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悪虐王子と王命婚することになりまして〜“関わるな”と言われた翌日に溺愛が始まりました〜  作者: 星月りあ


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パーティー

パーティー当日、いつも以上に張り切っていたマイラによって、綺麗に着飾られた。クライヴの瞳を想起させるような深い青色のドレスに、仕立て屋コンフェーヌから購入したエメラルドのネックレスを身につけている。リリアーナは鏡を見てまるで別人のようだと思った。


これ本当に私なの?

「さすがマイラね」

「言っておきますけど、私は少しお手伝いさせて頂いただけですからね。元々お美しいんですから」

「あら、マイラったら」

「……そのお顔は信じていないですね。もう、本当なのに」




玄関に着くと先にクライヴが待っていた。クライヴはそわそわした様子で落ち着かなさそうにしていたが、リリアーナに気づいて振り向くと、ぴしっと動きを止め、今度は微動だにしなくなった。


「イヴ、お待たせしました」

「……」

「あの、イヴ?」

そんなにじっと見てどうかされたのかしら?


「あっ、いや……」

普段あまり着飾ることのないリリアーナの姿に、クライヴはすっかり見惚れてしまっていた。同時に、このまま連れて行くと誰もが惚れこむのではないか、もしかしたら誘拐されるかもしれない、と心配せざるを得なかった。


「……よし、今日は帰るか」

「へ?」

思わず素っ頓狂な声を出してしまう。


「ちょっと殿下? 何を仰っているのですか。さあ早く向かいますよ」

話しを隣で聞いていたイザックに諭されたクライヴは、渋々といった感じで馬車まで向かう。


「私ではやっぱり似合っていないのでしょうか?」

「違うっ!! そんなわけがない」

不安になったリリアーナの疑問はクライヴの声によってはっきりと否定される。


「そのっ、あのっ……よ、よく似合ってる。綺麗だ」

クライヴの耳も頬まで赤く染まっていた。恥ずかしそうにしながらも口にされた言葉に、リリアーナも顔が熱くなるのを感じた。


クライヴはこういうときは思っていることを素直に口に出すのが大事だと聞き、勇気を出して実践したのだ。しかし、照れ臭くて普段は口に出さないため、こんなにこっ恥ずかしいものだと思わず、この場から逃げ出したくなっていた。


リリアーナとクライヴは周囲からの生暖かい視線に気づくと、逃げるように馬車に乗り込んだ。




**********

馬車に揺られること数時間、ようやく王宮の姿が現れた。


「ついに着いたか。リリー、くれぐれも俺の傍から離れないようにしてくれ」

「?分かりました」

お披露目として参加するって仰っていたし、お傍にいるつもりだったけれど、何かあるのかしら?


「しかし、王宮に来るのは随分久々だな」

「あら、そうなのですか?」

「ああ、公爵位を授かったとき以来だ」

「ということはもう何年も来られていないのですね」

「そうだな。ここまで随分遠かっただろう。いくら長時間の移動も苦にならないように馬車が設計されているとしても、往復で何時間かかるんだか、という話だ」

「確かに……」




馬車が王宮の門をくぐり、しばらくすると動きを止めた。


「では降りるか」

「はい」


手を差し出され、片手を乗せ降りる。


「よしっ、行くか」

クライヴの緊張が伝わってきた。それは久しぶりのパーティーに対するものだけではないように感じた。


イヴからしたら帰省だと思うのだけれど、違うのかしら? もしかして、久しぶりの王宮だから?


王宮のパーティーでは必ず国王陛下や王妃様も参加される。


ご両親に会われるのも数年ぶりだったりされるのかしら?


「準備はいいか?」

「はい!!」




パーティー会場の大きな扉が開き、入場すると皆の視線が一斉に集まるのを感じた。


教わった通り堂々としていなければっ。

緊張しながらも顔は正面を見据える。すると、ひと際大きな人だかりができている場所を見つけた。その中心にはシエルとナターシャがいた。二人の存在に気づいたシエルが驚いた顔をしているのが目に入った。


「シエル殿下は私たちが参加すること、ご存じなかったのでしょうか?」

「そのようだな。ナターシャが伝えるかと思って、わざわざ報告もしなかったのだが」


視線に気づき、顔を向けるとそこには煌びやかな衣装を纏った国王夫妻がいた。


「ああー、父上と母上か……」

挨拶に来いという圧をクライヴはひしひしと感じた。


「行くか」

苦笑いを浮かべて、彼は言う。


クライヴとリリアーナは国王夫妻が揃って座っている壇上に向かって歩みを進めた。そこまで辿り着くと、大きく礼をとった。


「久しぶりだな、イヴよ。元気そうで何よりだ」

「わたくしも会えて嬉しいわ」

「お久しぶりにございます。こちらが妻のリリアーナです」

リリアーナは再び礼をとった。


この緊張感無理ぃ~~~。


「リリアーナ嬢、この子は色々言われてはいるが根は良い子なんだ。良きパートナーとなってくれることを願う」

「父上……」

「は、はい、勿論でございます。お傍でお支え出来たらと思っております」

緊張でカチコチになりながらもなんとか言葉を返した。


「ではこれで失礼いたします」

クライヴが早々に切り上げたことで、その場を去った。


わ、私ちゃんと出来てたの!? これで良かったのかしら!?

挨拶を終え、去る最中不安でしかなかった。


「大丈夫だ」

リリアーナの不安を感じ取っていたようで、安心させるような声音で言われる。


「俺もこういう場は久々だからな。ちゃんと出来ていたかなんて分からない。にしても皆の視線がどうも落ち着かないな」

そう言って彼は苦笑する。


王族として生きてきたクライヴでもそうなのだと知り、少し安堵した。


そのとき、音楽が流れ始めた。パーティーにおいて最初に踊るのは王族と決まっている。国王夫婦はこういった場で踊ることをしないため、この中ではシエルとナターシャ、そしてクライヴとリリアーナの二組である。


「では早速踊るか」

「は、はい!!」


ちらりとナターシャとシエルが踊っている姿が見えた。

息のぴったり合ったダンスに、美男美女ですっごくお似合いのお二人だわ。私ではクライヴ様の横に立つとあまりの輝かしさに霞んでしまいそうだけど、せめて堂々と立っていられるように頑張らないとっ!!


しかし、リリアーナは自身へ突き刺さる大勢の視線を感じていた。

「た、たくさん見られている気がしますっ」

「そ、そうだな。こんなに注目を浴びるとは……」

クライヴはお披露目がこんなにも注目されるものとは思っていなかった。普段多くの注目を集めているのはシエルとナターシャであり、自身は無関係だとばかり思っていたのだ。しかし、久しぶりの表舞台に注目を浴びるのは必然なのである。


「周りは気にしなくていい」

「で、ですが……」

「どうせ失敗したとしても、二度と会わないような者たちだ。今後パーティーに参加する予定などないしな。なんだったら今まで通り引き籠っていればいい。だから大丈夫だ」

「イヴ……引き籠っていてはお身体を壊してしまいますわ。でもありがとうございます。勇気が出ました」

「それなら良かった」




ナターシャの指導通り、音楽に合わせてクライヴに身を委ねて踊った。その空間が心地良くて、いつしか周りの視線など忘れ去られていた。音楽が終わると、大勢の拍手が聞こえた。


「二人とも見事なダンスだったよ」

「兄上!!」

シエルとナターシャが歩み寄ってきた。


「ええ、素晴らしかったですわ」

「ナターシャのおかげだ」

「ナターシャ様、ダンス教えてくださりありがとうございました」

「あら、構わなくってよ。リリアーナさんみたいな素敵な方にお教えできて楽しかったわ。また何かあったら頼ってちょうだい」

「そう仰っていただけるとありがたいです」

「シアが教えたの? 直接?」

その話を聞いていたシエルが疑問を覚えて尋ねる。


「ふふっ。ええ、クライヴ殿下のお屋敷でお教えしておりましたの」

「シア? 僕は何も聞いてないけど。っていうか、イヴのところに行くなら僕も行ったのにっ!!」

シエルが非常に悔しがっているのが見て取れた。


「まあっ!! 親戚のお屋敷に行くとはお伝えしておりましたが、詳しくは聞かれませんでしたもの。お伝えしなくていいとばかり……わたくしとしたことがうっかりしていましたわ」


絶対わざとだな、とクライヴは思った。


ふいにリリアーナはどこかから強い視線を感じた気がした。辺りを見回したが、その視線の主が誰かは分からなかった。

気のせいだったのかしら。


「どうした?」

「いえ、なんでもありません」


「イヴがまさか出席するなんて思わなかったよ。珍しいね」

「そうですね。婚約のお披露目をと思いまして」

「そっかそっか。良いお披露目になったんじゃないかな」

「だったら良いのですが……」


リリアーナは緊張のしすぎで来たばかりだというのに疲れきってしまっていた。


「……では俺たちはこれで」

えっ!?

「えっ!?」

シエルの声とリリアーナの心の声が重なった。


「もう帰っちゃうの!? もうちょっとゆっくりしていってもいいのに」

「いえ、元々長居する予定はありませんでしたから」

「そう、お兄ちゃんまた会いに行くから、待っててね」

「……はい」


リリアーナとクライヴはパーティー会場を出た。


「大丈夫か?」

「はい、平気です」

もしかして気を遣ってくださったの? だとしたら申し訳ないような……。


「あ、あの、本当によろしいのですか? まだ頑張れますし」

「別に無理なんてしなくていい。それに俺も早く帰りたいからな」

そう言って彼は笑った。

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