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3.転生初日



───目が覚めると泉のほとりに倒れていた。


「ここは何処?」


辺りを見回すと森の中の様だった。

ふと視界に銀色の髪が映る。


〈銀髪?〉


泉を除き込むと、なんとそこには輝く銀色の髪にサファイアの様な瞳の美少女が映っていた!


「何この美少女!」


驚き過ぎて仰け反ってしまう。泉の中の少女も仰け反った事から、これが自分の姿なのだと認識する。


前世とも前前世とも似ても似つかぬ美しい姿に呆けてしまった。


〈いけない、ボーっとしている場合じゃない。〉


改めて自分の体を確認する。

転生?転移?なのかわからないが、どう見ても少女の姿だ。しかも前前世からの記憶もある。赤ちゃんから始めなくて済むのはありがたいが、自分がどんな状態に置かれているのか知る必要がある。


すると脳裏にゲームのステータス表示の様なものが浮かんできた。操作方法なども不思議と解る。


ステータスを確認する事にした。


────────────────

名前:?

年齢:14歳


魔法属性:火、水、風


スキル:治癒魔法

────────────────


「スキルも能力も、前前世と変わらないわ。名前は、ええと……やっぱりリベンジも兼ねて“ルシア”にしよう!」


すると、スキルの名前欄に“ルシア”と登録された。


「さて、美少女に転生させて下さったのはありがたいけれど、着の身着のままで森の中……これからどうしよう。」


すると目の前にポンっと音を立てて、ピンク色の“イチゴ大福”が現れた。


脳内に直接“メッセージ”が表示される。


──『このイチゴ大福の力で、必要な物資を【創造】してごらん。』


「えええっ!そんなチート能力を使って良いんですか?」


すると目の前のイチゴ大福が肯定するようにプルプルと震えた。


〈たしか、イチゴ大福の力は一時間限定でしかも一日一個までだと仰っていたはず。時間を有効に使わなくては。〉


まずは必要な物のリストをあげていく。

テントやキャンプ用品。日用品なども必要だ。それにこの世界には魔物や盗賊もいるので武器も重要だった。


あらかたリストアップが済むと、目の前に浮かんでいるイチゴ大福を食べた。


「美味しい!」


極上の味が口の中に広がっていく……


すると体が七色の光に包まれて、脳内のステータス欄に【創造魔法】が加わった。


「わあ!本当にお力を貸して下さったのね!」


私は手始めにテントを創造してみた。すると一人用の立派なテントが現れたのだ!


しかも脳内情報によるとヨム様のサービスで結界も付与されているらしい。おかげで魔物を気にせずに寝れる。


次にマジックバッグを創造すると、またもヨム様のお力で容量特大、しかも時間経過無しの鞄とリュックの二つを創って下さった。


「ヨム様ありがとうございます!」


天を仰いで感謝の祈りを捧げる。


私は次々に創造をしていき、50分程で全ての装備を整える事に成功したのだった。


「時間内に間に合って良かったわ。」


そしてきっかり一時間経つとステータスから【創造】が消えていた。



*****



夜、焚き火で魚を焼きながら木の実をいただいている。


この泉の周りには不思議な程たくさんの木の実が生っている。

食べ物に不自由させまいとするヨム様の配慮に感謝していた。


ブランケットに包まりながら焚き火にあたっていると、ゆったりとした時間が流れていく。

見上げば満天の星が輝いていた。


「ああ、こんなにゆっくりしたのは本当に久しぶりだなぁ。」


新緑の春の森のさざめきに耳を傾けながらしばし寛ぐ。


〈これからどうやって生きていくか考えなければならないわ。〉


私は赤ちゃんから始めずに済んだ事と引き換えに、無一文無戸籍から始めなければならない。


〈イチゴ大福の力だって無限にあるわけじゃない。とにかく今はお金を稼がないといけないわ。〉


思案に耽っていると急にガサガサっと物音がして慌てて振り向いた。


「きゅう〜、くぅ〜。」


そこには、ムートと言うポメラニアンとウサギを掛け合わせたような動物がいて、震えながら弱々しく鳴いていた。


「まあ大変!」


よく見ると足に怪我を負っている。

慌てて駆け寄ると、“ヒール”(治癒魔法)で治した。


「きゅっ。きゅうう!」


怪我が治ったムートは元気に飛び回っている。その無邪気な様子にクスクスと笑いが溢れた。


「さあ、もう大丈夫よ。おうちへお帰り。」


私はムートをしばし撫でると焚き火の前に戻った。


するとムートもトテトテと付いてきて、私の膝にちょこんと座ったのだ。つぶらな瞳で私を見上げると、頬をペロペロと舐めた。


「ふふふ。可愛い。」


すると脳内にまた表示がされた。


──『テイムが完了しました。』


どうやら私はこの子をテイムしてしまった様だ。早速名前をつける事にする。


「もこもこの毛並みだから、“モコちゃん”!」


するとモコちゃんは嬉しそうに「きゅうっ!」と返事をする。


モコちゃんのもふもふを撫でてあやしてやると、欠伸をして膝の上で丸まって眠ってしまった。


「うふふ。今日から宜しくね、モコちゃん。」


私はモコちゃんと一緒に結界付きテントに入ると、一緒に毛布に包まった。


モコちゃんの体温ともふもふが温かい。モコちゃんを抱きしめながら、いつの間にか眠りについていたのだった……

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