表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

会話オンリーな短編集

無口女を笑わせろ!

作者: umo

 無口無表情な女をどうにか笑わせようと、ひとりの男が奮闘(?)する物語。

「よ、また会ったな」

「……」

「んー、相変わらず(だんま)りか」

「……」

「そして無表情、と」

「……」

「にこやかに、とは言わねえからさ、こう、もうちょいなんか喋ってもよくね?」

「……」

「そして無愛想、と」

「……」

「ふとんがふっとんだ」

「……」

「そして無反応、と」

「…………っ」

「え、今反応した?」

「……」

「……」

「……」

「ストーブがすっとぶ」

「……」

「……」

「…………っ」

「おおっ?」

「……」

「……隣の家に垣根ができたんだってさ、へぇー、かっこいー」

「……」

「……」

「…………っ」

「遅れて反応すんのな……」

「……」

「なに、ダジャレ好きなの?」

「……」

「……」

「……」

「アルミ缶の上にあるミカン」

「………………っ」

「金曜日の夕食といえばテンプラだよね、なぜならフライデーだから」

「………………っ」

「睡魔に負けてすいません」

「………………っ」

「……隣の客はよく柿食う客だ」

「………………っ」

「いやいやいや、今のダジャレじゃねえだろ!」

「……」

「別に噛んでもねーし、どこに反応する要素あったんだ?」

「……」

「うーむ、謎だ……」

「……」

「オーケー、わかった、今日はぴくりと反応しただけだったが、明日は爆笑させてやるかんな」

「……」

「明日もここに来いよ、んじゃなー」

「…………………………………………………………変な、人……………………」

◇◆◇

「おっす、また会ったな」

「……」

「むっ、今日も今日とて挨拶もなしか」

「……」

「しっかーし!」

「……」

「今日こそは何か喋らせてやる、笑わせてやる、(ひざまず)かせてやる!」

「……」

「……」

「……」

「検証その一『突っ込みどころがあれば反応する』、失敗かー」

「……」

「こう、最後のおかしいだろ!とか突っ込んでくれるかなー、と……」

「……」

「……では検証その二に移行します」

「……」

「トンネルで豚が寝ている」

「…………………………っ」

「おおっ、検証その二『説明されなきゃ微妙に分かり難いようなダジャレにも反応する』、反応が遅かったけど、一応成功か!」

「……」

「この調子で検証その三いってみよー!」

「……」

「……検証その三『ノリで反応してやる』、失敗だ」

「……」

「検証その四『それも検証だったのかよ!』、失敗、と」

「……」

「生麦生米生卵!」

「………………っ」

「検証その五『突発的早口言葉に反応する』、成功」

「……」

「……なあ、なんで早口言葉にも反応するのか訊いていいか?」

「……」

「すもももももももものうち!」

「………………っ」

「検証その六『早口言葉なら何でもいいから反応する』、成功だぜい」

「……」

「……赤巻紙青巻紙黄みゃきぎゃみゅぃ!」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……馬鹿な、検証その七『早口言葉を噛むと反応する』がなんで失敗すんだ!?」

「……」

「くそっ、結局よく分からなかったが検証はここまでだ……」

「……」

「こっからが本番だ、覚悟しろ!」

「……」

丹羽(にわ)さん()の庭に二羽鶏がやにわにワナにかかった!」

「……」

「坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いたら別の坊主が『坊主が上手に坊主の絵を描いた屏風』に上手に『屏風に上手に坊主の絵を描いた坊主』の絵を描いた!」

「……」

「東京特許許可局局長今日急遽許可却下、ブスバスガイドバスガス爆発!」

「……」

「どうだ、この『反応される前に複数の早口言葉を言えば積もり積もって爆笑になるだろ作戦』は!」

「………………」

「………………」

「………………」

「無反応だと!?」

「……」

「……くっ、ネタが尽きてしまった……」

「……」

「そんな『ネタ少な過ぎんだよバーカ』みたいな目で見ないでくれ!」

「……」

「……」

「……」

「……あーあ、結局喋ってもらえなかったかー」

「……」

「せめて何か表情変えてほしかったんだけどな」

「……」

「反応してもらうのがせいぜいとは、ワシの腕も落ちたのう……」

「……」

「そして無反応、と」

「……」

「……」

「……」

「……っつーわけで、さ」

「……」

「俺、しばらくここには来られないんだよね」

「…………」

「今度引越しすることになってさ」

「……………………」

「だからあんたにも当分会えなく――」

「やだ」

「……………………へ?」

「…………」

「えっ、今、しゃべ……った?」

「……」

「……」

「……」

「……あ、あのー、今、なんて……」

「やだ」

「…………えーっと、何が?」

「離れて行っちゃ、やだ……」

「え、あ、えっ!?」

「……うぅ……」

「え、ちょ、な、泣くなって!?」

「……一緒に、いたいよぉ……」

「…………」

「…………」

「あー、いや、その」

「……うぅぅ……」

「ちょ、ちょっと待った、たぶん勘違いしてるぞ!」

「なにが……」

「俺、引っ越すけど、また会えるから!」

「いつかきっと、なんて信用できない……」

「いや、一週間後ぐらいに会えるから!」

「……どうして」

「や、だって、引っ越し先はすぐ近所だし」

「……………………?」

「引越しの準備とかで忙しいからしばらく会えないって言ったわけで……」

「…………」

「引っ越した後はむしろここと近くなるっていうか……」

「………………」

「これからはもっと頻繁に来ようかなー、って思ってたり」

「……………………」

「だから、な?」

「……………………」

「いてっ、ちょ、無言で殴るのやめて!?」

「…………ばか」

「あれ、なに、もしかして照れてる?」

「…………」

「おーい、こっち向けよー」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「………………れるの?」

「え?」

「一緒に、いてくれるの……?」

「…………おう、ずっとな」

「ず、ずっと……?」

「おう」

「…………」

「い、いやか?」

「…………っ」

「や、そんな激しく首振られてもどっちか分かんねえよ」

「…………いたい」

「痛い?」

「…………ばか」

「殴るな、痛いぞ」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………その……」

「おう」

「……ずっと一緒にいたい、です……」

「そっか……」

「うん……」

「…………」

「…………」

「…………えへへ」

「あ――……」

「……?」

「あ、いや、笑った顔見れたなー、って」

「…………」

「……ちなみにすげえ可愛かった」

「…………ばか」

「いてっ!」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………ははっ」

「…………ふふ」

「……まあ、その、なんだ……」

「…………ん」


「これからも、よろしくな?」

「――うんっ」


 会話文オンリー第二弾。

 さて、登場人物は普通の(?)男と無口女という、無茶だなー、書ききれるかなー、むしろ会話になんねえだろ! と書き始めたときは不安だった今作品。作者的には、第一弾みたいなキレ(というかテンポとか痛快さ?)はないけどそれなりには纏まったかな、と思うのですが……いかがだったでしょうか?

 執筆時間はアイディア構成から数えて四時間ほど。予想以上に時間取られてしまいましたが、実は一番長く時間かかったのはダジャレを考えること……。改めて考えるとなかなか思い付かないんですよね、ダジャレって。意外な伏兵でした。結局いくつかはネットで検索しちゃいました。…………あ、ちなみに今回はキーボード片手打ちなんて馬鹿な事には挑戦してませんw


『これこれこういう二人の会話が見たい! あんたに書いてほしいんだ!』という奇特な意見があればお気軽にどうぞー。テンションMAXになって一日か二日で書き上げると思いますので。これ書いたきっかけも第一弾の方で感想をいただいたからですしね。※追記:さすがに一日、二日では無理ですw 長い目でお待ち下さい。


 拙作を読んで、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。


↓その他の会話オンリー作品はこちらから

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 名前や情景の描写が一切ないという点を、読者側であれこれ妄想できるという点に上手く活かせていて素晴らしいです。 [一言] 会話文オンリーで萌えてしまったのは初めてです…! ダジャレ考案お疲れ…
[良い点] これは、すごい!! 無口なキャラクターを書ききるなんて凄い。 そして、情景が浮かんでくるのが凄い。 [一言]  一生懸命な男子と、無口なクールな女子の風景が浮かんで、 そのダジャレと早口言…
2010/09/20 02:35 退会済み
管理
[良い点] 形式が斬新 [一言]  はじめまして、人鳥です。  ぼくの中で無口な少女が勝手に幼女認定されていたので(少年は中高生)、最後の会話が少し危ない雰囲気を醸していました。  まあ、そんなこと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ