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夏の寄り道

皆様いかがお過ごしでしょうか?少し私事で一ヶ月ほど空いてしまいまいました。

サボってる間、ランキング載ったらしいですね。

皆様の支えのお陰です。ありがとうございます。


ホームルームが終わり、教室から少しずつ人が散り始めた。夏休み前の最後の学校の日。窓の外では、蝉の声がジージーと響いている。


僕は机の上のノートを片付けながら、ふと青木の顔を見た。彼女も同じように片付けていたが、どこか名残惜しそうだった。


「ねえ、今日は少しだけ寄り道して帰らない?」青木がぽつりと声をかけてきた。


僕は驚いたが、何となくその誘いに心が温かくなった。


「いいよ、久しぶりだし」


そう答えると、「じゃあ他の3人も誘う?」

青木が言った。

「もちろん」僕は即答した。

5人で校門を出ると、夏の夕方の空気が肌にまとわりついた。まだ日は高いけど、どこか涼しさも混ざっていて、昨日までの暑さとは違う。


僕たちは近くの商店街に向かって歩き出した。石畳の道を踏みしめるたび、足音が小気味よく響く。


「あの喫茶店、気になってたんだよね」と夢咲さんが言いながら、ちょっと照れたように目を細めた。


その店は昔ながらの木造建築で、入り口のガラスは少し曇っている。手書きのメニュー表が外に飾られていて、なんだか懐かしい雰囲気だった。


「入ってみようか」と諸星が提案し、馬場が扉を押した。


店内は薄暗く、どこか時間が止まったような落ち着きがあった。奥の壁には古いレコードが飾られていて、ジャズの静かな旋律が流れている。


カウンター席に座ると、店主のおばあさんが優しい笑顔で迎えてくれた。


「初めてかい?ゆっくりしていってね」


青木はメニューをじっと見つめてから「アイスティーとパンケーキをください。」と注文。


夢咲さんは「抹茶ラテといちごパフェお願いします。」と落ち着いた声で言った。


馬場も続いて全員でも食べれるかどうか怪しいかき氷を頼んだ。

諸星は少し馬場にビビりながらも「プリンアラモードください。」といつもは頼まなそうなのを注文した。

僕は迷った末に「クリームソーダ」を頼んだ。子どもの頃を思い出す甘い味が好きだった。


注文が来るまでの間、三人は窓の外を眺めた。通りには夕陽が差し込み、長い影を伸ばしている。


「夏休み、どうするの?」青木が話題を振った。


「宿題が山積みだよ」と僕が苦笑しながら答えると、「7月以内に終わるかな…?」と夢咲さんがぽつり。


「でも、またここでみんなで集まってやれば早く終わるかもね」と諸星が希望を込めて言った。


「お前はただスイーツ食いたいだけだろ。」とツッコむ。

すると諸星は僕から目を逸らした。

「とりま俺は部活かな。」そう言って馬場は張り切っていた。

それからは夏の思い出話や、これからやりたいこと、少しの不安も混ざった話を交わした。


やがて、冷たい飲み物や甘いスイーツなどがテーブルに運ばれ、僕たちはゆっくりと口に含んだ。


甘くて少しシュワッとするクリームソーダが、乾いた喉を癒してくれる。


「この時間がずっと続けばいいのに」と夢咲さんが呟いた。


僕もそう思った。何でもない一瞬が、こんなに大切に思えるなんて。

だらだらと食べたり、話したりしてると、いつの間にか外の空は少しずつ濃い紺色に変わり、街灯がぽつぽつと灯り始めていた。


「そろそろ帰ろうか」と僕が言うと、他のみんなも頷いた。


店を出てからも、僕たちはゆっくりと歩きながら話し続けた。


商店街の小さなアイス屋さんの前を通りかかり、青木が「あ、ここも気になる!」と声をあげた。「確かに美味しそうだな。」馬場も賛同する。


でも「また今度ね」と僕が笑って答えた。


夕暮れの風が心地よくて、歩くたびに夏の終わりを感じた。


この寄り道は、いつも寄り道とは違う。僕にとって特別な宝物になった。そんな気がした。


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