戦闘シーンって一人称だと微妙というかなんというか
私は機体に乗って外に出た。乗り心は……まぁ、悪くない。快適とまではいかないものの、かなり良い状態と言える。
鉄骨は機体の約1.5倍ほどあるが、この長さなら槍か混棒の要領で扱えるだろう。
「あんまり能力を使うなよ。死なれたら困るからな」
倉庫の中から年時が言った。能力を使いすぎると何か問題でもあるのだろうか。
少し気になったが、そんなことはすぐに忘れてしまった。
オレンジ色の閃光が、私に向かって一線したからだ。
とっさに機体をそらして回避したが、それでも後ろに閃光は進んで行く。
オレンジ色の閃光は後ろ足の倉庫に命中して少しばかり溶かした。発射元には、白い機体が一台ある。
「あんなもん、どうやって止めろっつーんだァ?」
横で年日がそう呟いた。肩に担いだアックスは機体の2倍はあろうかという大きさだったが、不便さをまったく感じさせない。
何でも、近距離砲撃機能がついているのだとか。どんな武器だよ。
レールガンには火薬が使用タイプで鉄骨ではどうにもできんな。
年日ちゃんを呼ぼう。あの狂った機械マニアならこういう相手も引き受けてくれるだろう。
綾火の件は黙ってくれていれば問題ない。
彼女ならやってくれるさ。
「年日。できればこの白い機体の相手をして欲しいのだが……手伝ってくれないか?」
「うっひょォー!?マジかよマジかよォ!?何つーモンをヘリに積んじゃってくれてるんですかァ!?……あ、和音姉。ごめんちょっと忙しいわ。またあとでなァ」
「ちょ、年日……まったく。能力所持者はこうも周りが見えなくなるモノなのか?私たちは戦闘民族サイ●人ではないぞ……」
私が通信を切ろうとしたら、私の嫁が急に通信を繋いできた。バレてしまった……のか?
「私が……やります………和音さんは…他の兵士を…お願いします…」
「綾火の能力は戦闘向きではなかったのか?まぁ、やってくれるならお願いしよう」
「わかりました……後、戦闘中は……近づかないで下さい……通信も切断します………すみません……」
「うむ。構わないが……どうしてだ?」
「その……恥ずかしい…ので……」
「あぁ、あれか?年日のように性格が変わってしまうのか?私も分かるぞ綾火。承知した。離れておこう。死ぬなよ?綾火は私の嫁だからな。先に逝くことは許さないぞ?」
「……はい……あり…がとう…ございます…これでキスは……ナシです………よ…?」
「そ、そんなぁ!殺生な!………………冗談だ」
「その代わり…………私が帰って………きたら、そ、その……ナデナデして………くだ……さ…い」
…………………………………え?嫁からのナデナデしてね?こ、これは………俗に言うフラグではないのか!?キタァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!
「和音……さん…ちょっと…心…の声出…てま……すよ……?」
ふぅ。このような恥じらい娘も良いものだな。
花も恥じらう乙女ってか?それは少し意味が違うか。
私は通信を切って集まっていた集団を見た。戦車も火薬使用タイプだな。私の能力はこのときに光るのだ。
「お願いだから誰も死なないでくれよ…せっかくの初陣が台無しになるからな」
私は戦車を潰しに行った。
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side,綾火
私は能力で体温と周囲の気温を見分けながら兵隊さんを倒していました。
どこに隠れていようとも、私にかかればすぐに見つけてしまえます。
人間の体温は一定なので、すぐにわかります。まだ一発も外していません。
そんな時、和音さんがサーバーに入ってくるのがわかりました。
通信をサーバーで行う事で司令部にいる年時さんにも情報を渡すために、私は能力を常に使ったまま情報を送り続けていまいた。
和音さんの能力は良く知りませんが、和音さんの周囲には温度の違う膜が張られています。恐らく念動力の一種だと思います。
通信の内容は増援の要求でした。私にあんなムチャを言っておきながら増援を求めるということは、かなり強力な相手なのでしょう。
どうやら私がやるしか無さそうです。
普段は温度を見るからにことしかできない能力ですけど、頑張れば私もっと強いんですよ?
これのおかげで穴のなかにいた時も私を襲う兵隊さん達をやっつけてました。仕方ないです。
故意に自分の能力を暴走させれば使えるようになる私の能力、
絶対温度です。
「能力暴走状態に突入。温度が前方は上昇、後方は下降。足の部分を上昇させて風と上昇気流を形成。目的地まで飛翔します。飛翔開始」
私は能力を使って白い機体のある所まで飛びました。
この状態の時はどうしても作業が口にでてしまうので、恥ずかしいんです……だから和音さんには離れてもらいました。
和音さんは……私の事を思ってくれているみたいなので、嫌われたくなかったんです。
「テメェも能力所持者か?ったく……一体だけじゃなかったのかよ……?」
「対象を発見。武器を所持しています。形状から、ノコギリのように引いて切るモノと判断。
対策として武器の破壊を優先します。下降開始……完了。
破壊するために物質を溶かす方法を選択します。最適物質を検索……完了。
物質は鉄を使用します。液体に変化させて、対象に投下します」
私はすぐそばにあったトラックの残骸?を白い気体に投げて鉄を液体に変化させて溶かしてやろうと思いました。
でも、そう簡単にはいかないみたいです。
白い機体にはまったく変化がありません。別の方法を考えないと。
「はっ、残念だったな。熱はコイツの好物だぜ?」
「鉄の温度急激に下降。熱エネルギーを白い機体が吸収しているものと判断します。
次なる方法を選択……剣と同じ物質を発見。確認……温度を変化させたところ、-172度で凍結、」
恐らく先程の戦闘中に和音さんが千切ったものでしょう。
切断された様子もないから年日さんでもなさそうです。液体ですか……よく和音さんは千切れましたね。
それともそのあとに液体に変化させたのでしょうか?そんなことはどうでもいいです。
液体ならば壊せませんが、固体なあ問題ありません。
えっと……-172度を下回る物質は………っと。
「周囲に-172度を下回る物質を検索……発見。空気中に漂う窒素を選択します。冷却開始。完了までおよそ3秒」
ズキッ、と私の頭に激痛が走りました。
恐らく能力暴走状態のまま酷使し続けた結果でしょう。多く見積もって後4回から5回というところでしょうか。
負荷を掛け過ぎると、私は意識を失って数日は動けなくなってしまいます。
早くケリをつけないと……
「その機体ごと切断してやろうかッ!」
「対象からの攻撃を確認。空気中の水分を冷却し、氷の壁を形成。防御体制へと移行」
私は右腕を正面に向けて空気中の水分を圧縮して氷の壁を作り出しました。
冬場なら水分量が少なすぎて行使することの出来ない芸当ですが、春になって少しの今なら使用することが出来ました。
対象の武器が切断特化の物なら状況は変わりましたが、このノコギリタイプの武器ではこれで十分です。
「防御成功。冷却が終了したため、液体窒素を対象に投下」
液体窒素をノコギリにかけると、パキパキと音を立てて凍ってしまいました。
ですが、白い機体のパイロットは気が付いていません。
温度を視認できる私には武器が真っ青に見えますが、肉眼で見てもただ白いだけです。
「効果が得られました。武器の凍結を確認。武器の破壊に移行します」
私はノコギリを機体の膝の部分でへし折って武器を破壊しました。
後はパイロットを眠らせるだけです。ある程度の温度まで人間の温度を低下させると、冬眠状態。
つまりは臓器を仮死させることができます。私の専売特許ですよ。
「ぶ、武器が、砕けた……!?」
「完了。コックピットにはパイロットが1人。
機体の温度を低下させて、仮死させ、戦闘終了。能力暴走状態停止。お疲れ様でした
………はい……お疲れ様……です」
ついでにエンジンも凍らせて機能を全て停止させました。
これを年時さんの所に持っていったら喜ぶでしょうか?
レールガンをどの様な手段で放っているかも気になります。
機械のことなら彼に任せておきましょう。
一息ついて、切っていた通信機能を使うためにサーバーにアクセスしました。
「綾火!おい綾火!!なんで通信切ってたんだよ!!切んなっつっただろうが!!」
「ひゃうっ……ご、めん…なさ…い……」
「怪我なんてしてねぇだろうな!?」
「あ、はい……大丈……夫……です」
「ふぅ……ならいいんだ。戦闘要員じゃねぇ人間がムチャすんじゃねぇぞ」
私がサーバーに繋いですぐに年時さんから通信を繋がれました。
怒られてしまいました……ごめんなさい。
私は白い機体を担いで周囲を見回します。
あらかた終わっているみたいですね。もう戻っても大丈夫そうです。
「年時さん……機体を……持って帰ります………心配かけて、…す、……すみませんですた…」
「大事なとこで噛むなよ」
うぅ………失敗です………
side out
次回予告
ー今回も悲鳴を聞けるだろうか
狂人、和音・F・アーンドラン