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⑵『リズムの剽窃』
⑵『リズムの剽窃』
㈠
確かに予兆はあったのだ。言葉のリズムが崩壊しかけた時に、俺は街の雑踏の雑音が、やけに小説の言葉のリズムに聞こえた。それらを利用せずして、何になるだろう。リズムの剽窃という言葉が浮かんで、これだ、と思った。
㈡
どこまでも、書いてやる、とは思ってはいない。一定の場所で、この小説も終わるだろうが、日本の古代への回帰という感覚で、日本独自の、リズム、というものを忘れかけたら、街に出た方が良いと、思われるのである。
㈢
つまり、リズムの剽窃であるが、それは、剽窃とは言わないだろう、と言われたら、確かにそうかもしれない、とも思う。難しい問題でもない。街に出ていて、勝手に聞こえてくるのだから、利用しない手立てなどない、という訳なのである。