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第7話 案内と懐古


 さすがに後宮には立ち入らせる事が出来ないため、マリアローズは王宮の南側の庭園の案内をしていた。紫色の桔梗が咲き乱れている。


「いかがですか?」

「うん。綺麗だね」

「よかったわ。クラウドの瞳の色に似ているわね、この花は」

「僕はマリアローズになら、この色のドレスを贈っても構わないぞ」

「紫色のドレスですか? パラセレネ王国の後宮は、困窮しているわけではないので、お気遣いなく」

「そ、そう」


 そんなやりとりをしながら、二人で庭園のベンチへと向かった。そして並んで座る。


「そういえばマリアローズは、エルバ王国の出自なのか?」

「ええ」

「ふぅん。三年前に僕も出かけた。良い国だった。海に面した国だろう? 潮風と白い鳥が印象的だった」


 それを聞いて、マリアローズは目を丸くした。白い鳥が、脳裏に浮かんでくる。潮風の香りも、ここにはあるはずがないのだが、薫ってくる気がする。


 すると快活さを感じさせる表情で、クラウドが続ける。


「特に海産物は絶品だったし、街の者達も良くしてくれた。民に活気のある国だったな」

「そうですか」

「国王陛下夫妻も、とてもよくして下さった。僕の国にも、エルバ王家から侯爵家にミーナ夫人が嫁いでいて、夜会でお会いしたこともある」

「まぁ! ミーナお姉様をご存じなのですか?」

「うん。優しい方だったよ」


 思わぬ場所で母国と家族の話を聞いたら、懐古の念が浮かんできて、涙腺が緩んだマリアローズは、涙が見えないようにしようと空を見上げた。白い雲を見上げて涙を乾かしていると、今度は無性に嬉しさで胸が満ちた。結果、自然と笑顔が浮かんできたから、その表情のままでクラウドを見やる。


「ありがとうございます」


 クラウドはその表情に対し目を丸くしてから、心なしか照れたように顔を背けた。


「……これは、ハロルドも心配するのが分かるな」

「え?」

「いいや、なんでもないよ」


 濁したクラウドは、それからチラリと王宮を見上げた。そしてニヤリと笑ったので、不思議に思ってマリアローズもそちらを見上げる。そこには執務室の窓から、こちらを見ているハロルド陛下があった。


「あ……仕事をさぼってる」


 思わずマリアローズが呟くと、クラウドが吹き出した。肩を揺らして笑っている。


「僕はそういう事じゃないと思うけどな」

「では、どういう事ですの?」

「さぁね」


 クラウドはそう言うと立ち上がった。


「次の庭園が見たいな」

「ええ。お連れ致します」


 こうしてこの日は、夕暮れまで王宮の各地をまわった。クラウドは夕食に関してハロルド陛下と食べるとのことで、マリアローズはそこでクラウドと別れて後宮へと戻った。





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