百合成分っていいよね
side in 和音
結果を言うと私たちの完全勝利だった。
死者は奇跡的に零。負傷者は数人いるものの、そんなに酷い人間はいない。
ヘリも戦車も略奪して、さらには綾火があの白い気体も持ってきてしまった。
年時がいうには、翼以外には目立った外傷は無いようだ。しかも機能を完全に停止しているという。
パイロットは一応戦争らしくお話を聞かせて貰おうと小さめの部屋に拘束した。
まともな情報を持っていればいいが………
翼を壊したのは私だ年時。
悪かったと思っているぞ。謝りはしないが。
「あ、そうだ。拷問しちゃう?しちゃいます?年日ちょっと興味あったんだよねェ!」
「年日。今機械持ってないのに口調おかしくなてるぞ」
「…ともかく…私は…和音さんと一緒なら……手伝います……よ?」
ちなみに今居るのは例の如く司令部だ。
カメラを使って全員の動きを確認しながら昼食をとっている。
この人数でも1月は持ちそうな食料がこの貯蔵庫にはあった。
年時が改造したため、個人で使える個室にシャワーまで完備してある。
鬼改造とはこのことを言うのか。
今回襲撃をされたのは東でパイロットは東軍の人間だ。聞き出す他あるまい。
今回も悲鳴を聞けるだろうか。
「わかった。私と綾火だけでいい。年日は年時の作業でも手伝ってくればいいさ」
「ん。お兄ちゃんはこういう時は相手してくれないから年日はここで見学させて貰おうかな?」
「かっ、和音さん……能力のこと…話したほうが……いいですか……?」
「あぁ、嫌でなければな。あの白いのをやったのも能力なのだろう?」
「あ、はい…でも……その……お願いが1つだけあるんです……いいです……か?」
「うむ。するがいい。私に1つだけ何でも命令することができる権利を与えよう。勿論、そうするかどうかは私が決めるが」
綾火は上目遣いで私を見上げる。くっ、……私が野生の獣だったら襲っているぞ。私は精神力があるな。
「私を……嫌わ…ない、で……ください……ね……?」
はぁ?何を言うか。綾火は私の嫁だぞ?何の因果でそんなことを。
「ぷっ、かははははははっ!なんだそんなことか!」
元々どんなことを言われても実行するつもりだったが、そんな事を気にするのか。
私が嫌うわけがなかろう。
綾火は少し目を赤くして頬を膨らませた。可愛い奴だ。
私の保護欲がマックスだぞ。
私は正面にいた綾火を抱きしめて、耳元で囁く。
「そんな事するわけなかろうに。私の嫁を嫌いになることなぞ、因果率が崩壊してもありえんわ。誰がどう言おうとも、私は綾火の嫁で、綾火は私の嫁だ」
「んなっ、ななな、何言ってるんですかぁ!私は女の子です!!」
頬を赤く染めながら言っても私が興奮するだけだぞ?
「大丈夫だ。ヨーロッパの方では同性結婚が認められているところだってある。
何、心配せんでもいい。私は可愛いものと美しいものはとても大切にするぞ?綾火は家事をしてくれるだけでいい。私が働く。
……あ、でも働いてしまうと綾火との時間がなくなってしまうではないか…」
くそっ、どうすればいいのだッ!
「そういう問題じゃありません!」
「………?どこに問題があるのだ?完璧のはずだが。パイロットのお話が終わった後で一緒に風呂に入ろう。
今日はすることもないだろうからそのまま天井のシミを数えながら……ま、まさか、綾火は……私が嫌いなのかぁ!?」
「そ、そんなことは……ない……ですけど……それに…どっちかというまでもなくと…その…す……好き……かもしれないです…」
「綾火」
「は、はひぃ!!」
「戦争で勝った暁には、私と結婚しないか?」
「私の好きはLikeです!和音さんのはLoveじゃないですかっ!!」
つれないなぁ……そういう所が愛でるべき点なのだが。
うむ。綾火もちゃんと声を出せるではないか。
恥ずかしいのか?あのレールガンの時の説明で死ぬかと思ったが、こういう風に恥じらう綾火は可愛らしい。表情をコロコロと変える所も、評価すべき所だろう。
「能力について話を聞かせて貰えないか?綾火」
少々所か、とても気になる。
自分で戦闘には不向きだと言っておきながら、あの白い機体をどうやって翼以外無傷で持って来たのか私は予想がつかない。
タイミングはいつでも構わなかったが、なんとなく聞いてみた。
「和音さん…能力の暴走って……知ってます……か…?」
「能力の暴走か?それならば私も少ーしだけ使っているが、それがどうかしたのか?」
「知っているのなら……話が……早いです……私は……その…ちょっと特別で……故意に……暴走状態に……出来るんです………それで……温度を[視認]から……温度を[操作]に……変更出来るんです……その時は…口調が…変わっちゃいます…けど…」
口調が変わるのは能力所持者の仕様なのか?私の場合は常に展開しているせいであまり変わるような感じにはならないが。
そう言えば能力を使っていない自分がどの様な人格だったのか思い出せないな。
すでに記憶の奥底に沈んだ私の記憶。
思い出そうとしても何かにはばまれる様で、どうやっても思い出せない。
元々私はどんな人間だったのだろうか。今はそんな事をしている場合ではないが。
「操る?上昇も下降も自由自在か?そりゃあ凄いではないか!見直したぞっ!」
「あ、ありがとう…ございます……あくまでも…暴走状態なので……数回しか……使えませんけど………」
「それは人体への発動も可能なのか!?もしそれならやって欲しいことが……ふふ……眼球破裂かぁ…見てみたい…見てみたいぞ!!」
「…やったこと……ないです…けど…あまり酷いのはしたくない…です…どうしてもって…いうなら…します…けど」
「出来ればパイロットが話をしないと言った時にして欲しい!!」
「わかりました。でもですね、和音さん。私の能力は姉さんのために発現したものなんです。
姉さんが熱で倒れた時に熱を測りたいと願ったからこそこの能力が私に宿ったんです。
むやみやたらにそんなことをする人間なんですか和音さん。
今は戦争の真っ最中です。
自身の身を守るため、仲間を助けるためならば、少々にことには目をつむります。
でも私は出来るならば和音さんにそんなことをして欲しくありません」
うっ…まずい。
綾火がはっきり話しをするようになってしまったではないか…早く切り上げないと、説教モードに突入した綾火ママに私の脳をパンクさせられてしまう……!
仕方あるまい。
もっとムードのある時に使いたかったが、背に腹は代えられん。
私は綾火の頭をナデナデした。
綾火が白い機体と戦う時に出してきた条件だ。
サラサラで柔らかい黒髪は私の五感を全て持っていってしまう。
質感は絹に近い。最も上質な絹だ。
意識が飛ぶ程の快感だったが、後一歩の所で踏み止まる。
「第一に和音さんは女の子としての自覚が足りませ、ふみゃぁ!?な、何するんですかぁ!?」
「私は約束を今この時に果たしたまでなのだが……綾火は小っこくて可愛らしいな。生まれつきこんな髪質なのか?少し嫉妬してしまうぞ」
「う、うみゃれつき、髪が、細いので……」
「そうか。実に良き事だ。私が獣だったら食べてしまっているぞ。女であることに感謝せねばな」
勿論性的な意味で食べてしまいそうだ。
「じ、冗談も…大概にしてください!…そんな、和音さんは……獣なんかじゃ……ないです……優しいですし」
と、後半は殆ど小声でなにをいっているのかさっぱりわからなかったが、私を誉めているのだろうか。
「うむ。世辞と分かっていても良きことだな。誉められるのは嫌いではない。それで………私からもお願いがあるのだ。聞いてくれないか」
私は頭を下げて綾火に頼んだ。
勿論、断られても、私のすることを変える積もりゃはない。
あくまでも私からの一方的なお願いだ。
「なんですか?私に出来る事なら、お手伝いします」
「私は…その…狂っている…のだ…どんなに残酷なことをしても…嫌わないで…欲しい…頼む」
私は本当に不安だった。
こんなにも穢れた私。
そんな人間が純粋な彼女を愛してもいいのか、本当に怖かった。
無論、拒まれれば諦めるつもりだった。
「…………もちろんですよ。私は和音さんが思っているよりも和音さんのことが大好きですから」
私は、涙をこらえることに必死だった。
次回予告
ー「殺す・・・・・・!殺し尽くしてやらァァァァああああああああああ!!!!」
狂人、和音・F・アーンドラン