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銃の効かない操縦士  作者: 木樵蝋梅
14日目
35/65

新機体と作戦と

方針決定最終回の様子も纏まりつつやってきましたってかぁ……こういうエンドは望んでたんだけど、ここまでくるかぁ……

現在時刻、午前11時27分。ついに私たちは東軍へと攻め込む事を決心した。理由は、東軍から寝返った真希の話からである。


今の東軍には主軸となる人員がいない。正確には、真希によって殺害された。これならば、歩兵程度であれば簡単に攻め落とせる。年時の作っている機体も完成した。短時間で仕事を済ませる年時には頭が上がらない。どんだけ早いんだあの兄妹。


全員分は流石に作れなかったらしく、五人分は既にあるとのこと。大した能力の持たない年時は本部に残り、私、年日、綾火、室咲、真希の五人で先に行って道を開き、それから占拠いていくという単純かつ慎重に行わねばいけないものだ。因みに、私の機体が赤。年日が黒、綾火が白。室咲が緑、真希は青だ。


私の機体の特徴は、火薬攻撃が一切効かない事と、私自身にも遠距離攻撃を搭載するために、レールガンを主軸とした機体だ。そのための弾には金属片を採用。その分重くなるため、機動力は多少落ちるが、その分火力には優れる。サブウェポンとして、レールガン射出時に発生する熱を利用した熱風を放つ事が出来る。その熱風の用途は様々で、攻撃としては勿論のこと、ブースターとしての使い方もある。私が思うに、弱点は金属片による機動力の低下だろう。重量で下手をすれば機体を破壊される可能性も捨てられない。その方法が火薬によるものであれば良いのだが。


年日の機体には大量の武器が積まれている。弾薬系、切断系、打撃系ととにかく武器が多い。主軸はyears days for robot。いいのかそれで。私からでなくてもダサいぞ。years daysは先ほど年日が私に見せてきた物を巨大化し、機体に適応させた物らしい。一応こちらの場合では、弾薬系の形状変化よりも、切断系、打撃系の……所謂近接格闘系の形状が多いらしい。年日は非力な方だが、機体に乗っていればその問題は解決するから、だろうか。なにより、弾薬が切れれば攻撃手段がなくなるのは確実だ。


綾火の機体には弓が主力武器として積まれている。体温を見る事のできる綾火は、遠距離狙撃の為の機体になった。能力の暴走の使用を制限された綾火は(今後もその制限を解除する気はない)戦線にすら立たせたくなかった。弓の弦は機体による力でなければびくともせず、その射出速度は音速を越えるという。鬼か。その速さにした理由は「音が聞こえてから避けられたら元も子もねェだろォが。それに、遠距離狙撃の弱点はブツブツブツ」という事らしい。


室咲の機体には大きな鎌が積まれている。大きさは機体の大きさを優に越える。約2倍もある巨大な鎌を扱えるのは室咲だからこそだった。死神、という名が相応しい。機体の首を刈り取る事に特化した武器のため、刃は折れずに丈夫で、素早く動くために機動性を重視している。弱点といえば、長すぎるが故に、内側に入られると対応が難しいという事だろうか。


最後に、真希の機体だ。元々は年時の機体だった物を真希の物に渡した物らしい。主要武器は刀が二本、腰に提げてある。彼女の能力、時間操作を使えば、肉体の限界が無いために最大出力で行動する事も可能だろう。真希の限界を私は知らない。そしてなにより、真希自身も限界を知らないらしい。3倍まで、と自制をかけていたらしい。


っと……まぁ長々と戦力について話したわけだが、ともかく今回で東軍を解体し、そのまま統一、そして、西へと進めていく。


「テストーテストー。んじゃァ、聞こえたら返事頼むわァ」


人が二人入るのがやっと程の大きさの操縦室に年時の声が響いた。年時の口調は年日の能力使用状態にそっくりだ。理由は定かではないが、この際無視をしてもいいだろう。ひとまず返事、だ。


「聞こえるぞ年時。出来れば、新しい仕様があるのなら教えて欲しい。前と変化はあるのか?」


「っと。和音か。特にはねェが、起動がまだだな。今コードを送るから承認してくれ。Yesを押せばそれでいい」


「了解」


私の機体はまだ起動していなかったらしい。それはそうだろう。乗り込んだだけで、まだ何も触ってはいない。ものの3秒程で目の前にホップアップが表示される。詳しく内容も読みもせず、私はYesを押した。


ー承認完了。紅葉桜、起動


そうとだけ出た後、操縦室が光を放ち始める。機械的なチカチカとした小さなボタン群は周囲の景色を映し出すと、消える。全方位。360°が視認出来る。余りにもはっきりとしている画面に私は見とれた。ここまでも。こんなにも完全に近い状態で表示出来るのかと完動していた。美しい、そして、周囲にあった他の四機も見えた。


「紅葉桜、か?今回は名前がついているのだな」


「ん。ご不満かァ?承認も上手くいったみてェだな。よし。追加、レールガンの操作方法の説明はいるか?」


「いらん。引き金を引くだけだろう」


正確には、こちらで操作をして、引き金を引く動作を入力するのだが、それは省略しても構うまい。


「熱の放出、バーストっつゥ名前がついてる。それん時は引き金を逆に引け。つまりは押せ。溜め込んだ分の熱が放出されるからな。3丁あるじゃずだ。今和音が気づいてるので1丁、脚んとこに1丁、後は背中に1丁な。白い奴みたいに高火力のが撃ちたい時は、口に1丁咥えて、他2丁をレールとして展開。そっから撃てば自動で認識するから。出力は出るが、射出に10秒かかる。それが限界だった。一発撃ったら3秒開けねェとオーバーヒートする」


「ん。了承した」


私に渡された武器は、外付けのハードウェアの様なものだ。細かい事は気にしなくていいだろう。殺しは楽しい。このレールガンで焼かれた人肉の臭いはどのようなものだろうか。焼かれる事に対する悲鳴はどんなものだろうか。焼かれて焦げて、その時血はどうなるのだろうか。思考は止まらない。


焦げた鉄の臭い、火薬の臭い、血の臭い。この機体の中にいるときはそれを感じる事は出来ない。だが、悲鳴は聞こえる。青年兵しかいない、野太い叫び声、悔やみの叫び、哀れみの叫び、憎悪の叫び、苦痛の叫び。様々な声がマイクスピーカー越しに私を楽しませてくれるだろう。とことん狂っていると、自分でも思う。だが、この短い間に変わった私の思考もある。


私はもう二度と、私を卑下しない。綾火と約束したから、私は、この世界を変える。その後の事はどうでもいいと言ったが、それを訂正したい。綾火とその後も、ずっと過ごしていくと決めたからだ。殺しを正当化するつもりはない。この罪は私が一生を持って背負っていく。


有りがちな事かもしれない。綺麗事かもしれない。だが、それでもいい。私は高貴に振る舞い、自尊しながらしぶとく生きていく。


「じゃァな和音。健闘を祈ってるぜ」


「馬鹿者。私にそんな言葉をかけたところで何も変わらぬぞ」


「ま、死にゃァしねェか。和音は愉しめばそれでいい」


「了承した」


私は操縦席に深く腰をかけてふぅ、と息をついた。前面、左右面、背面全ての視野が展開され、今の場所を実感する。


第3倉庫内機体保管庫


背中には加速装置が展開されていて、約1時間程で目的地に到達する。Gの問題も解決済みらしい。信用しているからな。隣には色とりどりの機体が並んでいる。造型は今まで通り、悪魔をモチーフとしたものだが、今改めて見ると、鎧を纏った騎士のようにも見える。確かに悪くは無い造型だ。


誰一人一切動かない。きっと緊張しているのだろうか。真希はこれが始めての操縦だし、無理もない。殺しは私が引き受けるつもりだ。最低限に止めて欲しい。


私は加速装置を起動させるため、目の前にあるホップアップを操作する。それほどまでに複雑なものでもないらしい。すぐに起動には成功した。


背中についた加速装置は両肩斜め上あたりまで広がり、翼とまではいかないものの、どこかにその面影を感じる事が出来る。私はハンドルを握り、前方へと歩ませる。動く度に機械の駆動音が操縦室の中にまで響いてくる。レールガンを右手に握り、その銃口を空へと向けた。ハンドガンの形をした私の火薬を使わない銃。私は目の前を見た。


この先に、東軍の本拠地がある。私たちを苦しめ、無駄な戦いをしたまま終わらせる気のない国の中心が、そこにはある。無意識に奥歯がギシギシと鳴った。この感情はなんだ。形容するならば怒りだ。だが、それとは少し違っていた。純粋な怒りではなく、様々な感情が織り混ざっている。


私は引き金を引いた。橙色の閃光が空を斬り、200m程進むと消えてしまった。そかし、その間に通過したであろう空の雲にはぽっかりと穴が開いていた。


これが銃か、とふと思った。


ここまで小さな動きでここまで大きい攻撃が出来るのか。雲を割るほどの、この現象は引き金を引く事だけで現実になる。感じるのは、銃の反動のみ。引き金一つで奪えるものなのかと実感する。


「皆、出るぞ」


通信などは繋がっていなかったが、私はそう呟いていた。強靭が感じるには惜しい感情。いや思考か。


私は、決意した。


第一文型という余りにも単純すぎる一文。だが、それは私が思った事のない、ただ純粋で美しい感情だった。初めは戦争を指を咥えて見ているのは嫌だったから。私はこれに関わりたいと思ったから。そう。思っただけだ。気まぐれだった。今日のご飯は少し多めに食べようと思うとか、そういうものと同じような事とと一緒だ。それに、年時や年日が乗ってきたから、ここまでこられた。たった数日。数えるほどの短い関係だったが、同じ志を持つ者達との団結力はそれほどまでに固かった。


私は加速装置を動かして、飛翔を開始する。正しく形容すれば、加速……速すぎる故に滑空する事が出来た。私はまだ、空を飛ぶ、という事をしたことがない為に、見当もつかない。空中での完全停止を飛ぶと言うのなら違うが、高度で言えば十分に富んでいると言えるだろう。メーターで確認したところ、約1000mもの高さを滑空いた。高かった。雲さえも追い越せる程にも速かった。平野しかないと思っていた地上は思ったよりも様々な物があった。戦禍に巻き込まれる事無く残ってた建物、この様な状況でも逞しく生きている木々。速い。人類はここまでに速くなれるものなのか。


そうして浸っていると、左側にホップアップが表示される。何気なしにそのホップアップを許可すると、機械音と共に映像へと切り替わる。年時が中心に表示され、その他4人も同様に画面端に表示されている。


「通信状態は良好……っとォ。うし。各自目標の殲滅方法送っとくから、目ェ通しとけ。俺が出来るのは強制停止と通信だけだかんな」


「了解した」「わかった」「わかりました」「まかしときーな」「ま、年日には関係ねェけどなァ」


「ところで、ちゃんと起動時に機体の名前、出たか?セットはしといたけど、確認はしなかったから、一応動作として正常に動いたのかの確認、な」


会話は画面内で行われている。と、いうより会議のようでもあるが。通信を共有しているのだから当たり前といえば当たり前なのだが。


「あ、あの……青雨とか書いてあったやつ?なんかダサかったからなんやろなーとは思ててんけど……」


「年日のは白雪姫だったけど、なんかなァ……兄貴のセンスにしては駄ァ目だわ」


「あ……えっと……黒薔薇ってやつ……ですか?………いやだなぁ……」


「お前らのならまだマシだわ。俺なんて鰐だぜ?なんだっつーの。動物かよ」


「え、あ、あぁ……私も出たぞ……紅葉桜だって……」


言えない。格好いいと思ってたなんて言えない。何故だ。何故だァァァぁぁぁぁぁぁ……


「よし。言っとくけど強制だかんな。俺の作品だ。文句は言わせねェ」


年時は呵呵っと笑い、表情を変える。


「今からすんのは奇襲だ。騎士道とか武士道とかは捨てろ。俺らは外道だ」


なんだ、今更何を言うのか。私たちはそんなガラではないだろう。私は殺しを愉しむ様な人間だ。狂っている。年日は能力で、機械を触れると使いたくなる。室咲は必要に迫られてだろうが、言うことは聞いてくれる。綾火は能力で目玉を吹っ飛ばす様な精神構造だし、真希は殺人鬼だ。


「……っぷ……あははははっ!今更だな年時!私は今も昔も外道だぞ。血肉は鮮やかで美しい。悲鳴は聞いているだけで快い!死の一瞬前が人間が最も輝ける瞬間なんだ。芸術だ。アートだ。私はそれらを最大限に生かす指揮者で、アーティストだ。和音わおんは様々な種類がある。人が織りなす和音わおんは全て和音かずねを愉しませてくれるッ!!苦痛で歪む表情、絶望の表情、怒りの表情、全てが私を悦ばせるのだ!!」


「いや聞いてねェよお前じゃなくて他の四人だっつゥの」


その扱いは酷くないか!?


「私は……和音さんがするなら……私もします」


「年日は兄貴がきめた事をするだけだからなァ」


「俺は決定事項に反する意志はねぇ」


「うちは綾火をサポートする為だから、その方法は問わへんよ」


「お前ら……」


意志弱すぎだろ。面倒だからつっこまないが。


「じゃァ決定。方法はテキストを送るからそれに沿って。あと数十分で着くから」


と、言って年時の通信は切れ、その後すぐにメールホップアップが表示される。テキストは自動的に開始され、今回の作戦内容が伝えられた。


「ふふん。これは随分おもしろい事を考えたな年時め……楽しみだ」


次回予告


ーほほう……それが答えか貴様


和音・F・アーンドラン

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