自称シンデレラ004
「あの家族・・・!」
自称シンデレラは何かを知っているようですね。
自分の推理を探偵の如く語ります。
「継母は私が来ることを予期していなかった。だからありもしない課題が終わったのか?などと聞いてきた。そして、私がそれ聞いて戸惑うと思ったようだけど残念だったわね。私が迷わず答えることで、疑い難くなったのよ。更に、継母に私を騙したのかと問うことで、お父様の不信感が煽れるわ。・・・失敗したけど。まぁ、それはさて置き!ここからがあの一家の技よ!」
もはや推理を語るというよりは、継母たちの発想に驚き賞賛しているようにも見えるんですが。
「義姉を疑い、家族平等の精神を示したのね、私の変わりに義姉に留守番をさせようとする振りをしたのよ。そこで、もう一人の義姉が庇うの。約束を守ることの大事さを訴えかけた。それに心を打たれたのかのように、継母が私にまるで悪いことをしたかのように謝る。くそっ!見事な連携プレイだったわ。あんな短時間に、あれほど巧みな作り話を作れるなんて!そして、この私を返り討ちにするなんて!私としたことが、一生の不覚だわ!待ってなさいよ、必ず舞踏会に行ってやるわ!」
やっと自称シンデレラの解説が終わりましたね。
長かったですね。
危うく眠ってしまうところだった。
始めの義姉が兄の悟で、もう一人の義姉が妹の千晴ですね。
自称シンデレラ未だに勘違いしてます。
そして、遊園地です。
舞踏会も違います。
「こんなことをしている場合じゃないわ!早く追わないと!」
玄関で呆然としていた自称シンデレラは我に帰ると、何処かへ走っていきます。
なりふり構ってません。
正直見苦しい勢いで、何処かへ行ってしまいました。
「着いたわ・・・」
誰に言うわけでもなく、自称シンデレラは呟きました。
そこは、ごく普通のありきたりな交番でした。
自称シンデレラは、威勢良く交番に入ります。
一体何をするつもりなんでしょうか?
「すみません!」
自称シンデレラは、突然交番にいる初老の警察官に向かって声をかけました。
初老の警察官がどうしたのかと聞いてきます。
「あの、私・・・迷子になってしまったんです。家族と一緒に遊園地に向かったはずなんですけど、家族と逸れてしまって・・・」
「お嬢さんの家はこの近くかい?」
初老の警察官は、自称シンデレラを家まで送り届けるつもりのようです。
自称シンデレラは、困ったように言います。
「いえ、家から3,4時間かけてここまで来たもので・・・」
「じゃあ、家の電話番号とか、家族の電話番号はわからないかな?」
初老の警察官は根気強く自称シンデレラに訊ねます。
「家の番号はわかりますけど、家には誰もいません。家族の携帯の電話番号までは、覚えてなくて、すみません」
自称シンデレラが、泣き始めます。迫真の演技です。
初老の警察官は戸惑いを隠せずオロオロとしています。
そんな初老の警察官を見て、自称シンデレラは思わず笑みが出てきてますが、動揺している初老の警察官は気付きません。
「あの、もういいです。これ以上ご迷惑はお掛けできませんし、とりあえず自分で遊園地まで行ってみます。有り難う御座いました」
初老の警察官は、慌てて自称シンデレラを呼び止めました。
「お嬢さんこの近くの人じゃないんだろう?だったら遊園地まで連れて行ってあげるよ」
初老の警察官は、若い警察官を呼ぶと、簡単に説明してから仕事に引き返しました。
若い警察官が、車に連れて行きます。
自称シンデレラがガッツポーズを取っているのは、気のせいでしょうか。
「お譲ちゃんが行くのは、この近くの遊園地で間違いないんだね?」
「はい。ご迷惑お掛けして、申し訳ありません」
それから、若い警察官と、自称シンデレラはそれなりに会話をして、遊園地まで連れて行ってもらいました。
交通費が要らなくなるならこれくらいの芝居は易い物のようです。
狡賢い自称シンデレラですね。