パーティーへの招待状
「殿下宛に招待状が届きました」
「……王宮からか」
招待状にはクライヴとリリアーナの名前が書かれていた。
例年この時期になると王宮で大規模なパーティーが開かれる。毎年招待状が届いてはいたが、デビュタント以来参加したことはなかった。
クライヴは王族なので、招待状がなくとも参加できるのだが、なぜか毎年ご丁寧に送られて来ていた。
今年もわざわざ参加する意味はないんだがな。
「あの、今年は参加されては?」
クライヴの考えが分かったのか、イザックが言う。
「どうしてそう思う?」
「結婚式も開かれませんでしたし、貴族の方々へのお披露目がまだですから」
「ああ、そうだな……」
……結婚式、したかったっ。相手がリリーだって事前に分かっていたら絶対やったのに!!
今更ながら後悔が募っていく。
こうなったらリリーとの仲を深めて違和感なくして結婚式へと持ち込むか。
「殿下?」
「ん? 何の話をしていたんだ?」
考え事をしているうちにすっかり忘れてしまった。
「パーティーのお話しですが? お披露目のためにも必要だと」
呆れたように返される。
「あ、ああ、そうだったな。しかし、お披露目か……」
「結婚式を開かれていないことは知れ渡っています。形だけの結婚なのではないかと噂されていますし、それを否定する意味でもちょうどいいのではないかと」
「そんな噂までたっていたのか……。確かに式を開いていないのは事実だからな。言い訳はできない」
「上手くいけば今までのお悪い噂の数々を止めることが出来るかもしれませんよ」
その言葉にクライヴは顔を上げた。
そうか、これはチャンスかもな。
「決めたぞ!! 仲の良さを皆に見せつけてやるんだ」
「その意気でお願いします。ではこちら、貴族の最新情報をまとめたものです」
イザックはそう言って分厚い本を差し出してくる。
こんなものいつの間に……。
「こんなこともあるかと思い、用意しておきました」
相変わらず準備の良い。
クライヴは思わず苦笑する。
「パーティーに出られるのですから、知っておいて損はないと思いますよ」
そうは言われても、暗記は苦手なんだがな。名前の羅列ばかりが並び、頭がパンクしそうになる。
クライヴはパーティーにも基本参加しないし、公務に携わる機会も今までほとんどなく、貴族との関わりなど皆無だ。それにしてもだが、本来は把握しておくべきだろう貴族家の家名すら頭に入っていないのは問題となり得る。知っているのはリリアーナの実家フィリア伯爵家と、ナターシャの実家シェリアス侯爵家のみ。
一応俺だって公爵だ。公爵がこれでは貴族連中から馬鹿にされるのが目に見えている。それは俺だけの問題ではない。リリーや俺の領地に住まう民までもが下に見られるのは我慢ならない。そうならないためにも、何としてでも覚えきらないといけない。
「よしっ!!」
クライヴは気合いを入れて、その分厚い本を開いた。




