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⑸『リズムの剽窃』
⑸『リズムの剽窃』
㈠
どこからが、剽窃で、どこからが、剽窃じゃないなんて、分かる訳がないだろう。無意識なる剽窃もあれば、意識的なる小説もあるだろう。しかし俺は、街から剽窃するのだ、街のリズムを剽窃する、リズムの剽窃なのである。
㈡
であるからして、俺は俺で、リズムの剽窃に、非常に事細かに、関わっている、と言っても過言ではないのだ。結句、俺は俺にしか出来ないことをやっている、換言すれば、俺にしか出来ないことしか、俺は出来ないのである。
㈢
しかし、こういう悲観的な考え方は、蔓延させないほうが良いだろう。なにせ、街が主体になった小説ではないからである。街から得られる、音のリズムを、文中で剽窃して、この小説にしているのだから、悪いことではないはずである。