5月1日 20:00 「放置ゲームは放置しないのが攻略のコツ」
ただいまーっと。
はー、バイト疲れた。
誰もいないってわかってるのにつぶやいてしまうのは一人暮らしあるあるだよな。
慣れてるから別に寂しくないけどな。
はー、それにしても今日はしんどかった。
やけに忙しかったせいで、帰ってくるのが遅れてしまった。
もう日付が変わる直前だ。
しかも明日は1限目から大学の授業がある。
なんで連休中なのに授業があるんだよ。連休ならちゃんと全国民休みにしてほしいよなまったく。
はーあ。今日はさっさと風呂入って飯食って寝てしまおう。
おやすみー。
……っと。その前に。
あのアプリを起動する。
寝たほうがいいってわかってるのに、どうしても気になってしまったんだ。
放置できないのが放置ゲーの辛いところだよな。あるある。
「お帰りなさいお兄さん!」
ログインするなり、リラがそう言ってくれた。
おお、なんか感動してしまう……。
ずっと一人暮らしで「おかえり」なんて言ってくれる人はいなかったからな……。
なんとなく嬉しくてリラの頭を撫でてしまう。
「もう、くすぐったいですよぉ、お兄さん」
照れた顔で嬉しそうにつぶやくリラ。
かわいい。かわいすぎる。
ヤバイ、早くもマジでハマりそうじゃないか。
照れ隠しで放置画面に移動しようとしたら、その前にリラが腕をこちらに伸ばしてきた。
「はい、お兄さんのために頑張っていっぱい集めましたよ!」
>経験値1200を手に入れました
>リラのレベルが3に上がりました!
>リラのレベルが4に上がりました!
>リラのレベルが5に上がりました!
>リラのレベルが6に上がりました!
>リラのレベルが7に上がりました!
>リラのレベルが8に上がりました!
おお、何もしてないのに一気にレベルが上がったぞ。
こっちから回収する前に放置報酬をくれるなんて、めっちゃ便利なゲームだな。
ん? なんかまだ続きがあるな。
>木の剣を手に入れました。
>木の剣がスキル「目利きLv.1」により強化されました。
>木の剣+1を手に入れました。
>木の盾を手に入れました。
>木材を手に入れました。
>木材を手に入れました。
>木材を手に入れました。
>木材がスキル「幸運Lv.2」により進化しました。
>神樹の破片を手に入れました。
おおお!
なんかいい感じだな!
さすがリラ、お前ならやってくれると信じてたよ。
感心してると、何やらリラが期待に満ちた眼差しでこちらをみている。
なんとなく頭もこっちに近づいてるような……
もしかして、と思って頭を撫でてみる。
「よしよし、リラは偉いな」
「……えへへ~」
ふにゃ~っと顔がゆるんで、嬉しそうな笑みになる。
それがかわいすぎて、またしばらくずっと撫で続けていた。
>リラの親愛度が2に上昇しました。
おっ、なんか上がったな。
親愛度か。そういうのもあったのか。
これからはもっと撫でてあげないといけないな。
さて、他にも気になるのをいくつか手に入れてたな。
まずはリラのステータスを開く。
朝は何もなかった装備欄が光っていた。
>先ほど取得した装備をリラに装備させますか?
ああ頼むよ。
装備欄に「木の剣+1」と「木の盾」が現れる。
同時にリラの手にも剣と盾が握られた。
普通のセーラー服に、剣と盾という非日常のものが組み合わされると、なんかグッとくるものがあるよな。
「ありがとうございます、お兄さん!」
嬉しそうにそう言ってくれる。
それはリラが見つけたものだから、俺は何もしてないんだけど。
まあ、感謝されて悪い気はしないよな。
あとは放置させて今日はもう終わりだな。
なので放置画面に移動したのだが……
リラがちょこまかと作業をはじめる。
現実時間に対応してるのか、草原も夜になっていた。
……俺はこれから寝るのに、リラは寝ずに一晩中ここで作業させるの……?
俺めちゃくちゃ鬼畜じゃないそれ?
「私は大丈夫だから、気にしないでください!」
そんな声が聞こえてくる。
その声は元気そのもので無理をしてる感じでもなかったけど。
いやいや、そこまで鬼になれないよ。
と思ってたら、なんか草原の端っこにある空き地が光りだした。
>「木材」を消費して「家」を作成しますか?
お、ちょうどいいじゃん!
早速作ってくれ。
すると、光っていた場所に「建築中」の文字と「残り時間5秒」の文字が現れた。
5秒て。
「え? お兄さん、これって……」
リラの言葉が言い終わる前に、立派な家が出現した。
なにせ5秒だったからな。
それにしても、木材一個で家が一軒建つんだから、物理法則を無視してるところが最高にゲームっぽくていいよな。
「こ、これ、お兄さんが作ってくれたんですか!?」
早速出来上がった家をタップしてみる。
すると「スケジュール」という項目が出てきた。
どうやらこれでリラの1日のスケジュールを決められるみたいだ。
どれどれ、今はどんな感じになってるんだろう。
・0時~24時:仕事
鬼かな?
こんなの死んじゃうよ?
いやゲームだから死なないのかもしれないけど……
そう割り切れないくらいには、もう俺はこのゲームを……正確には、リラを好きになっていた。
・0時~8時:睡眠
・8時~24時:仕事
とりあえずスケジュールを設定し直した。
本当はもっと休憩を取らせてあげたいけど、設定できるのが「睡眠」と「仕事」の2つしかなかったんだ。
どうやら家のレベルを上げると、もっと細かく設定できるようになるっぽい。
なのでそれまでは、せめてこれで我慢してくれ。
「お兄さん……! ありがとうございます……!!」
なんかめっちゃ感激している。
まあ元がブラックすぎたからな。
これでもまだ全然超ブラックだと思うけど……
>親愛度が3に上昇しました。
>親愛度が4に上昇しました。
>親愛度が5に上昇しました。
……胸が痛い。
なるべく早く家のレベルを上げて、もっと人間らしい生活ができるようにしてあげるからな。
さて、寝る前にもう一つだけ確認したかったんだ。
俺は「倉庫」のコマンドをタップして、そのアイテムを表示させた。
>神樹の破片:創造主によって育てられた不滅の樹。その破片。今はまだなんの力もない。
ふむ。やはりまだ使えないな。
けど将来必要になるやつだよな。
「まだ」って言ってるし。
きっといくつか集めたら合成できるやつだよな。
……あのスキル、やっぱいるじゃん。
とりあえず今日はもう寝よう。
まだまだやることがたくさんある。
こんなに続きが気になるゲームなんて久しぶりだよ。
じゃあおやすみ。
「はい、おやすみなさいお兄さん!」
そういえばこのゲーム、戦闘する場所ひとつもなかったけど。
剣とか盾とか、どこで使うんだ?
リラ:Lv.8
攻撃:3
知力:5(+1)
防御:3
精神:3
素早:5(+2)
幸運:3(+2)
親愛度:5
スキル:歩行Lv.2、目利きLv.1、幸運Lv.2
装備:木の剣+1、木の盾
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次回「5月1日 26:00 「夢の中、あるいは世界のどこか」です。