第一王子side
ついにイヴが結婚してしまった……。イヴが結婚を嫌がるからと理由をつけ、婚約に至らないように根回しし続けて……それなのに……。
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僕はイヴが生まれた当初は全く弟になど興味を抱いていなかった。今となっては考えられないことだが、王族である以上子供は2人は必要だと分かっていたし、弟が出来ても当然だという感覚だった。母上に呼ばれたこともあり、生まれたばかりの弟と対面を果たしても特に何も感じなかった。母上の腕の中ですやすやと眠るイヴを見て、ただただ小さいな、それぐらいのものだった。自分はどこか冷めている、そう気づいていたし、両親がそれを気にしていることも知っていた。だがそれが変わることはないとずっと思っていた。
母上からイヴに紹介したいからと呼ばれ、初めて起きているときに対面した。行く度に眠っていたので、よく眠る子だなと思っていたが、どうやらそれが普通らしい。
「ほら、シエルも触ってみたら?」
そう母上に言われ、そっと手を差し出すと、小さな手が僕の指をぎゅっと掴んで来た。そして、嬉しそうにきゃっきゃっと笑っていた。僕はそんな弟の反応に困惑し、その純粋な笑顔に心がざわつくのを感じた。策略に溢れた王宮の中で、裏表のない純粋な笑顔なんて僕には眩しすぎたから。赤ちゃんなら当然なのかもしれない。思わず目を逸らしたくなるのと同時に、その笑顔を守りたいとも感じるようになっていた。
まだあの頃は分からなかった感情があった。おそらくこれが家族愛というものなのだろうと後々理解した。
イヴはいつしかとことこと僕の後ろをついて歩くようになった。そんな弟が可愛くてしょうがなかった。成長を見守るのが楽しくて、僕の生きがいになった。
可愛い可愛い弟……僕の全てをかけて守る。そう誓った。そして、イヴの純粋さを守るためにも、欲望にまみれた汚れた大人が近づくことのないように妨害をし続けた。イヴを悪く言う連中は遠くにやった。だが、完全に守ることはできなかった。イヴが大きくなるにつれ、ともに行動する機会は減っていった。もしかしたら、僕の知らない間にどこかで悪い噂話を聞いてしまったのかもしれない。いや、間違いなくそうだろう。時折、悲しそうに眉を伏せているのを見てしまったから。イヴに話を聞いても誤魔化されてしまったけれど。
そして、僕が公務のため王宮を空けていた間に、イヴは王宮を出て行ってしまった。イヴのためにと出来得る限り早く戻って来たにもかかわらず。それがどれだけショックだったか。
なんとしてもイヴが暮らしやすい国にしよう。あの日、そう誓った。
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それにしても婚約を嫌がっていたわりには幸せそうで良かった。イヴの結婚相手となったリリアーナ嬢、彼女もなかなかに純粋な子だと感じた。僕の直感だけど、結構当たるからね。悪い子じゃなさそうだし、相性は良さそうかな。……寂しいけれど応援してあげないとね。それに、邪魔なんてしたらイヴに嫌われちゃいそうだし。それは嫌だからね。




