何者にもなれなかった者が伸ばす物
ちゃうねん。コメディ書きたくなんねん。大丈夫だ。きっと何か挟んでくれるよ
基本的な構造は既に把握している。一番気をつけなければならないのは、セラフィムに装備されている翼だろう。あの翼によってレールガンが放たれ、主要武器にもなる。しかもその形状は操縦士によって変化する。よって操縦士によって個性が出る為に、『この型を使えば確実に近い状態で勝利出来るパターン』が存在しない。その時に応じて対応しなければならず、数の利では圧倒的にあちらの方が有利だ。それなのに数を出させたのは、連携を鈍らせる事にあるのだが、ある一定数にまで低下すればそれも意味を成さなくなる。
そこで、室咲や年時が前に出て、私と綾火が後方から狙撃をして数を確実に削っていく。真希は一人でするといって、突っ込んでいってしまった。幸い場所は機体に乗っている限り確認出来る事もあって、誤射することはないだろうが、そもそも狙撃をすること自体が不安だ。因みに綾火は岩陰に隠れていて、私は近くにあった地面の凹みに身を潜めている。
あぁもう!赤は目立つ。どうしてこのカラーリングで射撃を選んだんだ。下手に動けば場所を特定され、後ろに回り込まれる事も忘れてはならない。勿論この機体、紅葉桜は年時の拘りから、360度全方位の視界を確保出来るため、そこまで臆病になる必要はないのかもしれないが。
銃の照準を合わせながら、セラフィムを追っていくと、年時から通信が入った。私は通信許可の為のホップアップをタッチして応じる。
「和音。今乾電池持っていくからそこで待ってな。狙撃用アプリケーションは使ってるか?」
何だそのアプリケーション。というかアプリケーションってなんだ。そんな説明聞いてないぞ。というか、今乾電池の替えが出来たのか。
「使っていないが、外さなければいいのだろう?」
「んなこと出来ると思ってんのか?銃の反動はそれこそ慣れないと当てる事も出来ねェよ。覚えられるのはまだまだ先の話だな。狙撃は外せば命狙われんのは百も承知だろうが。ったく……わァーった。俺がハッキングかけて設定してやっから」
「すまんな」
「忘れんな。3秒以上のラグを作らねェとオーバーヒートすっから。………っと。うし。つくまで大体10分くれェかかっから」
「承知した。感謝するぞ年時」
「ばァーか。そういうんは終わってからにしやがれ」
それだけ言うと、年時は通信を切ってしまった。私はレールガンの引き金を照準を適当に合わせてから引いた。放つ瞬間に少しだけ照準が動く。矯正されているのだろう。ラグはきっかり3秒。それを守って3秒毎に引き金を引いた。狙いはアプリケーションとやらのお陰で確実にセラフィムを射抜く。悲鳴なんて一切聞こえない。ただ、ある程度合わせれば自動的にロックオンされ、引き金を引くだけ。つまらない。殺したという実感がわかない。愉しくない。虚しいだけだった。悲しくもない。こんなにも単純な作業で、命は散っていく。
ただ、つまらないというのが私の感想だった。血はない。声もない。ただ引き金を引くだけ。どおりで年日が挑発的な態度で正面から武器を使って戦線に立つ訳だ。狙撃手の心は荒んでいく一方だろう。これなら、私の様な狂人の方がマシだと言える。だが、どうしろと言うのだ。私の能力はただ、火薬を使用した攻撃を無効化するだけ。相当な大きさの攻撃でなくれば、ただの弾丸であれば、機体に乗っていて、能力が機体にも及んでいるにしても、固い装甲に守られている今ではまったく意味を成さない。自分の身しか守れず、だからといって絶対の壁でもない。私の貧弱すぎる能力。嘆いた所で変わる訳でもなく、淡々と私は引き金を引き続けた。
『警告。警告』
そう機体内に電子音声が響き、操縦室内が赤色に点滅する。警告音がけたましく響いていた。周囲に私に気付いた機体があるのだろう。360°の視界を使って周囲を確認する。
丁度正面から、槍が飛んできていた。色は白。そして、その先端は尖っているのに対し、柄の方には鎖が繋がれている。少々珍しい造型をしていた。しゃがんで狙撃体勢を取っていた為、大きな回避行動がとれず、ゴロンと右側に転がって回避を試みる。ジッ、と言う音と共に少し火花が散ったが、機体へのダメージにしてはさほど深刻なものではなく、ひとまず安心する。通りすぎて地面に突き刺さった槍の持ち主を確認しようと、鎖の先を見ると通常モデルよりも2回り程小さい機体を発見した。機体は翼を展開していて、私の方向に向けていた。どこかで見たことのあるその構えはレールガンを放つ構えそのままの物だった。橙色の閃光が私に向かって一閃する。一直線にではなく、少し、ほんの少しだけ下を向いていて、私の勘では私の丁度目の前に………不味い。
構えていたレールガンの引き金を逆方向に引く。つまりは押した。このレールガンに搭載された、溜まった熱を放出するシステムの応用で、熱を噴出出来る。ブーストと年時は呼んでいた。ドッ、と地面を押す音がして、私の機体はそのまま数十メートル程後ろに下がった。着弾したレールガンの場所から土の塊が弾丸の様に周囲に散った。機体に塊があたって衝突音が中にまで響いてくる。年時から見ていたかのようなタイミングで通信が入った。私はそれを許可して通信を繋げる。
「和音。そっちで爆発あったみたいだけど大丈夫かァ?」
「大丈夫でなければまず通信にも出られないだろうが。命に別状はないが、奴はどうして私に気付いた?」
「まぁレールガンなんて弾道が見える銃使ってんだ。そりゃいつかはバレるだろうよ。適当に粘ってな。俺が殺してやる」
「承知した。まぁ、私が先に殺してしまわないうちにこい」
私はそこで通信を切って、小さな機体を見た。鎖がつながっている槍は、まるで西遊記の如意棒の様に構えられていた。おそらくは小柄な為に私の狙撃を外したと判断する……のは間違いだろうか。
年時が来て、2対1で戦闘を開始するのが一番確実な方法だ。年時が使っているのは、通常型で、しかも遠隔操作ということもえるが、彼にとってはそこは問題にすらならないだろう。製作者は年時だ。基本スペックを誰よりも知っている事で、最も効率的な戦闘をしてくれるだろう。そのためには、私が死なないという事を前提として十分に時間を稼がなければならない。私は近距離での戦闘向きのリーチを持ち合わせていない、3丁の銃しかない。残弾は限られている。通常型の様に、初期装備の鋭い爪での戦闘は可能かもしれないが、中距離~近距離系の武器である槍の間合いからその間合いに入る事は無謀すぎる。ならば、だ。戦データをひたすら取るしかない。
私はレールガンに弾を充填して、小さな機体との間を開ける。いくらレールガンが遠距離狙撃型だといっても、射出後に回避されたのでは意味がない。造型は通常と大差ないが、槍の長さは機体の1、5倍程で翼の大きさは通常と変わらない。歪な大きさをした翼がその小さい機体の異常を示していた。といっても、片方は槍にしているために片翼だが。念には念を、と私は綾火に通信を繋げる。援護してもらおう。あと、中に人がいるかどうかもわかるし。体温が見えるならそれがわかるはずだ。あと人がいなかった場合にはエンジンも。
1コール、2コール、3コール。
「今忙しいんです邪魔しないで下さい!」
「ちょまっ……おい」
どういうことだおい。無視ではなく放置か。辛いわ。
「どうしてこうなった……」
頭を抱えるしかない。機体の操縦士に届く事があるかもしれない、と私は発声する。
「何故私に気付いた?上級の、手練は殆ど真希が殺したと聞いていたのだが。何か特殊な人物か?」
真希が嘘を吐いているとは思えない。すぐに信用してしまうのは私の悪い癖だ。その為に、勢力内の行動はできるだけ年時に管理してもらっている。私は死ぬ訳にはいかないのだ。とっぷが崩れれば恐らくこの勢力は解体する。この勢力に所属しているのは二種類。本気で終結を望んでいる人と、生きるために所属している人。後者は裏切る可能性が高い。分かっていても、私は信じる。生への執着は時に強となることを、私が知っているからだ。
小さい機体は翼のもう片方も手にし、槍を2本構えにする。遠距離にも対応した鎖付きの槍と、小回りの効く小さな槍。ますます戦闘法を制限してくれる。さてどうするか。質問に答えるきはなさそうか。
「■■■■■■■■■ーーーーーーッ!」
「叫び声……!?」
何故叫んだ。何故返答に対しての返答が絶叫なのだ。今のは叫びと形容してもいいものなのだろうか。小さい機体は鎖の付いた槍ーーー長槍を私に向け、高速で地面を蹴った。速さは大体半秒で距離を詰められる程。間合いを離したとはいえ、そこまでの距離は離していない。槍を銃の背の部分で受け流し、そこから私はもう片方の銃を機体に向けた。
ゴシャァッ、と嫌な音がした。操縦室にけたましい警告音が響く。赤い光が危険であることを私に知らせていた。ホップアップが表示される。機体の下半分を失い、制御が不可能となった。上半身だけは動く。
「機体の体半分を削り取られた!?何故……私は今確実に……」
攻撃は反らしたはずだ。と言おうとした時に、私は気付く。長槍と短槍。機体は2本持っていた。つまりは短槍での攻撃が本命で、長槍はフェイク……?
私の思った通り、短槍が下半身への命令を下す中枢部分に刺さっていた。果たしてそれは狙ったものだったのか、たまたまなのかは私が知る術はないが。
「こん、畜生が……ッ!」
私は左手の銃を口に咥え直し、背中に積んであるもう1丁の銃を持ち変える。3つ同時に引き金を引く。年時にならった、レールガンの出力を上げる方法だ。発射まで10秒を要するが、この状態で回避は不可能だ。
「………っく……かはぁっ……あははははっ!絶望しろ!憎め!私は貴様を殺すぞ!嫌じゃないのか?苦しくないのか?そうだそれだよよ。私があの穴の中で感じていた感情はそれだ!痛い、辛い、怖い、憎い、ただそれだけを感じながら穴の中で暮らしてきた!意味のない貴様等の喧嘩に巻き込まれて、父も母も亡くして!貴様等は奪う事しかしなかった。だから私も奪う。貴様の余った人生全てを私が奪う!
ーーーーーさぁレールガン。奪え」
私は狂気に手を伸ばし、それに触れた。そして狂気は本音となって外気に晒される。私の頬は濡れていた。だが、そんな事に構っていられるほど私は甘くなかった。レールガンの溜め時間である10秒が過ぎ、橙の閃光が機体全てを飲み込んで、跡形もなく消え去った。
次回予告
ーまたか。また仕方なくというのか。
ーー違う!/違わない。
ーー私は/私は




