5月2日 15:00 「新しいスキルたち」
リラ、さっそくだがこれを着てくれ。
「これ、なんですか? 夏服?」
ああ、リラへのプレゼントだ。
そう言うと、リラの顔がぱあっと明るい笑顔になった。
「わあ、うれしいです! さっそく着替えてきますね!」
受け取った服を胸に抱えてどこかに走り去っていった。
着替えると言ったら、多分家だよな?
放置画面に行ってみると、家の上にリラのアイコンがついていた。
やっぱり中にいるようだな。
様子を確認しようとタップしたら「お着替え中、覗きダメ絶対!」の文字が現れてアクセスを弾かれた。
そりゃそうか。
大人しく着替えが終わるのを待つとしよう。
しかし、するとこの画面でやれることは今はない感じかな。
家を改造したり、手に入れた苗とかを使ってみたかったんだけど、それは後にするとしよう。
となると次にできることは……
やっぱこれだよな。
ステータス画面に向かい、さっき手に入れたスキルオーブを3つとも使用した。
>リラに習得させるスキルを1つ選んでください
・素早Lv.1 :素早さが上がる。
・剣技Lv.1 :剣での攻撃力が上がる。
・栽培Lv.1 :栽培の習熟度が上がる。
>リラに習得させるスキルを1つ選んでください
・作成Lv.1 :作成の習熟度が上がる。
・槍技Lv.1 :槍での攻撃力が上がる。
・料理Lv.1 :料理の習熟度が上がる。
>リラに習得させるスキルを1つ選んでください
・白魔法Lv.1:白魔法Lv.1を習得する。
・黒魔法Lv.1:黒魔法Lv.1を習得する。
・赤魔法Lv.1:赤魔法Lv.1を習得する。
最初は「栽培」と「料理」をとった。
「作成」も欲しかったが……ガチャで苗とか肥料を手に入れたことを考えると、そっち方面を伸ばしたほうがいいと思うんだよな。
問題は3つ目だ。
正直これは悩む。
それに白魔法と黒魔法は想像がつくが、赤魔法はちょっと聞いたことがない。
某有名ゲームでは確か、白魔法と黒魔法両方使えるかわりに、どっちも途中までしか覚えられないとかだったような……
いわゆる器用貧乏というやつだ。
ラノベだったら、器用貧乏はむしろオールマイティーで最強だったりもするが、このゲームでもそうなのかはわからない。
……そういえば全然調べてなかったけど、このゲームってどれだけの人がやってるんだろう。
ゲームの攻略はあまり見ない派なんだけど、ちょっと攻略を見るくらいならいいよな。
せめて白、黒、赤魔法の違いくらいは知りたい。
というわけでスマホで「ひるねくらし」を調べてみる。
今更だけど、全然昼寝しないよなこのゲーム。タイトル詐欺じゃん。
こんなタイトルで詐欺られるのなんて俺くらいかもしれないけど。
話が脱線したが、検索した結果をいうと、笑えるくらいなにも引っかからなかった。
もう本当に全くヒットしない。
もしかして世界で俺一人しかやってないんじゃないのか、ってくらい何の話題も見つからないし、開発会社もわからなかった。
もしかしたらクローズドベータのアプリなのかもな。
そういうのは秘密保持契約を結ばされて、SNSで発信したら罰金とかあるらしいし。
俺は全く記憶にないけど、知らない間に結んだのかもしれない。
最初の契約書みたいなのとか、全く読まないしな。
怖いから俺もヌイッターとかでつぶやかないようにしないと。
検索は空振りに終わったままアプリに戻ってくる。
「もーお兄さん、どこ行ってたんですか!?」
そこには、ちょっと怒った様子の、夏服に着替えたリラがいた。
はい、控えめにいって最高です。
「お兄さん!? 私は怒ってるんですよ! せっかくお兄さんのために着替えてきたのに、どこにもいないなんて!」
ああ、うん。ごめん。ちょっと調べたいことがあってさ。
夏服似合ってるよ。すごくかわいい。
「……えへへ。喜んでもらえて良かったです」
すぐ上機嫌になる。
チョロすぎて悪い人とかに騙されないか少し心配になってしまう。
いやまあこのゲームでは俺としか会わないんだろうけどさ。
あ、そうだ。
折角だからリラに聞きたいことがあるんだけど。
「はい、なんですか?」
リラは魔法を覚えるなら白魔法、黒魔法、赤魔法のどれがいい?
「えっと、それなら白魔法ですけど……え? 魔法を覚える? 私が?」
そう。
このゲームだとどの魔法がいいのかわからなくてさ。
自分で調べてもわからなかったから、リラに聞いてみたんだけど。
「ま、魔法って、あの魔法ですか!? 才能ある人が何十年も修行しないと使えないっていう、あの!?」
え、そんな設定なの?
覚えるのめっちゃ大変じゃん。
まあ俺はスキルオーブ使うだけなんだけど。
じゃあ「白魔法Lv.1」を選択っと。
「あっ、すごい、私の中に力があふれてくる……本当に魔法が使えるようになったんだ……」
リラが感激したようにつぶやいている。
ところで、なんで白魔法にしたの?
「えっと、私はあまり戦うのが好きではないので、黒魔法は少し怖いですし……」
まあリラは確かにそんな感じあるよな。
見た目も普通の女の子だし。
戦うよりも、料理作ってたり、家庭的なことの方が似合いそう。
「それに白魔法なら、作物にかけて成長を促すこともできるので、お兄さんの役に立てるかなと思いまして」
はにかむような笑顔で言ってくれる。
いい子すぎ。好き。
「も、もう、すぐそういうこと言わないでください……っ」
ところで赤魔法って何か知ってる?
「私も詳しくはないですけど、なんでも、血を使う怖い魔法だって噂です……」
ああ、そういう赤なのか。
そういえば昔のラノベにそんなのがあったような。
リストカット魔法少女とかなんとか……
確かにそんなのを俺のリラに覚えさせるわけにはいかないな。
そんなことまで知ってるなんてリラはすごいな。
いい子だから頭もなでてあげよう。なでなで。
「えへへ……」
うーん、かわいい。いやされる。
ひとしきりなでた後、再びステータス画面に戻ってくる。
上級スキルオーブ×2
さあ、次はこれを使う番だ。
リラ:Lv.12
体力:12
攻撃:4
知力:7(+2)
防御:5
精神:5
素早:7(+3)
幸運:5(+2)
親愛度:5
スキル:歩行Lv.3、目利きLv.1、栽培Lv.1、料理Lv.1、白魔法Lv.1、幸運Lv.2、
装備:木の剣+1、木の盾
お読みいただきありがとうございます。
がんばって毎日複数回更新していきたいと思いますので、ブックマークや、評価などで応援していただけると大変励みになります!
次回「5月2日 16:00 「上級スキルを選ぶのは楽しすぎる」です。




