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悪虐王子と王命婚することになりまして〜“関わるな”と言われた翌日に溺愛が始まりました〜  作者: 星月りあ


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17/22

第一王子の来訪

「殿下!! お待ちしておりました」

屋敷に戻るとイザックが慌てた様子で駆け寄ってきた。


「何事だ」

「それがシエル殿下がお見えなんです」

「何?」

「まずはクライヴ殿下と二人でお話しがしたいとのことでして。奥様は後ほど。さあ、早く向かってください」

「分かった」




扉を開けるとソファに腰を掛けている男性の姿が目に入る。

「やあっ、久しぶりだね、僕の可愛い弟っ」

その男性はクライヴを見るなり、目を輝かせて嬉しそうな笑みを浮かべた。


「……お久しぶりです、兄上」

そう、彼はクライヴの兄シエルである。


シエルは儚げな雰囲気を漂わせており、聖なる貴公子として老若男女問わず人気が高い人物だ。


まさかお忙しい兄上がわざわざ訪ねて来るなんてな。一体どうしてここに? リリーに用があるならともかくとして。そもそも今は長期間の外遊中で暫くは戻らないはずでは?


「久しぶりに会えたというのに歓迎してくれないのかい? 寂しいねぇ」

「……お元気そうで何よりです」

「ああ、僕は元気さ。だけどイヴの方が心配だよ」

「問題ありません」

「そう? それなら良いけど。さあ、これ、海外のお土産だよっ。たくさん、買ってきたんだっ」

その言葉通り、机の上には山程積み上げられている。


「これは……」

その中の一つに目を引くものがあった。他のものは箱に綺麗な包装がしていたが、それだけは何の包装もしておらず、箱にすら入っていなかった。


「そう、魔導具だよ。最近、開発されたものでね。どこにいてもすぐに連絡が取れるという優れものなんだ。しかも映像つき」

「そんなに便利な魔導具でしたら兄上が使われては?」

「ダメ。これはイヴが僕と連絡する用なんだから」

「え?」

「だってイヴは全然連絡してくれないから。やっぱり寂しいよ……」

シエルは眉を下げる。


「うっ……」

つい言葉を詰まらせる。


「いつでも連絡して来てくれていいからね。待ってるよ。これで毎日お話しできるね」

にっこりと笑顔でとんでもないことを言い出す兄。後ろから彼の侍従長が断ってほしいという空気感を漂わせている。


「……何か連絡が必要になるときまで仕舞っておきます」

「ええっー!?」


俺としてもさすがに毎日連絡されても困る。兄上に一度捕まるとなかなか離してくれないし。それで仕事も滞るから、兄上よく父上に怒られてたな。


思わず懐かしい出来事を思い出した。


「ねぇイヴ、最近どう? 急に結婚が決まったって聞いて……ごめんね」

「どうして兄上が謝るんです?」

「だって、イヴ結婚したくないって言ってたでしょ。父上め、僕が知ったら反対するだろうからって独断で進めて。もうっ、誰も教えてくれなくてね。外交相手からイヴの結婚聞かされて、本当に驚いたよ。それで、慌てて飛んで帰って来たんだ。結局間に合わなかったけどね……」


そうか……兄上は止めようとしてくれていたのか。というか、外交相手から聞かされるって……。父上は隠し通す気だったのか? 王命まで使って結婚させられたことに思うところは当然ある。だが、結果論ではあるがリリーと結婚出来て舞い上がっていた。


「リリアーナ嬢、だっけ? 仲良くやれてるかな?」

シエルの声にはっとして、思考を引き戻す。


「ご心配されなくとも問題ありません。……彼女となら大丈夫です」

無意識だっただろう。思わず笑みが溢れる。


「そう。それなら良かった」

一瞬驚いた顔をしたかと思うと、ふわりと笑った。




**********


「失礼いたします」

「おや、君がリリアーナ嬢かい?」

「はい。クライヴ殿下の妻リリアーナでございます」

この方がシエル殿下。


リリアーナは、彼の佇まい、そして纏うオーラに思わず圧倒される。


「やあ、初めまして。僕はイヴの兄で第一王子シエル・ディ・リーツェンベルクだよ。君のことはシアから聞いているよ。仲良くしてくれてありがとう」

シア――おそらくはナターシャのことだろうとリリアーナは瞬時に理解した。


「いえ、こちらこそ良くして頂いて感謝しております」

「そっか。じゃあ僕は行くよ」


本当に何をしに来られたんだ?


「イヴ、何かあったら僕に相談してね」

「えっ」

クライヴは瞠目する。


「僕はイヴのお兄ちゃんなんだから、必ず力になるから」

「どうして……」

クライヴは小さな声で呟いた。


「愛する弟を助けるのに理由なんていらないよ」

「……」


クライヴは、シエルの瞳を見ているとまるで心の奥を見透かされているような、そんな不思議な感覚が込み上げてくるのを感じた。それに耐えられず思わず目を逸らしてしまった。するとシエルはゆっくりクライヴの頭を撫でた。


「あ、兄上?」

クライヴは困惑し、声を掛ける。


本当に仲が良いのね、お二人は。

とリリアーナはその様子を微笑ましく見ていた。


「~~っ可愛いなぁ、イヴは。リリアーナ嬢、弟のことをよろしくね」

「はい。お役に立てるよう精一杯努めさせていただきます」

その言葉を聞いて、シエルは満足そうに頷くと帰って行った。

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