゃりと曲がる。歪む。


「あがっ……んぐっ………はがぁっ……あああ!!!」


 痛みを感じた。手や足ではなく、体全身から感じる痛み。この痛みすらも快感と受け取ろうと脳が刺激を出す。痛みを感じる事は久しぶりだと言うのに、懐かしく感じない。今を感じる事で精一杯で、その他に思考が回らない。この快感をもっと感じていたい。弱く、甘く、淡い痛み。少しずつ、少しずつ私の脳を痺れさせていく。


 纏わりつく様な甘い痛みは、体の中に侵入してきて、それが激痛に変わった。


「はぐぅぅぅぅ!!!………はっ、……あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」


 私の体内に異物を受け入れたかの様な感覚だった。、裂ける。痛い。痛いのに、それなのに、私の脳はそれすらも快感として刺激を出した。顔の筋肉に力が入らない。表情は蕩ける様な顔になっているはずだ。体の奥底から何かが満ちていく様な感覚。波長となって私という器を満たしていく。溢れ出たとしたら、私はどのようになてしまうのだろうか、と言う好奇心を持ちながら、私は甘い、鋭い快感に溺れる。


 満ちる。溢れ出ていく。錯覚だが、そうとしか表現できない。なのに、その限界を突破する寸前で、私の激痛いたみは消える。虚しい。寂しいと私の器は減っていく。少し減ると、また快感に襲われる。何度も、幾度も私は寸止めされていた。これは性的快感でないと理解していながらも、私ただ、イきたいと懇願する。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!オ゛オ゛ォォォォゥゥゥア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」


 私の意識は白く、チカチカしたモノに襲われ、絶頂に達した。

次回予告


受け入れてやるよ。その代わり、俺に和音を救わせやがれ……!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ