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悪虐王子と王命婚することになりまして〜“関わるな”と言われた翌日に溺愛が始まりました〜  作者: 星月りあ


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一緒にお食事されるようです

「奥様、本日より殿下が夕食をご一緒されるとのことです」

「え!? どうして急に?」

にこにこと笑顔で言うマイラの言葉に驚きを隠せなかった。


「そりゃあ、もちろん決まってますよ。殿下も奥様の素晴らしさに気付かれたんですよ」

興奮した様子でマイラが言う。


「えぇ? でも、私なんてただの田舎娘よ?」

「殿下はそんなこと気にされる方ではありませんからね」

マイラはうんうんと大きく頷く。


「それに恋に身分なんて関係ないって言いますからね」

「恋って……。クライヴ様とお話ししたことなんて数えるほどしかないのに?」

「恋に落ちるきっかけなんて誰にも分からないものですからね。いっつも厳しい空気を纏ってた殿下が、今や微塵も感じませんからね。奥様が来られて邸内の雰囲気も明るくなりましたし」

「そうなの?」

「はい。ここが本当にあの殿下のお屋敷なのかって疑いたくなるぐらいなんですから」


恋はともかくとして、少しでも力になれていたら嬉しいわ。


それにしてもクライヴ様ってお噂と随分違う気がするけれど、本当のクライヴ様は一体どのような方なのかしら。




夕食の時間となり、ダイニングに向かったが、クライヴはまだ到着していなかった。リリアーナが椅子に腰を掛けてすぐにカチャッという音とともに扉が開き、クライヴが中に入って来た。


「待たせたな」

「いえ、私も今来たところですので」

「そうか」


クライヴが席に着き、食べ始めたのを見て、リリアーナも食事を始めた。


リリアーナもそうだが、クライヴも何を話したらよいのか分からず、気まずさが拭えずひたすら無言で食事を続けている。


「……きょ、今日は何をしていたんだ?」

しどろもどろになりながらクライヴが質問をする。


「えっと、読書をしておりました」

「そうか……」

「……」

な、何を話せば良いのかしら!?


「その、どんな本を?」

「あっ、えっと、小説です。小さい頃に読んだことのある本があったので、懐かしくて」

それは世界各地を旅する少女の物語だった。その少女は出会う動物を次々と仲間にしていき、みんなで旅をするのだ。子供の頃は、その物語の影響でリリアーナ自身も旅をしてみたいと願ったものだった。


「……他には何を?」

「ピアノを弾いておりました」

「毎日弾いているのか?」

「はい。実家でも毎日弾いておりましたわ。ピアノが大好きで音楽家を目指していたこともあるぐらいですの」

ちゃんと会話が繋がっているわ。

とリリアーナは嬉しくなった。


「その……今はどうなんだ?」

「どう、と仰いますと?」

「今も目指していたりは?」

クライヴは自身との勝手で突然な結婚で諦めざるを得なくなったのではないかと思い、聞かずにはいられなかったのだ。


「いえ、今は殿下の妻ですし」

「そうではなく、もし俺との結婚がなかったらどうだ? 目指していたか?」

「いいえ」

リリアーナははっきりとした口調で返事をする。


「ただの子供の頃の夢ですわ」

その返事を聞いて、クライヴはほっと安堵の表情を浮かべる。もし仮に大切な夢を諦め、妻となったのなら申し訳ないと思ったのだ。


「とても美しい音色だった。また聴かせてくれ」

「はいっ」

リリアーナは褒められたことが嬉しく、顔に熱が籠もるのを感じた。


「くっ……」

その声にはっとし視線を向けると、クライヴは何やら手で顔を覆い天井を向いていた。


「クライヴ様? どうされました!? どこか具合でもお悪いのですか!?」

まさかリリアーナの可憐な笑顔に身悶えているとは露とも知らず、慌てて声を掛ける。


「ダ、ダイジョウブ、ダ」

返された言葉は途切れ途切れになっていた。


「?それなら良かったです」

そう言いつつも、リリアーナは首を傾げる。


その場には暫く暖かい空気が漂っていた。




**********


「成長されましたね。実に感慨深いです」

部屋に戻るなりイザックは目元を拭う素振りを見せながら言う。


「お前なぁ。俺だってあれぐらい出来るからな」

「ええ、ええ。そうですね。感動いたしました」

「イザック!!」

「ふふっ、申し訳ありません。ですが、奥様がいらっしゃってから殿下は良い方向へと変わられましたから」

「……それは間違いないだろうな。全て彼女のお陰だ。天使みたいだったな。いや、天使そのものか」


イザックはクライブの発言に呆気に取られていた。


「早く会いたいな」


先程お会いされたばかりでしょうに。

とイザックは思いはしたが、口にはせず、心に留めておくことにした。


「明日の夜が待ち遠しい」


「そんなにお会いしたいのでしたら、会いに行かれたらよろしいのでは?」

「……行ってもいいのか?」

どうやらクライヴにはその発想はなかったようだ。


「勿論ですよ。殿下の奥様なのですよ? 誰も止めませんが?」

「そうか……。いや、しかし、今彼女は部屋にいるはず……。だったらやっぱりダメだ!!」

「はい? なぜです? 普通に奥様のお部屋に行かれたらいいではないですか? 」

イザックは不思議そうに尋ねる。


「おお俺が近寄れるわけないだろ!!」

「夫が妻の部屋を訪ねて何か問題でも?」

「俺を……俺を殺す気か!!」

クライヴは全力で叫んだ。


「……はい?」

「リリーの部屋……つまりは聖域だぞ!! あの愛らしいリリーの空気に満たされ、俺の全てがリリーに包み込まれて……。俺が耐えられる気がしないっ」

クライヴはリリアーナの部屋になど行けば理性が持つかどうか分からなかった。


「……さようですか」

イザックは溜め息を吐く。初めは微笑ましく話しを聞いていたイザックだったが、呆れに変わっていた。

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