方向転換
放課後、みのりはいつものようにクラスの中心にいた。学校でも一目置かれる存在であり、周囲から頼りにされることが多かった。彼女はその人気を利用して、治人と夢咲を生徒会長と副会長に推すため、クラスメイトに声をかけていた。
「ねえ、みんな、絶対に夢咲さんを会長にしようよ!彼女なら、この学校を引っ張ってくれるよ!」みのりは堂々と話し始めた。
クラスの人気者であるみのりが言うと、周囲の反応もすぐに変わる。「あ、みのりがそう言うなら、夢咲さんは本当にすごいんだろうな…」
「治人君も副会長に立候補してるんだよ!見た目は地味だけど、あの人はすごく真面目で優しい。絶対に二人が一緒なら、この学校はもっと良くなるよ!」
みのりの言葉にクラスのほとんどが賛同した。そう夢咲さんが生徒会局員になるということは。話は瞬く間に広まっていった。彼女がこう言うと、クラスメイトたちも次々に夢咲を応援するようになった。
「夢咲さんが生徒会局員になるなんてすごく面白そうだよね!」クラスの女子がにっこりと話す。
「みのりの言う通りだな、二人ならきっと学校を良くしてくれる。でも治人はなく無いか?」男子たちも声を上げた。
「確かに!あのクソナードには似合わないよね!!」
みのりはその反応を見て、唇を噛んで悔しそうな表情を浮かべた。彼女の人気は本物で、クラス全体に影響を与える力を持っていた。しかし逆にそれが仇となった。彼女の人気を持ってしても誰も治人が生徒会局員になるというに誰も賛成出来なかった。さらに馬場晴人が生徒会局員になるという噂が流れ、夢咲と馬場の名前がどんどんと生徒たちの間で語られるようになった。
しかし、数日後、予期せぬ事態が起こる。みのりが一生懸命に噂を広めた夢咲が、突然立候補を辞退することを決めたのだ。
放課後、みのりがいつものように夢咲と治人に声をかける。しかしそこには治人は居なかった。夢咲は少し沈んだ表情で言った。
「みのり、実は私、生徒会局員への立候補を辞退することにしたの。」
みのりは驚き、思わず声を上げた。「えっ、どうして!?みんな、夢咲さんが生徒会になったら絶対に良いことが起きるって思ってるのに!」
「分かってる…でも、私が生徒会になると、みんなが期待しすぎて、プレッシャーになっちゃう。正直、自分に自信がないんだ。だから、治人君に譲ることに決めた。」夢咲は静かに答えた。
その言葉に、みのりはしばらく黙ってしまった。彼女は夢咲が生徒会になる姿を強く想像していたし、何とか支えてあげたいと心から思っていた。しかし、夢咲の決意を尊重しなければならないと思った。
「でも、夢咲さん…」みのりは声を震わせながら言った。「あなたが生徒会になった方が絶対に学校が変わるよ。治人君だって…」
「治人君はきっと、私よりも生徒会局員としての資質を持っていると思う。」夢咲は微笑んだ。「だから、私は私として、二人を支えたい。」
みのりは深く息を吐き、そして言った。「分かった。あなたの気持ち、よく分かったよ。」
その後、みのりは治人に話すため、すぐに教室に向かった。治人はその日の授業が終わった後、机に座っていた。
「治人君、夢咲さんが会長立候補を辞退するって…」みのりは少し戸惑いながら話し始めた。
「そうか…でも、なんで?」治人は驚いたように顔を上げた。
「夢咲さん、自分に自信がないって言って、立候補を辞める決断をしたんだ。だから、治人君が会長に立候補することになるよ。」みのりは真剣な表情で続けた。
「え…何で…?」治人は言葉に詰まり、少し沈黙が続いた。
「うん。」みのりは頷いた。「じゃあ、1枠開くね。俺は馬場と青木がなるべきだと思う。青木が一生懸命に俺らの事をサポートしてくれた応援しているし、本当に良くなったと思う。俺も全力でサポートするよ。」
実は少し考え込んだ後、ゆっくりと顔を上げた。「古賀君、ありがとう。でも私はそんな古賀君は見たく無い。どんなに言われても頑張って諦めない古賀君が好き。こんなの古賀君じゃ無い!やってみなよ。打ち砕かれるまで。」
古賀は衝撃を受けた。彼女がこんな強い言葉を使ってるところを見た事がない。しかしその強い言葉に彼の弱い心は打ち砕かれた。彼は少し微笑んだ。
「ああ。やってやろうじゃ無いか。」
その後、みのりは夢咲に向かって言った。「ありがとう、夢咲さん。あなたの決断に従うよ。でも、私も支えるから、これからも一緒に頑張ろうね。」
夢咲は微笑みながら頷いた。「うん、ありがとう。絶対に当選して、治人君を助けてあげてね。」
こうして、二人は生徒会へ選ばれる道が開けた。しかし、夢咲の立候補辞退という意外な展開が、みのりに新たな決意を与え、二人をサポートするために全力を尽くすことを誓ったのだった。
この後、二人の立候補が正式に受け入れられ、学校全体でその結果が発表される日が近づいていく。