騎士団長との遭遇
「もしや奥様ですかな?」
「えっと、貴方は?」
庭園を歩いていると突然屈強な男性に声を掛けられた。
「失礼しました。私はシュヴァルツ騎士団団長という名誉ある職に就かせてもらっていますセドリックと申します」
リリアーナは目を瞬いた。
この方が騎士団の……。
「お話しは伺っております。クライヴ殿下の妻のリリアーナ・シュテイン・リーツェンベルクですわ」
「やはり貴方が噂の奥様ですか」
リリアーナは噂とは何のことだろうかとこてんと首を傾げた。
「団員の中でも話題になっておりますぞ。悪いお噂はあっても浮いた話の全くない殿下に突然現れた奥様ですからなぁ」
「あのお噂は……」
「分かっておりますとも。殿下はそのような方では決してない」
その言葉を聞いたリリアーナは安堵の表情を浮かべる。
「……心配しておりましたが、本当に良い奥様を娶られましたなぁ、殿下は」
「え?」
「リリアーナ!!」
「クライヴ様!? どうしてこちらに」
クライヴは息を切らして、駆け寄って来た。
「それはこちらの台詞だ。どうしてそいつと一緒にいる!?」
そう言うクライヴはなぜか焦った顔をしている。
「えっと、少しご挨拶を」
「そ、そうか……」
「はははっ。おやおや、これは、とうとう殿下にも春が来ましたか」
「なっ!? べ、別にそういうのでは……」
クライヴは真っ赤になり、吃りながら尻すぼみに小さくなる声で反論する。
「えっと?」
「……リリアーナは気にしなくていい」
「?はい」
「それで何の用だ?」
「定例報告に参ったのですよ」
「……そうか」
「いや〜、また今度の方がよろしいですかな」
セドリックはにやにやと笑みを浮かべている。
「っこれからでいい。中に入れ」
羞恥心を押し隠すように、強い口調でクライヴは言う。
「はい。ああ、そうだ。奥様、今度うちの団員とも会って頂けませんか? 皆気になっておりましてなぁ」
「ええ、もちろんですわ」
リリアーナは普段領地を守っているという強力な騎士団に興味があったため、そう返事をした。
「ダメだ」
しかし、クライヴに即却下されてしまった。
「えっ」
「男ばかりの場所だぞ。行かせられるわけないだろ」
「はははっ。確かにうちは男ばかりですからなぁ。殿下が心配されるのも当然ですな。まぁ、いずれはお願いしますぞ」
リリアーナはクライヴが何を心配しているのか全く分からず首を傾げている。
「そ、それはその……。いずれな、いずれ。と、とにかくリリアーナ、騎士団の者にはくれぐれも俺がいないときに近寄らないようにしてくれ」
「?承知いたしました」
理解はしていなかったが、“いいえ”とは言えない空気を感じたため、とりあえず首を縦に振った。
その返事を聞いてクライヴは満足したように頷くとセドリックとともに、屋敷の中へと消えていった。




