自称シンデレラ001
そう遠くない昔、シンデレラと名乗る娘がおりました。
これは、そんな娘の話です。
娘は、窓の外を見つめていました。
「あぁ、なんて可哀想な私!いつも容姿の醜い継母や、その連れ子の不細工な義姉に虐められているだなんて。誰でもいいから早く舞踏会とか催してくれないのかしら?」
自称シンデレラは肝の据わった図太い神経の娘でした。
そんな自称シンデレラに声をかける人物がおりました。
「花子、いつまで寝ぼけてるつもりだい?さっさと着替えて、家の事くらい手伝いな!」
継母です。継母の登場です。多分この人が継母です。
というか、自称シンデレラの名前で出ませんか?
自称シンデレラは花子という名前だそうです。
日本人のような名前ですね。
「だって、寝巻きのネグリジェが一番ドレスみたいじゃない!」
継母は自称シンデレラの説明を瞬時に無視し、家事に勤しみます。
継母も慣れていますね。
というか、童話の中のシンデレラはネグリジェ着れる様な良い身分だったんでしょうか・・・?
そんなことは一切気にせず、自称シンデレラは渋々学校指定のジャージに着替えます。
ネグリジェと一介の学校指定のジャージとの差はかなり大きいです。
「あぁ、これもお父様の為よ!しっかりしなさい、私!こんなことで挫けてちゃ王子様に後宮に入れられた時、他の女に殺られるわよ!」
後宮ですか。
シンデレラって正妻即決定じゃないんですか。
殺られるって、どんだけ危ない後宮に行こうとしてるんですか。
そんな独り言を言っている危ない自称シンデレラを嘲る声がします。
「おい、花子。いい加減その変なシンデレラごっこ、やめたらどうだ?」
義姉・・・義姉の代わりに義兄が登場です。
継母の連れ子の義姉の代わりに義兄が出てきました。
役は義姉のようです。
義兄は、自称シンデレラのやってることを、シンデレラごっこと称してます。
義兄の脳内では、継父の連れ子の一人でシンデレラごっこをしている危険な義妹という設定になってるようです。
そんなことを説明していると、義兄の後ろから小さな女の子が小さな顔を見せます。
「花子お義姉ちゃん・・・シンデレラは末っ子じゃないの?じゃあ、ちーちゃんの義妹になるの?」
おっと、これは!
花子には継母の連れ子の義姉の義妹ではなく、継母の連れ子の義兄の義妹がいました。
義兄が、「千晴、アレはシンデレラごっこをしているだけだから、少しくらい都合良くしても良いんだよ。だから、千晴はアレに構わなくていいからね」などと諭しています。
義兄は要するに、可愛い妹の千晴を継父の連れ子の一人でシンデレラごっこをしている危険な義妹の花子・・・いや、自称シンデレラのやっているシンデレラごっこに巻き込ませたくないんですね。
義妹は千晴という名前だそうです。
花子とは大きな違いですね。
「あ、花子。今日は俺たち夕飯食いに行くけど、お前家の中で怠けすぎだから留守番だって母さんが言ってたから」
それを聞いた自称シンデレラの目が煌々と輝きます。
「これは・・・!城で開かれる舞踏会を義姉たちが自慢してくるシーンね!」
自称シンデレラの解説を軽く流して義兄と義妹が遠ざかっていきます。
自称シンデレラ、継母の家族全員に呆れられてます。
呆れられているというよりは、無視されています。
ここまでくると、自称シンデレラが少し可哀想で情けが湧いてきますね。
しかし、自称シンデレラはそんなことを意に介さず、なにやら怪しいことを言い始めました。