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銃の効かない操縦士  作者: 木樵蝋梅
1日目
12/65

きゃはっ☆

あぁ、せっかく食事が増えると思ったのに。


能力持ちかよ。


早く死んでくれないかな。


その目を見る度に思い出す度に心が痛む。


それなのに今は勢力の一員として私に協力している。


人間なんて、我が身可愛さで裏切ったり出来るのだ。醜い生物だ。


中身はあんなに美しいのに外見は心はあり得ないほどに汚い。


そんな者にはならないようにしなければな。



「殺せばいいだろう?俺が1人消えた位でどうこうなるジェクター軍じゃねぇし。


能力所持者の心境だぁ?そんなもん知りたくもねぇ。俺は嫁を置いてきてんだよ。


本当は喋っちまってトンズラしたほうがいいが、そんなことすれば嫁の命が危ねぇからな。


それなら殺してくれたほうが楽って奴よ」


命を愚弄した。


能力を愚弄した。


そして、私をばかにした。


それだけで罪なんて十分だ。


「貴様……!話せ……話をしろ!!殺す……!殺し尽くしてやらァァァァァァぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」


「ちょっと待って和音さん」


私の肩が綾火捕まれた。


そのことで私は正気を取り戻し、怒りを何とか押さえ込んだ。


よく見ると左手を強く握り過ぎて出血している。


ナイフも手に食い込んでいた。止められていなければ、私はどうなっていたのか容易に想像できる。


「すまん。綾火、私がどうかしていた」


「い、…いん…です…私が…やります…から……ね?」


「承知した。能力を一目見てみたかったのでな」


綾火は万力を手に取り、目を閉じる。


何か素早く口を動かしていたが、何を言っているのか解らなかった。


カッと大きく目を開いて右手を男に向けた。


瞳孔が大きく開いており、光が失われていて、いつもの綾火とは思えなかった。


「能力暴走状態突入。対象の状態を確認……良好。精神状態の安定を確認。情報収集のために精神を乱す方法を選択……完了。実行します」


パチュン、という音とともに男の左目が弾けとんだ。


元々左目があった場所は紅い液体と共になくなって空いた空洞がある。


その光景を見て、私は美しいと思ってしまった。飛び散る紅い赤い朱い鮮血。


絶望と共に発せられる男の悲鳴はなんて美しい音色を奏でるのだろうか。


「さぁ、どうしますか?あなたに触れなくとも私はあなたを幾度も殺すことができます。あまり手を汚したくないので、早く話してくれませんか?」


淡々と発せられる綾火の冷たい声。


ただ発せられる男の熱い悲鳴。その二つの声がただ小さな部屋に響き消えていった。


綾火は万力を右手にはめて閉じていく。しかし、その腕の形が少し変わったところで止めた。そして能力を再び発動する。


「対象の右手首を凍結。痛覚を遮断します。……完了。さて、万力で砕いてから解凍すればどんなことになるかお分かりですか?大丈夫です。命までは取りませんから。もちろん、あなたが話してくれたらの話ですが」


綾火は少しずつゆっくりと万力のネジを締めていく。


動かす度にパキパキと手は音を立てた。男はひっ、と小さく声を出して歪に顔を歪ませる。精神面ではもうほとんど崩れているだろう。そして不意に



パリン、と音がした。



「あ、すみません。割れてしまいましたね。まぁ、凍らせておけば痛みも感じないでしょうし、かまいませんか。では、話してくれなすか?」



淡々と放たれる綾火の言葉でついに男の精神は落ちた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「俺が知ってるのはそんだけだよ!いいからここから開放してくれ!!」


結局、大した情報は得られなかった。


あの白い機体には熱エネルギーを利用していること。


レールガンは搭載した電気エネルギーを熱エネルギーに変換する手段の一種らしい。


そのことを年時に伝えると、そのことはもう既に解っているらしい。


その他には司令部の場所、機体の構造、それくらいか。


まぁ、そんなに期待していた訳ではなかったが、そんなことは幹部か何かでないと重要なことを知らないだろう。


しかも、どちらの場所にはパスワードを知らないらしい。使えねぇな。


「一応協力感謝しよう。貴様の言っていたことは大したものではなかったがな。では質問だ。貴様には選択権を与えたな。


私たちに情報を与える、もしくは死ぬか、だったな。では、もう一度選択権を与えよう。情報を与えるか、死ぬかだ。…おっと、もう情報はいらないな。では、選べ。


Dead or Die ?」


ニヤリと口端を吊り上げて少し声を低くして私は言った。


男は口をパクパクさせながら言葉を発すことができなくなった。


選べと言っているであろうが。さっさと選ばんか。まったく。鳴いてくれないと面白くないではないか。


サァーッ、と血の気が失せていった男は、ただあ゛ーっ、と叫ぶだけになってしまった。


ただの叫びでは私は満足せんぞ。少し落ち着けよ


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーッ!!!!!!」


「冗談だ。さて、どこに開放してほしいのだ?今拘束を解いてやる。後は自由だ」


私は四肢を繋いでいた物を外して小部屋の扉を開ける。


外から差し込む光が彼にはどう聞こえたのだろうか?やつれていた顔は少しどころか、急激に元の表情に戻っていった。


男は立ち上がり、一歩踏み出す。


ガシッ。


「嘘 に 決 ま っ て い る だ ろ う が 」



私は男の肩を掴み、思いっきり引いてナイフを突き刺した。


彼の新鮮な悲鳴が私の脳を駆け回る。彼は美しかった。しかし、少し希望を与えるだけでその美しさは失せてしまった。


しかし、私の力によってもう一度輝いてくれたのだ。


「…………お、鬼……」


「ふふふ…鬼は戦争そのものだな。見境なく人を殺していく。…私はさしずめ鬼の使いと言った所だな。……………………ふふふ…………あははははははははははは!!!!!」


しかし、私は一瞬だけを楽しむ狂人だ。絶望の表情はこの世で最も美しい表情であると私は考えている。


一際輝いた芸術はすぐさまに肉塊へと成り下がってしまった。


私は少しばかり残念だったが、それとい共に最高に気分の高揚を感じていた。


ナイフは彼を切り裂き、紅い血を撒き散らして美しく散る。


嗚呼なんて、嗚呼なんと美しい。なんと楽しいのだろう。


私は狂っている。


自分自身、それは理解しているつもりだ。


しかし、罪悪感を感じていない。理由はいたって簡単だ。


私は狂っているが、それは世界が狂っているからだ。


その世界の中にいる私が狂っていない訳がない。


諦めかもしれないが、構わない。狂っているのは仕方ない。


世界は狂っている。

次回予告


「私にも食わせろぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」


狂人、和音・F・アーンドラン

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