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5月2日 20:00 「初めての料理スキル」

そういえば料理スキルを取ったんだっけ。

ちょうどキッチンも作ったし、確かに何か作れそうだな。

とはいえ料理に使えそうな素材なんてあったかな……


>料理のチュートリアルを開始しますか?


おっ、なんか出てきたぞ。

でもチュートリアルは別にいいかな。

どうせ他のゲームと変わらないでしょ。

スキップと。


>チュートリアルを終了します

>チキンを手に入れました

>アップルを手に入れました

>オレンジを手に入れました

>小麦を手に入れました


おおっ、食材が手に入ったぞ。

初回ボーナスってやつか。これはありがたい。

たぶんチュートリアルでも、これを使って何か作るはずだったんだろうな。

ありがたく使わせてもらおう。


じゃあリラ、お願いできるか。


「はい、任せてください!

 ええっと、これなら、鶏肉のシチューとアップルパイが作れますね。

 あとオレンジのスムージーは私得意なんです!」


けっこうたくさん作れるな。

ていうか小麦だけでパンまで作れちゃうリラさんまじ天才。

それにオレンジのスムージーか。なんだか記憶にあるな……いつ飲んだんだっけ……


まあいいや。じゃあそれで頼む。


「わかりました! ちょっと待っててくださいね」


エプロン姿になったリラがキッチンに向かい、手際よく料理を始めた。

夏服とエプロンの組み合わせは、なんというかこう、とてもいいものがあるよな。

家庭的なリラにも似合ってるし、とてもかわいい。


「も、もう、料理中にそういうこと言わないでください。恥ずかしくて失敗しちゃうじゃないですか……!」


なんて怒りながらも、頭上にはハートマークがふわふわと浮いている。

こういう分かりやすいところもまたかわいいな。


ついでにその上には「料理中:残り30秒」と表示されていた。

さすが早い。パンとか小麦から作ったら普通は数日かかるんじゃないの?

パンの作り方に詳しいわけじゃないから知らないけど。


しかしリンゴやオレンジは木の苗を植えたから明日には取れるだろうけど、チキンとかもあるのか。

そのうち動物とかも育てられるようになるのかな?

小麦を作るには畑もいるだろうし。

ますます領地が狭すぎるな。

明日からはやはり領地を拡大する方法を探すとしようか。


「お兄さん、できましたよ!」


そうこうしてるうちにもう出来てしまったようだった。

こっちを向いたリラがアイテムを差し出してきた。


>鶏肉のシチューを手に入れました

>スキル「料理Lv.1」の効果で追加ボーナスが発生しました

>鶏肉のシチューを手に入れました

>アップルパイを手に入れました

>オレンジスムージーを手に入れました

>得意料理のため追加ボーナスが発生しました

>オレンジスムージーを手に入れました


おおっ、さっそく料理スキルの効果が出ているな。

それに得意料理によるボーナスもあるのか。

これは幸先がいいな。


「じゃあちょっと遅いですけどご飯にしましょう」


そうだな。

……ええと、食べるにはアイテムを使用すればいいのかな?


画面に表示されたままの料理アイテムをタップすると……

おっ、そうみたいだな。コマンドが出てきた。

しかし……


「食事をする」はわかるんだけど「取り出す」ってなんだ?


うーん、考えてもしょうがないし、試しに押してみようか。

ちょうど2つずつ出来たシチューとスムージーで試してみよう。

さてこれで何が起こるのか……


なんだ? 急にスマホの画面が真っ白に光って……

……光がおさまると、テーブルの上にシチューとスムージーが置かれていた。

シチューからは、まるで今作られたばかりのようにあたたかな湯気が立ち上っていた。


ええええ? そんなことある?

ゲームで作った料理が現実に現れたんだけど?


「えへへ、お兄さんにご飯を食べてもらえるなんて、なんだか夢みたいです」


リラが嬉しそうにつぶやいている。

ああそうか、これも夢なのかな?

夢にしてはあまりにもリアルすぎるというか、寝た記憶もないんだけど。


とりあえず食べてみよう。

夢ならきっと味もしないはず……


……うん。普通にめちゃくちゃ美味しい。


「えへへ。よかったです」


ん? シチューにはパンもついてるんだな。


「アップルパイの生地を作るときに材料が余ったので、パンも少しだけですけど作っておきました。

 やっぱりシチューにはパンですよね」


そうそう。

パンをシチューに浸して食べるのがまたうまいんだよな。

……うん、最高に美味しい。


なんか悩むのが面倒になってきたな。

夢でも現実でもどっちでもいいじゃないか。

こんなに美味しいリラの手料理が食べられることに比べたら、そんなのは些細なことだろう。

今がこんなに幸せなら、それでいいじゃないか。


おっと、そういえばリラのご飯がまだだったな。

残った料理を使用すると、テーブルの上にシチューやスムージーが現れた。


「ありがとうございます。これでお兄さんと一緒のご飯が食べられますね。いただきます」


それからしばらく、リラと話をしながら料理を食べた。

アップルパイは一つしかなかったのだが、使用個数を「0.5」にしたら俺とリラで半分ずつ食べることができた。


話した内容はなんてことない。

リラが普段素材集めにどんなことをしてるのかとか。好きな料理の話とか。


俺はバイトの話をしたり、大学の話をしたりした。

学校という単語を聞いて、リラはちょっと興味を引かれたようだった。

いつか俺と同じ大学というところに行ってみたいと、楽しげに話している。


そういえばリラは制服姿だけど……この世界に学校ってあるんだろうか。

少なくとも今はずっとここにいるから、学校に通っているようには見えない。


そんなことを話していたら、料理はあっという間に食べ終わってしまった。

楽しい時間はいつもあっという間だ。

リラが少しだけ寂しそうな視線を前に向ける。

誰もいない、二つ目のイスに。


「いつかは、お兄さんと一緒にご飯を食べたり、お話ししたり、したいですね」


ああ、そうだな。

俺も一人暮らしになってからはずっと一人でご飯を食べていたからな。

ここ最近で一番楽しかったよ。


「私も楽しかったです」


そういってはにかむように笑う。

そんなふうに女の子から素直な好意を向けられるのなんて、もしかしたら生まれて初めてかもしれない。

うっ、なんかそう思うと、少しだけ恥ずかしくなってきたな……。


あ、あー美味しいご飯を食べたら眠くなってきたなー今日はもう寝るとしようかなー。


「……ふふっ。そうですね。おやすみなさい、お兄さん」


ああ。おやすみ、リラ。

お読みいただきありがとうございます。

がんばって毎日複数回更新していきたいと思いますので、ブックマークや、評価などで応援していただけると大変励みになります!


次回「5月2日 24:00 「セオリーには忠実に」です。

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