久しぶりの再会?
「や、やあ、久しぶりだな」
図書室で本を読み耽っていたリリアーナはじっとこちらを見つめる存在に気がつかなかった。読み終わるとどこかから視線を感じ、振り返るといつの間にかクライヴが後ろに立っており、どこかぎこちない様子で声を掛けられた。リリアーナはびくっと一瞬身体を震わせると、慌てて立ち上がった。
「え?」
久しぶりって私たち毎日会っているわよね?
「えっとお久しぶりです?」
つい語尾が疑問系になってしまった。
だって本当に意味が分からないのだもの!!
「ああ……」
「……」
何この無言の時間は。
「えっと……イヴはどうしてこちらに?」
「えっ、ああ、偶々こっちに用があったというか……」
目が泳いでますよ。なんて分かりやすい……。
思わず苦笑いを浮かべてしまう。
本当に正直な方。
そう思いつつ、そんなクライヴの性格に好感を抱いていた。
「そうでしたか」
クライヴは気まずそうに目を逸らした。ちらりとリリアーナに目を遣るとおもむろに口を開いた。
「何か、欲しいものはあるか?」
「え?」
「き、昨日のお礼だ」
「えっと……」
お礼されるようなことしたかしら?
「クッキーのことだ。美味しかった。……また食べたい」
思わず口を突いて出た。
「嬉しいです。たくさんお作りしますね」
そう返事しつつも若干疑問を覚えていた。
あの懐かしむような視線……。イヴはあれを以前口にされたことがあるの? あれは庶民が食べるようなシンプルなものなのだけど……。
あら? そういえば昔、男の子にあげたような……まさかね。
もう十年近く前のことだから、リリアーナの記憶も定かではなかった。
「ああ、ありがとう。あっ……」
「イヴ? どうかされましたか?」
「お礼をしたくて来たのに、これでは同じ繰り返しになるだけだな」
「ふふっ、そうですね。でも、お礼なんて気にしなくても大丈夫ですから。私の方こそたくさん気にかけて頂いていますけれど、何もお返し出来ていませんでしたから。私がここで役立てることなんてありませんし、少しでもお役に立てる嬉しいのです」
「っそんなことない!!」
クライヴの珍しく大きな声に、はっとして顔を上げた。
「あっ、驚かせてすまない……。だが、リリーに救われているのは俺の方なんだ。だからそんな風に言わないでくれ」
「それってどういう……」
「リリーがここに来てから悪夢を見ることも減ったし、何より毎日が楽しいんだ。憂鬱だったあの頃とは大違いだ。本当に感謝している」
「っ……」
リリアーナはクライヴの真っ直ぐな視線に胸が熱くなった。
「それなら良かったです。私も楽しく過ごさせてもらっていますし、イヴには感謝しています」
「そうか」
短い返事だけだったが、頬が緩んでいるのが見て取れた。
「さっきから言おうと思っていたんだが、敬語もいらないぞ」
「い、いえいえっ!! さ、さすがにそれはっ」
愛称でお呼びするだけでも畏れ多いのに。
「……ならいつかの楽しみに取っておくか」
そう言って彼は笑った。




