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隣の席、空いてますか?

「では、理科一の合同レポート課題。グループはすでにこちらで決めています」


教室の空気がぴんと張る。

春先の湿気混じりの風が、開け放たれた窓から流れ込む。

教卓に立つ佐伯(さいき)先生の声は、そうした日常を一瞬で吹き飛ばすだけの強さがあった。


「5クラス合同。グループごとにテーマを選び、次の授業に特別的に全員で集まり、そしてその次回にレポートを提出。1〜30班まであって、それぞれの班に指定されたところに集合。質問は?」


どよめく教室。

クラスの隅で静かに座っていた古賀治人は、ノートの端を見つめながら息を吐いた。

誰と組まれるか――それは、実テの成績待ちの時ぐらいの緊張感だった。


昼休み、それぞれの廊下にに貼り出された「グループ表」を見に行くと、もうすでに人だかりができていた。


「おい、俺、あの風紀委員のやつと一緒なんだけど!」

「えー、マジで!?俺以外、全員女子なんだけど…地獄…」


治人はそっと、五列目の紙を探した。

自分の名前を見つけたとき、最初に目に入ったのは隣の文字だった。

古賀治人(こがはるひと)古賀治人(2-A)

南坂和葉(みなみざか かずは)(2- B)

芝田拓馬(しばたたくま)(2-C)

志村遥香(しむらはるか)(2-D)

|山下巴(やましたともえ) (2-E)



――南坂和葉?

治人は、驚きつつもすぐに気を取り直した。

生徒会長である和葉と同じグループになるなんて予想外だったからだ。しかし、彼女とは生徒会で顔を合わせることが多く、普段から少しだけ話したこともあった。それに、会長としてしっかりしている和葉と組むのも悪くはないだろうと思い直した。


「まあ、どうにかなるだろう」と心の中で自分に言い聞かせた治人。

そして2日後。一限目は理科一。指定された場所でグループが集まることになった。



治人が指定された教室に到着すると、すでに和葉が一番に来ていて静かに本を読んでいた。

「早いな」と治人は思いながらも、軽く声をかけた。


「やっぱり、早いね」


和葉はゆっくりと顔を上げ、少し驚いた様子で言った。「ああ、すみません。先に来ておこうと思って」


治人が席に着こうとすると、次にやって来たのは、芝田拓馬と志村遥香だった。

「すまん。お前らって1班か?」

芝田が質問をしてくる。


和葉はにっこりと笑って、少し照れくさそうに言った。

「はい。そうです。よろしくお願いします。」


治人も軽く手を振って答えた。

「よろしく」

「えーっと後ろにいるのは山下さんと志村さん?」

「はい〜!そうです!」

「よ、よろしくお願いします。」

その後、和葉が静かに声を上げた。「じゃあ、自己紹介をしましょうか」


治人はその言葉に頷き、最初に手を挙げた。


「じゃあ、僕から。古賀治人。2-Aです。生徒会に入ってます。和葉会長とはよく顔を合わせるけど、こうやってグループになるのは初めてです。よろしくお願いします。」


和葉が目を細めて軽く頷き、「そうだな。よろしく。」

「次は僕だね。南坂和葉。2-B。生徒会会長。得意なことは料理だ。よろしく。」

巴が返事をする。

「よろしく〜!」

次に、拓馬が大きな声で言った。「芝田拓馬、2-C!バスケ部の部長で元気だけが取り柄だから、みんなで楽しくやろうぜ!よろしくな!」


拓馬の言葉に、遥香が少し微笑んでから言った。「志村遥香、2-Dです。勉強もスポーツもあんまり得意じゃないけどだけど、みんなと仲良くできたら嬉しいです。よろしくお願いします。」


最後 に山下が静かに立ち上がり、元気な表情で自己紹介を始めた。


「はいはーい!私は山下巴!2-Eです!バレー部入ってます!遥香とは知り合いです!足引っ張るかもだけどよろしくお願いします!」


元気な感じに少し驚きつつも、巴が真面目に取り組む姿勢を感じ取った。



自己紹介を終えた後、グループのメンバーは早速レポートの内容について話し合いを始めた。

治人は、和葉の冷静でしっかりとした意見に驚きながらも、次第に信頼感を抱いていった。

「やっぱり、会長として頼りにされているんだな」と治人は心の中でつぶやく。


その後、グループの話し合いが進む中、和葉の一言が治人の心に残る。


「何か問題があれば、遠慮せずに言ってください。みんなで協力し合えばうまくいきますから」

その言葉がなぜかずっと頭の中に残っていた。

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