表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/52

君と並んで歩くには。

放課後。

古びた旧校舎から戻った三人は、校舎の裏手を抜ける細い道を歩いていた。


「なんかさ、猫に会いに行ってるってより……伏見、誰かに会いに行ってるみたいだったよな」

馬場がふとつぶやいた。


治人は答えなかった。歩きながら、さっきの伏見の表情を思い出していた。

あれは「誰かを待っている」顔だった。猫じゃない、“誰か”を。


「気になるなら、聞けばいいじゃん」

馬場の軽い言い方に、治人は苦笑した。

「……そう簡単に聞けるかよ」


そんなやり取りをしていると、向こうから青木と諸星がやってきた。


「おつかれー。猫は?」


「いなかった」


「伏見は?」と青木が食い気味に問う。


「無事だったよ。ただ、なんか、ちょっと元気なかったかも」


青木は「ふーん」と曖昧に返すと、そのまま少し黙り込んだ。


諸星がくすっと笑う。

「ねえ、みんな。今からファミレスでも行かない?テストも近いし、ちょっとだけ勉強会ってことで」


「ナイス提案!」と馬場が手を挙げる。


治人も「……いいね」と頷き、自然と全員が並んで歩き出す。

けれど、青木だけが一歩だけ、後ろにいた。


その手は、ポケットの中でぎゅっと握られていた。


夜。


自宅で青木は机に向かっていた。

開いたままのノートには、さっきファミレスでやった問題の続きが書かれている。

だが、手は止まっていた。


スマホがふと震えた。画面に表示されたのは、**「みらくる⭐︎すたー 配信開始しました!」**という通知。


青木は一瞬、躊躇う。けれど、指先は自然とその通知をタップしていた。

画面が切り替わり、いつもの明るい声が響く。


「こんばんはー!君の奇跡の流れ星!みらくる⭐︎すたーだよー!」


まばゆい画面の中、コメント欄は瞬く間に埋まっていく。

青木はしばらく黙っていたが、ふいに、ぽつりとつぶやいた。


「……私、誰にも言えなかったこと、言ってみてもいいかな」


それは自分に向けた言葉だった



——実は誰にも言ってないこと話しても良い?


諸星真奈の画面にそんなコメントが流れてくる。


画面の向こうで、みらくる⭐︎すたーは笑顔でこう言った。

「どーなつさん!コメントありがとう!うん。話してごらん?悩みとかだったらここでは誰も笑わないよ。」

その言葉で少し、彼女の心は軽くなった。

青木はキーボードをゆっくりと叩き始めた——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ