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銃の効かない操縦士  作者: 木樵蝋梅
1日目
15/65

綾火の昔話 前編

私は自室のベットの枕に顔を埋めていました。


和音さんの事件の後、私あどうすればいいのか解らなくなって帰ってしまいました。


どうしてあんなことをしてしまったんでしょうか。私には解りません。


だけど、嫌ではありませんでした。


これもどうしてなのか解りません。


和音さんはちょっとお酒の匂いがしました。あれはお酒の勢いだったのでしょうか。だとすれば悲しいです。



あれ、どうして悲しいのでしょうか?



解りません。なにも断言できません。すべてが私の思考の中で止まってしまいます。


私は人と話すことが少し苦手です。


なので、他人に聞くことなんて、できそうにもありません。


そんな中、ここにきてすぐに仲良くなった……と思っているのは私だけでしょうか。


和音さん、室咲さんに年日さんに年時さん。


む、室咲さんとは余り話したことはありませんけど……それでも、穴の中にいたときよりも、仲がいいです。


それに、みんな笑顔です。


私はゆっくりと起き上がってベットに腰かけるように座りました。


急いでいたせいで少し汗をかいてしまっています。シャワーを浴びてから久しぶりに姉さんに貰った着物を着てみようかな。


姉さんは前髪を切りそろえてショートカットにしていて、ちょうど和音さん位の大きさでした。


18歳になって穴から連れ出されてしまいましたが、その時き私にくれた大切な赤い着物。私の大切な姉さんの形見です。



穴から出るときも必死でこれだけを持ってトラックに乗りました。


元々、私にはこれしかありませんでした。


姉さんも実は本当の姉さんではないです。


私は父親も母親も知りません。姉さんが私の世話をしてくれなかったら、死んでいたと思います。


私の能力は姉さんが病気になった時に発現したものです。


姉さんあっての私。その他は全部おまけで、私の人生は姉さんがいてからこそと言っても過言ではない程の人物です。


私は福を全部脱いでシャワーを捻りました。


初めは冷たい水でしたが、頭からかぶっていると姉さんとの出会いを思い出します。


あれは寒くなり始めた秋の頃でした。


私は当時身長は120cm程で、体には何も身に着けずに走っていました。


まだ力のなかった私は兵士さんに捕まると抵抗することができずになされるがままでした。


外に連れて行かれて身包みを剥がされて逃げる日々。時々転んで兵士さんに捕まってしまって暴行を受けたこともありました。


そんな時、姉さんは私を助けてくれました。姉さんは人間離れした速さで兵士さんを倒してしまい、私に笑顔で話しかけました。


なぁ、アンタ、両親とかおらへんのか?と。


私はとっさに頷きました。それほどに姉さんは輝いていました。


今思い出すと姉さんの顔はハッキリと思い出すことは出来ませんが、1mくらいの鉄の棒を持っていたことは覚えています。


姉さんは倒した兵士さんの服を私に着せてくれました。


ぶかぶかで雨に濡れていてびしょびしょでしたが、とても温かく感じました。


幸せを感じた瞬間でした。あの時だけは秋雨も温かかったです。




シャワーを切って体をしっかりと拭いてから着物に袖を通しました。


真っ赤な着物からは姉さんの懐かしい匂いが仄かに香ります。


私は帯を腰に巻いてキュッ、と締めました。まだ少し大きいですが、私ももっと大きくなって見せます。


もちろん、む、胸も・・・・・・


コンコン、と扉を叩く音が聞こえました。私が返事をする前に、入るぞ、と言って扉を開けて入ってきたのは和音さんでした。


私が扉のカギをしていなかったことが悪いのですが、せめて返事くらいは待って欲しいです。



「綾火。ちょっとした儀式のようなものだと思って私と飲まないか?」


飲むってお酒ですか。私そんなに強いほうではないんですけど。


シャワーをしたのでこれ以上酒臭くなりたくないですし。


それに和音さんには反省して欲しいです。私に無断であんなところで・・・・・・その・・・・・・キ、キスなんか・・・・・・しかも舌なんていれてきたし・・・・・・


「かっ、帰って・・・・・・ください・・・・・・私はもう・・・・・・寝るんです」


「そうつれないことを言うな。だから儀式だと言っているだろう。一口だけだ。・・・・・・お、綾火。その着物どうしたんだ?」


「形見ですよ。和音さんだってバンダナしてるじゃないですか。和音さん・・・・・・って・・・・・・着物とかじゃ・・・・・・な、なかったんですか?」


素で返事をしてしまった・・・・・・急にハッキリ話してしまったらびっくりしちゃったかな?


私はそのまま和音さんのために椅子と机を出して私はベッドの上に腰掛けました。


椅子を出したのに和音さんは机に座って足を組みました。何のために出したと思ってるんでしょうか。


「あぁ、父はバンダナ。母は指輪だ。大切な思い出の品だぞ。よくまぁ母さんが指輪なんz持っていたものだ。おかげで着るものがなくて困ったぞ。何故母さんは指輪なぞ残したのだろうな・・・・・・ははっ、私らしくないな。酒が回ってきたか」


「ちゃんとイスに座って下さい。お行儀が悪いです」


「ははっ、綾火は私となら普通に話せるようになったのか?私の嫁になることを決めたのか?」


「違います。怒ってるんです。言うことを聞かないと和音さんの目玉を爆破しますよ」


和音さんはベットに座っている私の頬に手を当てて耳元に口を近づけて来ました。優しい声で囁きます。


「構わんぞ。その代わりに綾火を手足のように使って共同生活をしてもらうがな。二人三脚だぞ」


「それ、遠まわしに結婚しろって言ってますよね・・・・・・」


つれないなぁ・・・と言って和音さんは私から離れて机に座りなおすと手に持っていたお酒を飲みました。


まだ飲むんですか。和音さんは未成年じゃなかったんですか。私はいちいち気にしませんけど。


和音さんを見ていると時々姉さんのように見えたりします。仕草や言動がそっくりなんです。


姉さんは私に襲いかかったりしませんけど。むしろ私が許可するまでは優しい姉さんです。


そういえば姉さんは女の子のように振舞うのが苦手そうでした。


座る時はいつも胡座をかいているし、支給されるパンもそのままかじりついたりしてるし、ケンカっ早いし、いつもどこか怪我をしていました。


でも、嫌いにはなれませんでした。



次回予告


「んなっ!人を変態扱いするな!私はいたって健全に綾火と結婚しようとしているぞ!」


ー狂人、和音

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