お伽噺の始まりは
昔々ある王国に、それはそれは暇でたまらない王様がいました。
その王様のいる王国は、ありえないくらい平和でした。
周りの国は王様の王国とは比べ物にならない位の小さな国で、その気になれば3日もあれば潰せるほどの弱小国でした。
王様の王国にいる民も、王様に反逆しようという意思を抱くような民はおらず、むしろ更に良い国にする為に毎日ある程度仕事を頑張っている程度の民しかおりませんでした。
そういうわけで、今日も王様は暇で一日をただ無駄に消費していくのでした。
ある日の事でした。
王様の元に一人の旅人が訪れました。
王様は尋ねます。
「お前は何者だ?」
旅人は、にこやかに答えます。
「王様が暇そうなので、物語でもして王様の退屈な心を一時でも楽しませてみたいと思い、この国を訪れたただの旅人です」
「そうか。だが、そんな辺鄙な理由を持つただの旅人は見た事が無い。怪しいな・・・。よし、この国の脅威になり得るかもしれんから処刑して見世物にでもするか」
王様の突拍子な発想に旅人は仰天して懇願しました。
「ちょっと待って下さいよ、王様!絶対に面白い話ですから、聞くだけ聞いてみてくださいよ!せめて処刑はそれからにしてください!」
王様は面倒くさそうな顔をしたが、旅人が煩いから渋々承諾した。
そして、旅人の物語は始まりました。