青い木に実る春
一週間後――
春の陽差しがようやく暖かくなり始めた頃、掲示板に貼られた「生徒会選挙・結果発表」は、生徒たちの注目の的になっていた。
《生徒会長:南坂 和葉(2年)
副会長:浅山 風香・浅山 優香(2年)
書記:青木 実(2年)
庶務:古賀 治人(2年)
会計:臼井 學(2年)
広報:新井 紗奈(2年)》
ざわめく声の中、治人は掲示板の前で立ち尽くしていた。
何度も目をこすったけど、名前は確かにそこにあった。俺の名前が、「生徒会」の中に。
「治人ー!」
後ろから駆け寄ってきた青木実が、勢いよく彼の肩を叩いた。
「やったね! 一緒に生徒会だよ!」
「う、うん……」
嬉しいはずなのに、実感がわかない。
けど、隣にいる実の笑顔が、夢じゃないことを教えてくれた。
その時、ひょっこり現れたのは、少し鋭い目つきと、整った黒髪を持つ少女――新井紗奈だった。
「へぇ。君が古賀くん? …演説、悪くなかったよ」
クールそうな第一印象とは裏腹に、彼女の口調には少し照れが混じっていた。
「えっ、あ、ありがとう…」
「私、広報担当になったから。ちゃんと“庶務”の君を紹介記事で目立たせてあげる。いいよね?」
そう言って、にっと笑う新井紗奈。治人は苦笑いしながら、小さくうなずいた。
そこへ、別方向からズカズカとやってくる二人の女子――瓜二つの双子、浅山風香と優香。
「副会長は二人で私は浅山風香。もう一人は双子の妹の…」
「風香だよ!よろしくね~!」
ハイテンションな妹とポーカーフェイスの二人の勢いに、治人は思わず一歩引いた。
最後に現れたのは、無言で歩いてきた一人の男子、生徒会長・南坂和葉。整った顔立ちと落ち着いた雰囲気が、まるで空気を静かに支配するようだった。
彼は皆に視線を向け、簡潔に、でも確かな声で言った。
「これが、俺たちの新しい生徒会か。――悪くないな。」
そして、彼は治人の前で一度だけ、静かに頷いた。
それだけで、治人の胸に何か温かいものが灯る。
実が笑う。「これから、大変だよ~?」
治人も、小さく笑った。
「うん。でも…楽しみだ。」
こうして、8人の新たな生徒会は静かに、そして確かに始動した――。
次の物語が、今ここから始まる。