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銃の効かない操縦士  作者: 木樵蝋梅
1日目
4/65

特殊能力持ってる人って大体精神構造おかしいよね

あの後、俺のことは名前で呼び捨てにしてくれと頼まれてしまった。渋々了承したのだが、変な感じだ。ちょっと気持ち悪い。


「年時、この<悪魔界の涙>には、誰が乗るのだ?見た所、1機体しか見あたらないのだが……」


「あ、俺俺。俺が乗るッス。はい」


さらっと自己中的な発言をしおったなコイツ。人を誘っておいて自分が乗るんかい。


「和音にも作ってやるよ。材料さえあれば、だけどな。いまから材料の調達にいくんだよ。車でも鉄砲でもかまわねぇ。鉄さえあれば俺が作る。俺ってばこういうことしかできねぇからよ。妹にいつも材料は取ってきてもらってたんだ。しかーしッ!今日からは兄である年時が参戦するしなッ」


よっぽど嬉しいのだろうか。少々ばかり口調も弾んでいる。キラキラとした瞳が気持ち悪い。そんな顔をするなよ。


「ごめんなさい、和音お姉ちゃん。兄ちゃんったら能力持ってないから、いつもここでお留守番だったから寂しかったと思うんだ。そっとしといてあげて」


なんだこの妹は。兄貴のフォローまでするのか。意外どころか尊敬までするぞ。めっちゃ可愛い。超可愛い。


「…と、言うことは妹である年日ちゃんがいつも調達に行っていた。しかも物言いだと年日ちゃんは能力が使えるのだな?」


私も、生まれつき能力を保持している。銃弾を受け付けない体なのだ。ちょっとでも銃弾が肌に触れると、銃弾の方から勢いを失ってそのまま落下していく。これを私は勝手に<無銃力空間>と呼んでいる。厳密に言うと、火薬を用いているものなら可能。幼少の頃、一度だけ爆風に巻き込まれたことがあったが、その時も無傷だった。


今こうして生きていられるのも、この能力のお陰なのかもしれない。まぁ、それにしか意味のない能力だが。殴られれば痛いし、火薬以外での攻撃に関しては、私は一般人と大差ない。


年日ちゃんはクスクスと笑った。あぁ、私が男であれば襲いかかっていたものを。


「和音お姉ちゃんは、ちゃん付けで呼んでくれるんだね」


「んなっ、た、たまたまだ!それに年日がお姉ちゃんと呼ぶからであろうに!?」


「年日ちゃん。だよ」


「と、年日ちゃんは何の能力なのだ?」


無理やり訂正された。この娘、将来悪女になります。気を付けて下さい。


「年日の能力は機械との一体化、かなぁ?なんというか、説明しにくいな。年日が触った機械は使い方がどんどんわかってきて、構造まで理解しちゃうの。あんまり触ってると、意識がなくなっちゃうんだけどね。15分位なら余裕だよ」


どうだ、といわんばかりに年日ちゃんは胸を張った。誇れる物でも何でもない。危険だ。もしその時間をオーバーしてしまったところを兵士に狙われたらどうする?持久戦に持ち込まれたらどうする?答えは簡単だ。死ぬ。容易に能力を口にする事に関しては置いておいて、はたまたこういう境地でしか意味のない能力だ。……まぁ、私もだが。しかし、私はあの兄妹が少し羨ましい。何よりも家族といられることがどれ程素晴らしいことか、私は両親を亡くしているために良く分かっている。


「ああして、兄妹は支えあっているのだな。……家族、かぁ」


柄にもなく独り言を言った。私には知る限りの親戚はいない。両親と私の3人だったからな。弟でもいれば可愛がっていたものを。少し残念だ。知る限り、と言ったのは父親と母親しか親戚を知らないせいだ。もしかしたら従兄弟がいるかも知れないという期待を捨て切れていない現れだ。


私は小型の刃物を手に取る。名前はなんていったっけか…確かアーミーナイフだった気がする。ナイフの背の部分はギザギザしていて、肉に突き刺してちょっとばかり上に持ち上げて抜けば、大抵の内臓は潰せるし、痛みに苦しむ兵士を見ることができる。


実に面白い生き物だな。人間なんて愚かなだけだ。私がこれを持って歩いていると下手な声のかけ方をしてくるし、反抗すれば鉛弾ぶち込むぞ、なんて映画でも聞かないような台詞言うし、本拠地に乗り込んで取り敢えず1人刺し殺してみた所、大勢がマシンガンで私を撃った。まぁ、全て能力で無効だったが。驚きと恐怖で歪む馬鹿の顔は何時見ても飽きないな。実に楽しい。特に変わっていく瞬間は格別だ。最高、という陳腐な表現ではまだ物足りない。


あのために私は散歩に出ていくのだ。


「よっしゃぃ。和音、準備はいい感じ?」


年時は例の<悪魔界の涙>に乗っている。中にいるため声は聞こえないはずだが、まぁ、簡単なスピーカーでも付けているのだろう。


「あぁ。いつでもいいぞ。今日はどの当たりに行くんだ?言っておくが、ここから西に500メートルの基地はやめてくれ。あそこにはちょっとしたトラウマがあるのだ」


あそこには銃火機だけではなく鈍器まであるからな。初めていった時は死ぬかと思った。


「違ぇって。行くのは第3貯蔵庫。食料調達、武器調達に領地確保。3拍子揃って最強だろ?んで、そこを本拠地として使っちまうのさ」


第3貯蔵庫だと?あそこは確か警備がきつかった。到底子供がどうこう出来るレベルではなかったと思うのだが、それも承知の上だろうか?


「あそこで何とかなるもんなのかー?」


私は年時に聞いた。さっき会話が聞こえていたからこっちの言うことも聞こえるだろう。


「ん、なァめてもらっちゃァ困るぜィ。和音姉。言っとくけど年日は余裕だかんなァ。あんなクズ共には負けねェに決まってるだろうが」


後ろからやけに口の悪い台詞が聞こえた。あーもう。誰だよ。今大事な話してたろ?………?私は後ろに振り向いた。


「よっ、和音姉。」


嘘だ嘘だ嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘


何?誰この子。アルビノで身長は年日ちゃんくらい。でも目がおかしい。めっちゃ吊り上がってますやんか。しかもマシンガンの弾肩から下げてますやん。重いんとちゃいますんそれ。


「私の年日ちゃんを返せェェェェァァァアアアアアア!!!!」


「ちょ、そんなにびっくりする?和音姉は能力持ってるって言っていたから大丈夫だと思ってたんだがな」


やめて!年日ちゃんのイメージを返して!!


「ま、誰と会ってもおんなじ反応だし、今更驚くもんでもねェがな。そーれいくぞ。警備が緩い時間っつーもんがあるんよ。それを狙う。勿論、殺せ」


私の天使はいなくなりました。


…………………………精神ポイントは零。もう今日は立ち直れません。誰か助けて下さい。


「ほい、ついたぞ。第3貯蔵庫、うっひょーやっぱりでっけーな」


ん…?もうついたのか。早いな。私が気を失っていただけかもしれんが。


「ほら、行くぞ和音姉。こっからは戦場だからなァ」


……………夢であって欲しかった。


「ほれ、ってか和音姉ってさ、超軽いな。一体何を食ってたらそんな軽くなるんだ?ダイエットならしねぇほうがいいぞ。脂肪があったほうが長生きできるからな」


うるせぇ。貴様は乳に栄養がいってるだけだろうがちくしょう。


「ところでさ、和音ってそのナイフだけでいいのか?最近じゃあ鉄砲なんて腐るほど持ってるぞ」


「問題ない。私は銃弾に肉を貫かれたことがないからな」


「兄貴、和音姉は能力持ちなんだよ。ダメ兄貴とはちげェ」


それにしても年日ちゃんって能力のせいで性格がありえない位変わるな。年日ちゃんって呼ぶのやめようか。


「それじゃあ、各自解散。司令部で落ち合う。いいな?死ぬなよー?」


そんなヘマするわけがなかろう。まぁ、存分に恐怖を楽しめるいい機会だ。流石に初対面にあの状態を見せるのは気が引ける。


「んじゃ、兄貴も和音姉も死なないでねー死体の処理が知り合いってのはヤダかんなァ」


「ん、了解」


右手のアーミーナイフを握り締め、入り口へ向かった。勿論、そこには見張りの兵士がいる。幸い、刃物や鈍器は持つてはいないようだ。しかもショットガンかマシンガンを抱えている。これはこれは。私に殺してくれと言っているようなものじゃないか。


私は兵士の目の前にたって、アーミーナイフをちらつかせて挑発する。大抵の見張りレベルの兵士なら、これですぐに襲いかかってくる。カモとはこのような馬鹿のことを言うのだろう。


「だれだ!?……ちっ、なんだ難民か。食べ物はやらんぞ?その物騒なモンを捨てて、さっさと帰りな」


意外と冷静だな。この兵士。面白い。このようなものの歪んだ貌は絶品だ。


私はナイフを構えた。できる限り素人を装い、向こうを油断させる。愉悦に浸った者を蹴落とす感覚は私にしか分からないだろうな。これが分かるのは恐らく私だけだ。


「すまねぇが、面倒事は嫌いなもんでね。さっさと殺すことにするよ」


兵士はショットガンを手に取って引き金を引く。パァンという乾いた音の後、銃弾は私に触れた。地面に落ちた。


「んなっ……!まさか…まぐれだまぐれ!!」


兵士は引き金を幾度も引いた。しかし銃弾は私にちょこんと触れただけで、傷一つつけられない。私はナイフを持ち替えて、刃を兵士に向ける。一歩、また一歩とジリジリと間合いを詰めていく。兵士の銃弾が切れた。


「くるな……くるな!こないでれぇぇぇぇぇええええ!!!!」


兵士はそばにあったマシンガンを手に取って私に乱射した。もちろん私に傷はない。弾が尽きた。ここからが、私の楽しい時間だ。


「もうおしまいか?やけに楽しくない軍人だな。私がやったほうがいいんじゃないのか?」


私はまず、ナイフを持ったまま兵士の後ろに回り込み、首筋に当てる。


「なぁ、御仁。血の色って見たことあるか?」


軽く切って、ナイフに血を滴ら(したたら)せる。


「これが、人間の、血だよ。どうだ?綺麗だろう?世界中でもこんなに綺麗な液体はないんじゃないか?」


もう兵士は言葉を発しなくなってしまった。面白い。なら、最期にとてつもなく綺麗なモンを魅せてやろう。私はナイフを背中から突き刺し、抜いた。真っ赤な血が吹き出して、私の視界を真っ赤に染める。


「ほーら、これが御仁の血だ。どうだ?自分の血は綺麗だろう?歪ませろ。もっと私を楽しませろッ!!!!」


楽しい。最高の気分だ。苦痛を楽しむ何て私しか知らない快感だ。そこらのナニとは全く違う。


人間を蹴落とす。その快感。ああ、何て心地良いのだろう。貯蔵庫に、私の笑い声が響いていた。


「さぁ……さぁ!もっと啼くが良い!私が許可しよう。啼け。早く。大きく、もっと!私を飽きさせるな!ははっ!貴様のようなグズには死ぬ過程でしか私を楽しませる事など出来ないさ。


赤いなぁ……血は綺麗だなぁ……だが……貴様は穢らわしい。子供たちのような弱者から武器を奪い、制限し、何が楽しい?何の意味がある?報復だ。報復。殺せる。私は殺しなんか怖くない!何人も殺した。幾人も殺した。様々な方法で、より残虐な物を選択してきた。だから、なぁ……!!!」


楽しい。この兵士は叫ばない代わりに、血が濃い。いい臭気だ。臭い鉄の臭い。生温かい液体が、私の服にこびりついていく。吹き出した血が私を高めていく。


「貴様も、死ねば良いと思うぞ」


アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!

次回予告


「なぁ、年時。これって…なんだ?」


ー無銃力空間、和音・F・アーンドラン

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