5月3日 20:00 「指先に君のぬくもりを」
部屋の中にスパイスのきいた香りが立ちこめる。
夕食はカレーだった。
まあ定番メニューだよな。
新しく手に入れた苗から様々な食材が手に入り、イスを作って売ったゴールで香辛料なども購入できたからなんだが。
香辛料から作ったカレーは本格的で、今まで自分が食べていたカレーはカレーじゃなかったんだと思い知ってしまった。
控えめに言って美味い。美味すぎる。
「もう、お兄さんはいつも大げさですね」
リラが少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
しかし美味いのは本当なんだからしょうがない。
美味しいご飯を食べるだけで、こんなに幸せになれるんだな。
今まで飯なんて腹がふくれて、栄養が取れれば十分なんて思ってたけど。
いまなら高級焼き肉とか食べる人の気持ちがわかるかもしれない。
こんなに幸せになれるなら、多少のお金はいくらでも払える。
だけどもちろん、それはご飯が美味しいからだけじゃない。
「えへへ、美味しいですね、お兄さん」
そう微笑みながらつぶやいて、指にはめた星屑の指輪をそっとなでていた。
思えば、ずっと夢だった。
一緒に話をしたり、ゲームをしたり、ご飯を食べたりする。
そんな友達が欲しかった。
その夢が叶ったんだ。
指で画面に触れる。
リラが嬉しそうにはにかむ。
その温もりが、指先にだけ届く。
発熱した電気回路が液晶越しにこの世界を温める。
それがリラの体温。
「どうしました、お兄さん?」
いや、なんでもないよ。
俺は首を振って答えた。
リラが作った料理も、リラと作ったアイテムも、この世界に届いた。
ならいつかリラ自身も……なんてな。
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次回「5月4日 02:00 「夢の中、あるいはこの世界のどこか」です。




