王命婚 第二王子side
最悪だ……。俺は何ということをっ。あのようなことを言うつもりはなかったのに。
クライヴは自室に戻り、冷静さを取り戻すとリリアーナへの発言を悔い、一人頭を抱えていた。
* * * * * * * * * *
あれは数日前のことだった。突然、ここリーツェンベルク王国の現国王である父から手紙が届いたのだ。そこには結婚相手が決まったことだけが記されていた。その手紙を読み、クライヴは顔を歪ませた。
今まで手紙が来ることなんてなかったのに、いきなり手紙を寄こして来たと思えばこれだ。
クライヴは片手で手紙をぐしゃりと握り潰した。
……俺だって本当は分かっていた。王族として生まれた以上、いつかこうなることを。
せめてまともな女性が来るようにと願いながら落ち着かない日を過ごすこと数日、ついにこの日がやって来てしまった。結婚を命じられてからずっと憂鬱な気分だったが、妻となる女性とこれから同じ屋敷で暮らすことになるのかと思うと、一層気が重くなった。
妻となる女性が到着したとイザックからはすぐに知らされたのだが、どうしても足が向かず、気が付いたら数時間が経っていた。怒って俺の部屋に突撃するでもなく、客室に何度か向かったイザックに当たるでもなく、文句も言わずじっと待っていると聞き、さすがにこのまま放置するのはまずいと感じ、漸く重い腰を上げた。
「はぁ……どんな女性だろうが関わる気などないというのに、全く」
相手の女性も俺が夫となることにさぞ落胆しているだろうな。
クライヴは不満を溢しながらも彼女が待つ客室にイザックとともに向かい、乱雑に扉を開けた。
「!? ……っ君が俺の結婚相手……なのか?」
俺は目の前にいた女性を見て酷く動揺し、声が震えてしまった。彼女にも気づかれてしまっただろうか。
彼女は俺を見ると、慌てて立ち上がり礼をし、丁寧に挨拶した。彼女からは緊張を感じられたが俺に対して怯えるそぶりは全くなかった。俺の悪い噂は聞いていただろうに。
彼女の姿を見て、頭が真っ白になった俺は、全く言葉が出て来なかった。
何か言わねば。
『最初に言っておくが、俺には関わるな。関わりさえしなければ好きに暮らしてくれて構わない。以上だ』
焦った俺は事前に決めていた伝えるべきことだけを淡々と告げると、足早に部屋を出て行った。
まさか彼女が来るとは思わなかった……。今更彼女にどう接すればいいんだ、俺はっ。
本当に想定外だったのだ。
「なぜ、彼女が……」
クライヴは思わず呟く。
リリー……俺の初恋の女の子……。




